第六話 作戦会議
アストロベニアの兵士階級はこのようになっております、二等兵、一等兵、上等兵、兵長、伍長、軍曹、曹長、准尉、少尉、中尉、大尉。大尉がアストロベニアの中で一番上の階級であります。
机上に広げられたアストロベニア近辺の地図を私達四人は見ています
トリーニットブレス山脈を越えてここまで進軍してくる神罰、あの山脈から神罰の進行が見えて約三時間、神罰の大群とアストロベニア結界付近まではあと少しという距離に縮まっています
時間にして残り一時間すればここの結界に辿り着くと予測される。
アストロベニアの戦闘兵の数は二等兵は三百人、一等兵は百人、上等兵、分隊長、小隊長、合わせて五十人、計四百五十人がここで訓練をし、アストロベニアを守っています。
そのうちの二百名が神罰との戦闘の経験が浅い兵士ばかりです、これはアストロベニアにはトリーニットブレス山脈があるから神罰の大群の進行は有り得ないと高を括った、我々の失態ですね。
「まず、神罰との戦闘のしたことのある兵士を百名を前線へ送った方が宜しいかと‥」
「駄目だ」
「何故です!時間稼ぎや数減らしには十分な数でしょう!」
「約千体の神罰の進軍だぞ、百人程度で抑えられるか!それに、百人出したところで無駄死にする兵士が出るばかりだ!分隊長クラスがいるからと言って我々は人間だ体力にも限界が来る、それに相手は無頂相の体力を持つ化物だぞ」
「しかし」
「駄目なものは駄目だ、クソッ、兵士の数と神罰の数の差がかなりある、どうすれば」
先ほど口論していた二人、ノースフロウ偵察准尉とガルイ少尉は頭を悩ませています。
私の対面に座るイズマ中尉も二人の口論に耳を傾けながら難しい顔をしていました。
作戦会議の状況は私が来てからも変わっていません、兵士に数は神罰の数に対して心元無く、兵士の配置にも苦労しているみたいですね。
神罰の数が約千体、兵士の数が四百五十人かなりの差です、それに約千体の神罰を相手取るには約千五百の兵士が必要となります、今の兵力はその三分の一にも満たない
それは苦労するでしょう。
その他にも初めてのアストロベニアへの神罰の進行であるから、指示系統が混乱しているとか苦労するのも致し方ありませんね。
こういうのって大隊長の指揮下の元やるのではないでしょうかと、思いますが、なんせ、大尉が親の七光りと呼ばれる七光りのカマル大尉ですからね、真面に機能しないでしょう
それに頬が瘦せこけて口ひげを生やした、面長の髪を横流れにした黒髪のイズマ中隊長も、ここを任された日数が浅いのでいい作戦が出るかわかりません。
頼りになるのは茶髪を短く切り揃えた厳つい顔のガルイ少尉か、金髪の髪を後ろに流した強面系のノースフロウ偵察准尉ぐらいですかね
作戦は主にこの二人で考え、提案し、イズマ中尉が決め、結論に至っているみたいですし。
二人の口論に口を挟むのは申し訳ないですが、私も少しは発案した方がいいのでしょう
このまま作戦会議が拮抗したままですとすぐに神罰達がこの結界外近くに来てしまいます、タイムリミットも僅かですしね。
「よし、作戦が纏まらないなら私が数の殲滅でもしてきましょうか?そちらの方が安全ですよ」
「え、あ、いや、霙様、それは大変助かるのですが、それをしてしまうと我々の面目が立たなくなってしまうのですが、申し訳ありませんがそれを辞めていただくと幸いです」
私の提案に対して口を挟んだのはイズマ中尉、さっきまでずっとだんまり決め込んでいたのにこの提案をすると、申し訳なさそうに否定された。
確かに、トロス帝国の食糧庫と言われるアストロベニアの街の危機及びトロス帝国の危機でもある状況、このような事態な時にアストロベニアの兵士達が戦果を上げれば、トロス様からの褒美や階級昇進など得るものが大きい
人というのはがめつい生き物は百も承知、イズマ中尉もその部類という訳だったということ
ですがイズマ中尉が否定的であってもノースフロウ偵察准尉やガルイ少尉はどうでしょうかね
「どうでしょうか?ガルイ少尉、ノースフロウ偵察准尉?」
私はガルイ少尉とノースフロウ偵察准尉に目線を向けて、先の作戦について問う
これは自己犠牲が伴うような作戦だけど、二人が了承してくれるかどうかで決まる。
「確かに霙様の負担が大きくなり大変になりますが、私としてはそちらの方が安全策かと」
「俺もその作戦に関して賛成だな、霙様には申し訳ないがここで未来有望の兵士を失うわけにはなりません。多少無理をさせてしまいますが、霙様ほどの実力者となればこの数は容易いですから」
二人の反応は好印象、この二人はイズマ中尉と違い貪欲な人ではないみたいですね。
良かったです、でもガルイ少尉は流石に私のことを棚に上げすぎじゃないかと私的には思いますが、ネームドというのはそれだけ信頼されていると思った方が気が楽なのでしょう
そして私はイズマ中尉に目を向けました
「‥‥イズマ中尉、決める権限は貴方にあります、カマル大尉殿はここに来る気配が一向にないのでね」
「そうです!イズマ中尉殿、早くご決断をしてください!今にでも神罰共はこちらに向かって進行を続けているのですよ!」
「イズマ中尉殿、貴方が首を横に振ればまた逆戻り、首を縦に振ればこれで進められる‥アストロベニアの命運は貴方に掛かっているのです」
さて、イズマ中尉の決定で全てが決まるこの状況、イズマ中尉はかなり苦い顔をしています、そりゃあ、欲望のためか民のためかのこの二択を迫られているのですから
この状況で、どう答えるのか欲を取るか命を取るか迷っていますね
できれば、命を取っていきたいのですけども
「いい、でしょう‥その作戦を実行しましょう、霙様には申し訳ありませんがアストロベニアのために宜しくお願いします」
「了解致しました」
イズマ中尉が折れてくれたので内心ホッと胸を撫でおろしました、もし頭の固い、欲望の塊のような人だったらと思うと肝が冷えた気がします、何故ならここはトロス帝国の食糧庫なのですから
私はイズマ中尉の願いを聞き入れ頷きます。
さてと、これから準備を始めますか、
「ノースフロウ偵察准尉殿、私に付いてきてくれませんか?」
「ご下命とあれば」
「では、宜しくお願いします」
「はっ!」
私は作戦が可決したところでノースフロウ偵察准尉に声を掛けました。
声を掛けた理由としては、一度偵察に行った部隊の小隊長ですからどこに何がありどこら辺にどれだけの数の神罰共が居るか分かっていますでしょうし
私のお願いに対してノースフロウ偵察准尉は引き入れてくれたので、これで準備の一つは完了。
あとは自分の武器の確認、整備、マスクになにか不具合がないか確認して、終わり一応時折確認してたから、不備などが無くて早めに出発することができる
「それでは、前線へ行って参ります、ノースフロウさんも宜しくお願いしますね」
「はい、了解しました」
「それではご武運を」
敬礼をした二人に見送られて、私とノースフロウ偵察准尉は結界外まで歩を進めます
「あの、霙様?」
「はい、なんでしょうか?」
「最初に気になっておりましたが、ここは結界内でしたのでそちらのマスクは作戦会議中には要らなかったのでは‥‥」
「‥‥‥言わんで宜しい」
「はい、申し訳ありません」
――――恥ずかし!
中々最後は締まらない感じになってしまった、私のアホ、馬鹿野郎。
でも、これから戦いの本番です気を引き締めてやっていきましょうか