雪の日の探しもの
ある雪が積もった日の翌日、少年が無くした写真を探していました。
肩から鞄をななめにかけた少年は、昨日両親との大切な写真を落としてしまいました。少年の両親は、仕事の都合上なかなか家に帰って来ません。その両親とのたった一枚の写真を落とし、途方に暮れていました。
「どうしよう……この雪じゃもう見つからないかな」
そう呟いた時一人の少女が話しかけてきました。
「どうしたの? 何か探しているの?」
「うん……写真を探しているんだ。両親との写真でもう見つからないかもしれないけど」
少年がしょんぼりしながら答えると少女は少年を励まします。
「そうなの? 探せば見つかるかもしれないよ? 一緒に探そう?」
少年は静かに頷き、少女と一緒に写真を探しに行きます。少年の背の高さより大きな雪の壁の道を、少女と二人で歩きます。大人たちが、雪かきをして雪を積み上げたのでしょう。その道を、二人でしばらく歩きました。最初にたどり着いた場所は、町の大きな広場。雪が積もり、道が見えなくなっていましたが、少女と少年は写真を探します。少女が、大人たちから小さなスコップを借りてきてきてくれました。これで写真が探せますね。少女と二人で雪をすくって探しますが、写真は見つかりません。ここには無いようです。二人はまた雪道を歩きます。
次に二人がたどり着いた場所は、市場です。市場は賑やかで美味しそうな果物、食べ物などがたくさん売っていました。少年は勇気を出して果物を売っている屋台のお店の女の人に声をかけます。
「すみません! 写真落ちていませんでしたか?」
「写真? どのへんで落としたの?」
「ここまでは持っていたんですけど……この先で落としてしまったんです」
「ごめんね。私は見ていないかな……。交番にはもう行った? この先に交番もあるから聞いてみるといいかも。役に立てなくてごめんね」
お姉さんはそう言うと、仕事に戻ってしまいました。しかし、少年はあきらめず、ここでもスコップを使い、写真を探しましたが見当たりません。交番にならあるかもしれないと思い、二人で交番に聞いてみることにしました。
「お巡りさん、写真落ちてませんでしたか?」
少女が制服を身にまとったお巡りさんに尋ねます。
「写真? どんな写真かな?」
「この子とこの子の両親が映っている写真なの。落としちゃったんだって」
「ちょっと待っててね。少し調べてくるから」
お巡りさんは調べるために奥へと戻り一冊のノートを持ってきました。そこには「落とし物」と書いてあり、二人は期待に胸を膨らませますが……
「ごめんね。届いていないみたいなんだ。でも写真を拾った人をどこかで見たような……どこだったかな? 見回りの時だっかたな?」
そう言うとお巡りさんは首をかしげて考え込んでしまいました。そうして20分ほどたった時です。
「思い出した! あの木の近くだ! 遠くに大きな木が見えるかな? あの木は夢のまもり木と呼ばれているんだけど……。その木の近くに住んでいる男性がいてね。その人が持っているよ。君の写真を。ただ、ここからだと一時間近くはかかるからね。おうちの人に連絡してからの方がいいかもしれないよ」
「一時間か……。わかった! ありがとう。お巡りさん。連絡はしなくても大丈夫。夜までに帰れば怒られないから」
そう言うと少女は微笑みました。お巡りさんは困ったような笑みを浮かべていましたが、二人は歩き出しました。夢のまもり木と呼ばれている場所ははるか遠くに見えましたが、少年は心を奮い立たせて歩くことを決めました。
それからどれぐらいの時間がたったのでしょう。二人にはわかりませんでしたが、やっと夢のまもり木にたどり着きました。手足がかじかみ、感覚はほとんどありません。二人はもうへとへとでこれ以上歩くことはできません。二人がふと夢のまもり木を見上げると近くに一軒家が建っていました。その煙突からは煙がでていて温かそうです。その家に引き寄せられるように、二人はその家に近づいていきます。すると、まるでそのことが分かっていたかのように扉が開きます。
「いらっしゃい。そろそろ来るんじゃないかと思っていたよ。お探しのものは、これだろう? 歩いてきたのか……。それじゃあ、もう歩けないね。うちでゆっくり休んでいくといいよ」
家から出てきた優しそうな男性が少年が探していた写真を差し出し、家に入るように促します。少年は大切そうに写真を手で包むと鞄にしまい、少女と顔を見合わせ頷くと男性の家に入ります。家の中はとても暖かく、温かい飲み物も用意されていました。少年が不思議に思ったことを尋ねます。
「どうして、僕たちがくることが分かったの?」
「木が教えてくれたんだ。僕が偶然この写真を拾ったときにね。さあ、これまでのことを僕に話して。君たちの話が聞きたいんだ」
そう楽し気に話す男性に二人はこれまでの出来事を話します。その話を楽しそうに聞く男性との話は盛り上がり、外は暗くなっていました。楽しい時間というのはあっという間にすぎるものですね。
「そろそろ、お開きにしようか。帰れなくなる前に」
そう言った男性の手にはいつの間にか車の鍵がありました。車の中でも話は尽きず、少年が気づいた時には広場まで戻ってきていました。少年と少女が車から出ると男性はにっこり微笑みました。
「楽しい時間をありがとう。また会える日を楽しみにしているよ」
名残惜しそうに男性は言い、二人も答えます。
「また会いに行きます」
そう言うと男性は目を細めて微笑みました。そうして二人が振り返った時にはもう男性の車はなく、遠くに見えていたはずの木も見当たりません。二人は首をかしげながら家に帰って行きました。二人はこのことを誰にも話しませんでした。話せば、大切な思い出が消えてしまうようなそんな気がしたからでしょう。あの人が誰だったかは二人にはわかりませんでした。誰かはわからなかったけれど、二人はこのことを今でも語り合い大切にしているようです。
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