第一話 始まりの予感
飛行機のエンジン音にガラス張りの壁が震える
『トレジャーから出発便のご案内を───』
『サブ・エスコーラ、フィリピン行き、9時30分発4771便はただいま──────』
「んー!着いたー!」
ベルトコンベアで荷物を受け取り外に出る。
風に混じる暖かな気候が、ここが日本ではない事を主張する。
南国風の赤い花、強い日差しと雲一つない青空。
翼の生えた人間が1人、空を飛んでいる。
「すげぇ、《飛行》の異能か····。」
異能の学園なので、期待はしていたがこんな直ぐに見られるとは····。
空を飛ぶ人間は建物の方角へ飛んで行った。
高いタワーが幾つも乱立する一角····。
····インターフェクター学園都市。
通称、異能学園。
異能者とは、異能が使える人間の総称である。
能力の種類は生まれつき決まっていて、変える事は出来ない。
異能の種類には名前があって、大抵の場合は使えるようになると同時に自分の異能の名前も自然に分かる。
異能の強さは、文字数で決まる。
《火》の異能よりも《火炎》の異能の方が強力で、更に言えば《火炎》よりも《猛火炎》の方が威力が高い。
····と言っても、結局は使い手の問題なので、1文字異能者が2文字や3文字の異能者に勝ったというのはよく聞く話だ。
インターフェクター学園は、そんな異能者の中から才能ある異能者を保護、育成し、悪魔対策の礎となる者を輩出する事を目的とした教育機関だ。
ちなみに学費、食費、生活費は全て国が負担してくれる。
····だから倍率が高いのか。
学園を支援する国は、一つでは無い。
この島は元アメリカ領のデウス島で、学園都市が建つと同時にアメリカの管轄をはずれた。
何百年周期で起こる悪魔大量発生や、強力な悪魔の侵攻を食い止めるという、今の世界においてもっとも大切な役割りを果たしている。
この島は資金以外は全て島内で完結する。
食料、娯楽、学校に研究施設、果てはおにぎり専門店までのありとあらゆる建造物がこの広い島を埋め尽くしている。
そんな学園都市を取り仕切るのは、現学園校長のフォン・ローゼン、珍しい《司令塔》の異能者だ。
過去に二度、危険ランキング世界三位、❨衝突❩の悪魔 メタスタシスと渡り合い、退けた英雄。
最強の異能者は誰かという議論をすれば、必ず候補に上がる、生ける伝説·····。
緩い坂を上がりながら手紙の内容をもう一度確認する。
何度か読んでも最後の一文に注目してしまう。
敬具
インターフェクター学園異能研究都市
学園長フォン・ローゼンより