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第三話 「担当者会議?」三個め

「そ、そうだ確かに、あの『窓』あやかしの力に似せていたけど、いま思えば、まったく別物だった!」

「だから、怖かったんだ!!」

「チクショー、アタシを舐めやがってぇっ」

―いや舐めて、とかではないでしょう、と傍らの男二人の内心の冷静なツッコミが感じられる。


「そうか、『窓』かぁ!、アタシに喧嘩売るなんて、いい度胸してんじゃねえかっ」

『窓』が喧嘩売る―?、言われてもたぶん誰も理解できないだろうな、と傍らの男二人の内心の感想がひしひしと感じられる。


「よおしっ、『窓』ぉっ、かかって来いやぁっ!」

―もう、何言ってんだか! そろってアタマを抱えるしかない、ドライバーとケアマネ。


そして56秒ほどの沈黙のあと…

「気分は落ち着きましたか、シロン」

「うん!」

思った通りの答えに、ほっとする善也。

「そうですか、では行きまー」

言いかける善也の前を駆け出すシロン。

「まだだあっ!」

―な、何がまだ、なんだ?

呆気にとられる男二人。


『三丁目のサンドイッチ』の店主のところに駆け寄る。

「マスタぁーっ、ハンバーガーとホットドッグと海老カツサンドのセット、二つずつちょうだい!」


「は?」

意外なんてものじゃない男二人の叫び。

「はあぁ?!」


やがてそれら三つのセットのダブルをトレイにテンコ盛りに抱えて満面の笑みで帰ってくるシロン。

「よおし喰うぞおっ、力つけなきゃなあぁっ!」

何だか異常な勢いで減っていく、ハンバーガーとホットドッグと海老カツサンド。

「オヤジぃ、アタシ頑張るからよっ!!」

いや、あなたの父上が望むのは、食欲ではなくて―


「シ、シロン、あの…」

「大丈夫ぅっ!、アタシ胃腸強いからあっ」


…いや、大丈夫でないのは、「予算」なんですけど―

うなだれるケアマネの肩を優しくたたくドライバー。

そう、それは美しい男の友情。

…だが、財布の中身は、増えないのだ!、…残酷な事実がのしかかる!

一層うなだれるケアマネの姿。



午後一時の五分ほど前。


街の外れにある、見覚えのある一際古く大きな家。

由緒正しそうな瓦屋根に大きな門。

「白犬ケアセンター」と書かれたその車は、駐車場らしい傍らの空き地の、昨日と同じ処にゆっくり止まる。


辺りを見回しながらおずおずとした様子で出てくる女子高生。続くケアマネ。

「大丈夫ですか、シロン?」

「ダイジョーブッ、あんなエロ親父の作蔵なんか、目じゃねぇっ」


車から降りてきた野平と善也は顔を見合わせる。

二人の心配は、

昼間に大の男の四、五倍は食ったランチはどこに行ったんだ?

という事のみだったのだが。


「とにかく『田』の形に気をつけりゃいいんだろ?」

「ええ、でも考えたんですが」

「何だよ」

「描いた図形だけでなく、そう、四つに区切られたもの、例えば『障子や天井のさん』とか『タイルの模様』とかも怪しいと思うのですよ」

「えっ!」

ぎくりとするシロン。

「そ、それってさあ、下手すりゃなんでもアリじゃん!」

「怖いですか?」

「―んな事、ないっ!」

強がりに微笑んでしまう善也。

「では、行きますよ」

「ま、待ってよ」

無言で続く野平。


見覚えのある古めかしい上がり框が三段ほどもある広い屋敷の玄関先、だだっ広いその場所で、彼は声を上げる。

「ごめんください、白犬ケアセンター、ケアマネージャーの真野 善也です。お約束通り面談に参りました」

すると、奥からのそりと出てきたのは、当の「作蔵」だった。

「やあいらっしゃい、休みなのに呼び立てして悪かったね」

明らかに昨日と違う態度、そして顔立ち。


眉は頼りなく細く、そして鼻の横のにはいかにも人の良さ気なホクロがある。

黒尾さんの昨日の報告が無ければ分からなかった。

明らかに意図を持って、印象を変えている。


今日は作蔵自身が応接室に通していく。

外面には現さないが、歩く廊下の途中で、窓や障子のさんなどに、いちいちビクッと反応するシロンが微笑ましかった。


通された応接室は昨日とは違い洋間だった。

応接間に入ったシロンが言う。

「うっわ、虎くせ、羊くせぇ…」

見れば床に大きな虎の毛皮、豪奢なソファーのはこれ見よがしの羊の毛皮。

そして値が張りそうな大きな洋画や彫刻が居並ぶ。

しかしやがてそこに紅茶と菓子を運んで来るのは、作蔵本人だった。

昨日との態度の違いに不思議そうに眼を瞬かせるシロンと野平。


しかし善也は別の事が気になっていた。

ーなぜ、屋敷の使用人の気配が、しないのか?

何かある?、嵐の前の静けさか?


運ばれた紅茶と菓子に手を付ける間もないすぐに、作蔵がやってきて善也に声をかける。

「来て、くだされ」

シロンと野平に目配せし頷く善也。

続いて部屋を出る二人、戸が閉まる。


「ねえ、野平さん、あのエロ親父なんか昨日とずいぶん、感じ違わない?」

「そうですね、私も―」


ガチャリー!

ドアの辺りに響く、不自然な音。

はっと立ち上がり、ドアノブに手をかける野平。

「―鍵が!」

「閉じ込められました!!」



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