第五話 進軍
我々人類が敵対する神罰にはランクというものが存在しています
下から順に強さは緑、青、黄、赤、黒、白と上がっていき、白級クラスが神罰の中で最強クラスであり、人類がこの白級クラスに挑み何回もの敗北を味わったのは苦い思い出です。
ちなみに白級は私達人類が倒したのは一度だけで、白級に挑んで出した死者の数は人数は十万にも上ります。
「この眼で確認しないと分からない情報って言うものはありますね」
私は今アストロベニアの正門の城壁の頂上に立ちながらアストロベニアを神罰から守ってきたトリーニットブレス山脈からからぞろぞろと進軍してくる神罰を眺めています。
トリーニットブレス山脈とは、トリートス山とハイニット山とアンカーブレス山という三つの山から連なっている山であり、この街の人からアストロベニアの盾とも呼称される山脈であります。
トリーニットブレス山脈は私がアストロベニアに向かう最中に越えた山ですのでかなりの嫌な思い出の山脈ですがね。
「うわーかなりいますね」
私の眼下にはかなりの神罰共が迷いもなくこちら側へ進行しているのが分かります、結界でこの国は守られているというのに真っ直ぐこちらに進行しているとなると、バックに知能持ちの神罰がいると思われますね
私は偵察兵から貰った双眼鏡を外して片手で握ります、そして私の後ろに敬礼したまま立っている二人の兵士の一人に声を掛けます。
「数はどのくらい?」
「は、はい!数は約千体近くほとんどは緑級クラスとなっておりますが、青級、黄級クラスがちらほらと見えます!」
「ありがとう」
「はい!お褒めに預かり光栄です!」
この情報を教えてくれた偵察兵に笑ってお礼を言った後、再度進軍してくる神罰共に目線を向ける。
偵察兵で見た限りは赤級クラスは視えなかった、でもここまで正確に進軍できているのはバックに赤級クラスが居る可能性がある。
でも、双眼鏡で見たところ赤級クラスは居ない、となるとどこかに隠れているのかな。
「あの、み、霙様‥」
「なんですか、カマル大尉殿」
緊張した面持ちで私に声を掛けてきたのは偵察兵と別の兵士、このアストロベニアのカマル大隊長殿、太陽が反射しそうな頭に、団子鼻ででっぷりとした腹をしたカーキー色の軍服を着た偵察兵と違った軍人である。
鼻息を荒くしながら卑しい顔で私の身体を嘗め回しているのが特徴の男だ。
「それで何の用ですか?」
「あ、いえ‥何故霙様がここに居るのかと」
アストロベニアの全兵士を束ねる大隊長カマル、この男は非常に横暴且つ狡猾な男という噂で有名だ。
あくまで噂程度だが、どんな相手でもどんな相手でも高圧的な態度を取り、自分好みの女を見つけると自分の持っている権力を振るい我が妾に迎えたという、黒い噂が絶えない男、最もこんな横暴に動けるのかはカマルが親の七光りの影響を受けているからであるのだろうが
私はそんなカマル大尉から出てきた言葉に対して私は首を傾げる
「私がここに居ちゃダメですか?」
「いいえ、滅相もございません、いるのでしたらこのカマルが手厚く介抱したというのに」
胡麻をする様な態度を取るカマル大尉、やはり噂程度の話だったのだろうと思うが、横暴なカマル大隊長が強く出られない理由には私がネームドだからという理由もあるだろう。
ネームドというのは四つの大国の中で上位の実力を持つ者にしか与えられない称号である。
「それに先週、霙様が死亡したという通告がございましたので、少々私驚きまして」
「見てください、私はちゃんと生きていますよ」
「はい、ご存命感謝いたします、それに霙様の可憐でお美しい姿を視界に入れることが出来て感激です」
「そうですか」
「はい」
私はそのネームドの一人というわけでカマル大尉も強く出られないというわけだ。
それにネームドに盾突いたりすることは死罪に当たるというそれぐらい上の階級である
あの会話以降カマル大尉殿は私の姿を見ているだけで何も言ってこない、何かよからぬことを考えているのは確かだと思うけど
「‥‥」
さてと、視点を戻そうかな、現状分かっているのは約千体の神罰がアストロベニアに真っ直ぐ進軍していること、そして緑級が大半で、ちらほらと青級、黄級クラスが混じっていると
私の推測では赤級は一体ぐらいいそうなので要警戒
緑級は大の大人が倒した神罰から創り出した銃弾や武器を武装していれば難なく対処は出来る。
青級は緑級と同じ武装をする兵士が三人いれば対等に戦えるレベルだ。
黄級は青級と緑級に比べて耐久値と俊敏性があるが、囲めば勝てるのである程度の武装をしている大人が十人ぐらいいれば行けるはず。
だけど次が問題、赤級。
赤級は高い耐久性と俊敏性、攻撃力を持つ尚且つ知能もありある一定の行動しか出来ない黄級までの神罰とは違い、戦術を駆使したり戦うから、神罰の中でかなり厄介な存在だし
ベテランな兵士でもかなり苦戦するレベル、
「どうしたものですかね」
偵察兵でも見つけられないとなると、赤級クラスの神罰はやり手のはず
一度偵察小隊長に確認した方がいいかもしれません。
「カマル大尉殿」
「は、はい!」
「この戦いには私も参加しても宜しいでしょうか?」
「え、いや‥その、霙様が出るほどでは、それに先の戦いで疲弊しているでしょうし、お休みになられた方が、私の家へ招待しますよ!手厚く歓迎しますし、お茶でも‥‥」
「宜しいでしょうか?」
「は、はい‥」
さてと、カマル大隊長殿の許可を貰ったところで行きましょうか、私はフードを取って獣人特有のケモミミと尻尾を出して専用のマスクを付けます。
これで準備は万端です
私は、城壁の頂上から飛び降りて門の外側へと出る、外側にいるのは武装した兵士達
それぞれ、銃火器やら得意の獲物を持っています。
兵士たちは私が空から落ちてきたので目を白黒させて驚いていますが、私はそんな兵士達を尻目に設置されたパイプテントへと迎います
情報通達が来ているのでしょう、テントに向かう私を誰も止めはしません。
テントの下には三人の兵士が私に向かって頭を下げています。
「霙様、ご助力感謝致します」
「はい、アストロベニアのためですから」
「ありがとうございます、ではこちらへ」
私はテントの下へと促されました。