表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/99

プロローグ

 2030年 パチンコ・パチスロ業界に激震が走る。かねてより問題視されていた三店方式、いわば換金システムの廃止である。これによりどれだけ連荘しようと、玉やメダルはパチンコ店が用意した「モノ」にしか交換できなくなった。もちろんモノを個人で売却すれば「カネ」に変えることはできるが、このアミューズメントの利点であった「気軽かつ、すぐにカネを増やす可能性を追うこと」ができなくなったため、遊技人口は大きく減っていくこととなった。


 2031年 驚くべき早さで遊技人口および業界全体の売り上げが減少する中、メーカーは様々な策を練ることとなる。力尽きるメーカーも多い中、パチスロ業界の大手である「カミー」「ミニバーサル」「ザイト」の3社が合同で大きな開発を始めた。また、この頃のパチンコ店は既存の機種ならばどんな機種でもおけるよう規制が変更となったため(この状況では射幸性を気にする必要が薄くなったことなどが背景)、昔人気のあった中古機種や再販機種を安く仕入れ、低レートを中心とした「モノ」と交換できるゲームセンター方面に路線変更する店が多くなった。


 2032年 終焉がすぐそこに思えるまでに衰退したこの業界に一筋の光が差す。3社が合同で開発した「オールリンクパチスロ」(以下「オリスロ」)が完成する。簡単に説明するとオリスロの遊技で獲得したメダルは個人が当たり前のように所有する携帯端末で保管できるようになり、3社の関連企業のネットショッピング等で通貨として使用できることとなった。ただこれだけでは交換する「モノ」の選択肢が増えるなど多少便利になっただけでそこまで遊技人口を取り戻すことには至らなかったが、「獲得した出玉を端末で管理し通貨と同様に使用できる」ようになったという意味では復活の一歩を踏み出したといえる。


 2033年 パチスロが4号機時代を超えるブームに、社会現象になるような日がこようとは誰が想像できただろうか。きっかけはオリスロに連動したアプリゲームの発表である。このゲーム自体はいわゆる歴代のパチスロのキャラクターがカード化し対戦するといった普通のゲームだが、違う点が一点、ゲーム内で獲得したカードがオリスロの遊技に影響を与える仕組みとしたのだ。これが大ヒット。このゲームは無料で遊ぶこともできるが、レア度が高くオリスロによりよい影響を与えるキャラのカードを入手することは課金せずには難しい。オリスロと連動しているが故の「遊技ボーナス」(いわゆるログインボーナス)やフリーズやプレミアを実機でひいたときの「プレミアガチャボーナス」等があり、ゲームを遊べばオリスロを遊んでみたくなる仕組みが各所にちりばめられた。オリスロで獲得したメダルがゲームを遊ぶ上で重要な通貨としても利用できるので、カードを使用したオリスロの遊技に熱中する人からすると「現金と同様の価値」があることとなる。ユーザー同士のメダルデータのやり取りが可能なため、個人間でメダルの売り買いが多く発生した。しまいにはオリスロのメダルの売買仲介サービスも開設されたため、過去のように換金所に行けば現金が手に入るわけではないが、増やしたメダルをモノを経由せずに現金に換えることができる環境が整ったのである。レアなカードが欲しい・育てたキャラでオリスロを楽しみたい・増やしたメダルを売って資産を増やしたい、様々な目的の遊技者でパチンコ店の前には、再び人の列ができるようになっていった。


 さて、この構造だとあまりパチンコ店は儲からない。メダルを店から借りるわけではないからだ。遊技者は個人の端末でオリスロ用のメダルを購入し、データ上のメダルの増減を楽しむため、いわば遊技できる場所を提供しているだけである。なのでオリスロが盛り上がる一方で既存のパチスロ店舗の多くは、閉店することが多くなり、代わりにオリスロを開発した3社が独自の店舗を拡大していくこととなった。(少なくなったとはいえ従来のメダルを「モノ」に変えるゲームセンター的な店も共存する)

 これはそんな新たな時代のパチスロに関わる様々な人間の物語。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ