第107話 楽しい?
「おれは何をやっているんだろうな。」
いつも通りの列。いつも通りの立ち回り。勝つも負けるもあれどなんとか生活していく程度は稼げている。何が不満か。何が不安か。分からない。分からないけどこうして今日も昨日と変わらない行動を続けている。
「よ。ひさしぶりか。」
いつも通りの中に紛れ込むイレギュラー。この店ではあまり会わないやつがいる。・・・オリスロの遊び方すら知らなかった奴だが大分うまくなったよな。
「ん!?・・・おう。久しぶり。せっかくだし一服行くか。」
今日も変わらずアケうにょを楽しそうに打ってらぁ。おれもどうせ朝ヅモできずに徘徊していたところだ。断る理由はないわな。
「せやな。」
調子はどうかとか最近の収支はどうだとか無難な会話をしながら煙を吸うためのガラス張りの檻へ向かう。運よく他に誰もいないのは助かる。賑やかな動物園だとタバコもまずいからな。
「この店に来るのは珍しいな。」
着火。スモーク。ぷはぁー。
「まぁな。今日ってそこそこ熱い日なんだよね?休みだったから来てみたわけよ。」
へぇ。イベ日なのは調べてきてるか。けどアケうにょは多分今回の全台機種ではないのよ。まぁそれでも勝ってるみたいだから余計なことは言うまい。
※全台機種とは パチンコ店がイベント等で特定の機種の設定を全て上(主に4~6)にした機種のこと。類義語:全台系
「なるほ・・・」
なんだろう。言葉が止まっちまった。しばらくの沈黙。
「・・・どうしたよ。なんか「おれは何をやっているんだろうな。」って顔してない?」
え!?・・・エスパーかよ。このユンゲラーが。・・・そんなこと今朝も考えていたっけ。
「・・・なぁ。「スロット」楽しい?」
何聞いてるんだろ。こいつの答えなんて知ってるのに。聞かなくても分かるのに。
「?楽しいに決まってるじゃん。楽しいから打ちに来てるのよ。」
そうだよな。予想通りの回答をありがとう。はぁ聞いたからにはこの話題続けるか。
「まぁ分かってて聞いたんだけどさ。・・・最近おれ、なんでスロット打ってるのか分からないのよ。もう楽しくないのかもしれない。勝って当然。期待値下振れて負けるとムカつく。1か月を通じてマイナスの時なんか胃に穴が開くかと思うほど。」
情けねぇ。こんな弱音を聞かせるつもりはなかったんだけど。なんでかな。・・・ほら黙っちまった。変なこと聞くんじゃなかったよ。
「・・・今打ってる台あんの?」
?ようやくしゃべったと思ったらどうゆうことよ。
「いや。打つ台を探しているところだったが。」
「そしたらこの店から移動して並び打ちせんか。おれたちがヤロウハーツ打った日みたいにさ。」
ほう。・・・それもいいかも。しばらく趣味打ちなんてしなかったな。たまには気分転換ってことね。