第三話 ロレル
人気のない食堂でハンバーガーを齧る
「うまうま·····」
殺風景な白い壁を見飽きてスマホを開く
校長からもらったスマホは結構高性能らしく、世界の悪魔危険度ランキングや島の地図、果ては学校のイベントにも使うそうだ。
ちなみに悪魔ランキングとは、世界中で発見された悪魔の中から最も多くの被害を出した個体をランキングしたものだ。
悪魔は人間と同じく、個体ごとに異能を持っている。
悪魔の強さは自らが司る力の殺害数だ。
簡単に言うと、《電車》の悪魔の強さは今まで人身事故で死んだ人数と比例するってわけだ。
しかし当然の事だが、悪魔の力が何を司っているのかは予想するしかない。
現在の悪魔ランキング上位スリーは、3位ロタ、2位名称不明、1位名称不明。
1位と2位は名前すら分からず、3位のロタにしても、力がなんなのか一切解明されていない。
ここまでが通常のランキングだ。
強さでは測れない、または圧倒的な力を持っていると推測されていたり、被害者がいなかったり。
そのような悪魔は〈unknown〉と呼ばれている。
その中でも最たる個体····デウス00。
今から約30年前、太平洋に大きな空洞を開けて出現し、謎の光を放った後地の底に消え去った謎の存在。
出現後、異能者の数が爆発的に増えた上に悪魔の発生数が減ったので、巷ではデウス00は悪魔ではなく神なんじゃないかと噂されている。
まぁ、実態は不明だが····。
ハンバーガーを食べ切り、ジュースに取り掛かろうとすると後ろから声をかけられた。
「デウス00かぁ····。」
振り向くと、俺のスマホを覗き込んでいた男と目が合う
「·····誰お前。」
「あ、あれ?何か思ってた反応と違う····。」
薄緑の髪の毛に、整った顔立ち。
少し幼さを残した小動物系男子·····。
感覚で分かる····コイツはモテるッ·····!
「どうしたの?」
ヤメロッ、ほっぺたつんつんすんな!
「で?何なんだよ。」
「え、何で怒ってんの·····?」
ふむ···何でだろ?
話し掛けてきた男をもう一度観察する。
なーんか怪しいんだよなー。
不気味というかなんと言うか·····。
「お前、何の異能だ?」
異能が分かれば、万が一の時でも戦いようがある。
どんな異能か知ればこの謎の不安も収まる筈だ。
「試してみる?」
「え···?」
頭に指を突き付けられる
「出来た!」
「え、終わり?」
終わったらしい····。
攻撃系のヤバい異能だったらどうしようか不安だったが、今の所何も起きてない。
「で?効果は?」
冗談だったのか?
それとも失敗したのかは分からないが、さっきまで感じていた謎の不安は収まった。
考えてみればこの時期に島に居るという事は俺と同じ新入生なんだろう。
「君の名前を言ってみて。」
俺の名前?
ってそりゃ····《あああああああ》だろ。
「あああああああだ。」
「やったあ!上手く掛かった!」
?····こいつは何を言ってるんだ?
もしかしたら洗脳系の異能なのだろうか?
急いで記憶を探るが、特におかしな点はない。
「おっと、そろそろ解除しなきゃ···。」
「?」
再び俺の頭に指が突き付けられる
「は!?」
「どう?これが僕の異能だよ。」
俺の名前はあああああああなんかじゃない。
·····何言ってんだ俺····。
俺の名前は赤志 凰牙だ。
断じて適当につけたゲームキャラの様な名前ではない!
·····それにしても凄いな。
洗脳系の異能っていうのはどんな術者でも、掛けられればどこか違和感を感じるものだ。
でもさっきの俺は何も感じなかった。
まぁ俺が洗脳をかけられ慣れてないからかもしれないが····。
「洗脳系の異能か····。」
「うーん····洗脳系っていうか《洗脳》なんだよね。」
珍しいな····。
洗脳系の異能は多くても《洗脳》の異能者は少ない、と言うよりも聞いた事が無い。
まぁ疑心も晴れたことだし自己紹介でもするか。
「俺は赤志 凰牙、新入生だ。よろしく」
「やっぱり君も新入生なんだね!僕はロレル・ディティ、異能は《洗脳》だよ。よろしくね!」
差し出された手を握る
良かった·····友達できた·····。