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第114話 メンチカツ

晩飯は友人おすすめの深夜1:00まで営業している「名物!絶品煮込みカレー」にやってきた。なんせ今でも自席でタバコが吸えるらしい。

「ほれ。なんでも奢るよ。オススメはメンチカツ丼だな」

券売機にプラスをかざし、聞いてもないオススメを教えてくれるあたり大分上機嫌だと見た。

「ん。それじゃメンチカツ行くわ。」

食券をカウンターに持っていき、灰皿をとってテーブルへ。他にも1組客がいるけど彼らも喫煙者だ。気を使わなくてすんでよかった。

「なんか気づけばスロットの話ばかりだったな。最近スロット以外のことはどうよ。なんかいいことあったか?」

上機嫌の友人の一言に驚く。たしかにおれらスロットのことしか話してないわな。それじゃルネさんのことでも話すか。

「この前サンシャでおれが声かけようか悩んでた娘覚えてる?今その娘と結構頻繁に遊びに行ってるのよ。」

火をつけたタバコ。吐き出す息に言葉を乗せる。

「え?」

長い沈黙。ロングロック話法を使ってきやがった。フリーズする前にもう一度言ってみる。

「ほら、この前喫煙所で相談したじゃん。パチ屋に来てる女の子に声かけるかどうかみたいなくだり。また別日にたまたま話す機会があってさ、食事誘ったら来てくれて仲良くなれたのよ。」

「え?」

なんだよ。ワードロック高確率か。こっちもロックカウンターで言葉を待つか。

「大丈夫なのかその娘。たかられたりしてない?」

・・・半分ほどタバコが灰になる頃、ようやく口を開いた。

「いや、全然そんなことないよ。むしろ一緒に打ちに行った日はより勝った方がその後の飯とかカラオケ代出してる。多分同じくらい。」

心配してくれているのかな。けどルネさんはそんな娘じゃない。確信を持って言える。

「あ、そこまで進んでいるのね。それにしてもカラオケってまじか・・・。でいつから付き合ってるの?」

「いやまだなんよ。仲良くなってからそろそろ3か月だしそろそろかとは思ってるんだけどさ。」

そう。もうだいぶ仲良くなってるとは思うがどうも最後の一歩が踏み出せないでいる。やっぱ怖いよね。告白は。

「え?」

なんだよ。まだロック高確残ってたのか。・・・はよしゃべるんだ。

「はい~メンチカツ丼の2人、お待ち~」

おう。ナイスタイミング。夜遅くまで店を開けているおっちゃんに感謝しつつメンチカツ丼を受け取り席に戻る。

「二人のペースってもんがあるんだろうからあんま横から口を出すのも違う気はするんだけどよ。」

席に戻って箸を割ったところで友人がささやく。

「つい1か月前はクリスマスだったろ?女の子としてはそういう日にデートして夜には告白してほしかったんじゃないのかねぇ?油断してると逃がしちまうぞ。」

割った箸のささくれが心臓に刺さった気分になった。痛い。

「・・・まぁそうだよな。いや、実はクリスマスも一緒に遊びに行ったのよ。」

目の前のおいしそうなメンチカツ丼。自白を促すために用意されたかつ丼に見えたよ。

「まじか。どこに行ったのさ。」

くそう。なんで尋問みたいになってんのさ。

「いつも通りオリスロ打った。そんでネットカフェ行った。」

ルネさんいわく「クリスマスはどこも混んでるけどネカフェは穴場。ゆったりできますよ。」とのこと。

「・・・同じ部屋?」

「同じ部屋。」

またしても長い沈黙。なんとなく怒られると思った。

「・・・ふっ。まじでいいな。その娘。」

予想は外れて笑いよった。あれ。「なんでクリスマスにそんなとこに行ってんだよ」って怒られると思ったけど。

「だろ。」

まぁ考えてもしょうがない。得意げに返す。友人は静かにメンチカツ丼を口に運び始めたのでこちらも食べ始める。ホントだ。マジでうまい。

「・・・絶対逃すなよ。応援してるわ。」

皿を空にして再度タバコに火をつける友人がつぶやく。

「おう。そろそろ覚悟を決めるわ。」

白文字。いや青文字で決意表明をするもまだ覚悟は決まってない。こればっかりは失敗したくないからさ。


その後も恋愛トークを続けていたら日付が変わっていた。

「じゃあな。今日は助かったよ。」

別れを告げるは深夜の駐車場。夜ステージはチャンスだぞ!

「また悩んじまっても一緒に打ちにいってやんよ。じゃな。」

スロットは負けちまったけど不思議といい気分だ。おれもいつしか友人のようにあまり楽しく感じられずに悩む日が来るのだろうか。想像できないな。


一人の車内。帰り道。・・・あ。ヤロウハーツ貸すの忘れた。

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