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3.社畜王宮生活開始


未だ信じ難い状況だが、どう足掻いても現実である。謎展開すぎて不安と動揺で胃痛がしてきた、気がする…この世界って胃薬あるかな…?粉薬は嫌だな…うぇってなるんだよな…


蛍が胃薬の心配をしだしたのに対し、安藤さんはまるでゲームのような世界にワクワク浮き足立ってるようだ。


ん?あーれ?気の所為かな…?安藤さんの目が獲物を狙ってるように見える…


安藤さんは、自身を起こし魔力を引き出すのに手を貸してくれた第一皇子の手を離さぬように握り、ジーッと見詰め続けている。


まぁ、確かに第一皇子の顔整ってるもんなー。見詰めるのも仕方ない、の…かな?


と、第一皇子の横顔をボケーっと眺めているとサッと第一皇子がこちらを向いた。


はぁっ!!!?うわっ、キラキラがっっ…!!?正面からはちょっと…耐性がっ…クッッ…


急な第一皇子キラキラスキル(勝手に命名)を受け思わず目を細め、眉間にクシャッとシワを寄せている蛍を他所に、第一皇子は蛍の隣に居たご老人に話し掛けた。


「神官長殿、賢者様達に今ここに居る者達を紹介していきたいと思うのだが。」


「はい、カイン殿下。賢者様達も少し落ち着いてきたようですし、可能かと思われます。」



いや、すみません。私の脳内はまだ処理が追いついてなくてひっちゃかめっちゃかしてるんですが…


あ、もう始まっちゃう感じですね。ッス、りょうかいでーす。



まだ困惑したままの蛍と、既に周りに興味津々な安藤さんが立ち上がるのを確認すると、第一皇子が一人一人紹介し始めてくれた。


「まず初めに、我が“メア王国”の現国王陛下であられる…」


「《メアーナ四世》である。この度は我が“メア王国”にようこそおいで下さいました、賢者様達。」


第一皇子の紹介に一歩前に出た、柔らく人の良さそうな笑を浮かべるが、頭にはしっかりと王である印を乗せた人が陛下だという。


「引き続き、その隣に居らっしゃるのが王妃である《エイン・メアーナ》。そして、私は第一皇子の《カイン・メアーナ》、またこちらは、第二皇子の《セイン・メアーナ》です。」


カイン皇子に紹介されこちらに美しい所作で礼をするのは、これまたキラッキラしたパツキンが腰の高さまで波打っているエイン王妃。


また、世の女性がこぞって集りそ…ん"ん"っ…失礼。世の女性達を一瞬で虜にしてしまいそうな甘い微笑みをこちらに送ってきたのは、第一皇子や王妃程ではないが少しくすみがかったパツキンのセイン皇子。


なんとも驚いた。王族は揃いも揃って顔が良いのか。凄い、神の理不尽を感じる…いや、勝手に感じたら王族様達に失礼だな。



また順に、紹介が続いていく。


困惑している私に親切に声を掛けて下さった、ご老人は神官長の《メロウ・カトラル》さん。


私達を召喚したという、恨めしき…いや、大迷惑の発端である魔導師長の《ライ・ケイツビー》さん。ダンディーな雰囲気で、これまた彫りの深く味のある美形であった。


だが、私は忘れない。この人が私達を召喚した張本人であるということを。

いいか、韓国ドラマの恨みは恐ろしいぞコノヤロウッ…


そして、素人でもひと目でわかる。敵に回したらヤバそうな程ガッシリした体格をした、騎士団長の《アーサー・バルクオム》さん。なんと、なんとこちらもまたまたお顔の整ったおじ様であった。


なんだろう…あれかな?顔整ってる、整ってないで採用試験とかしちゃってるのかな?もしそうなら、大問題なんだけど。もう、怖いよ。ここ周辺だけ顔面偏差値のメーター振り切ってるよ。だって、神官長様の周りにいる他の神官達も揃いも揃って綺麗な顔してるんだよ???




あぁ…くわばら、くわばら…


あれ、これ違うっけ?




その後丁寧な紹介に対して、私達もそれぞれ名前を名乗った。職業については、予想道理この世界では存在していないようだった。


まぁ、そうだろな…なんてったって異世界だし。うん…


あれ、なんか忘れてる気がする…。


一体何を忘れているのか、思い出せないまままるで肉の繊維が歯の隙間に入ったようなモヤモヤした気持ちで、安藤さんと私はこれから過ごすであろうそれぞれの部屋へと案内された。



*****



私が案内された部屋は、今まで通り普通に生きてたら絶対に遭遇することの無いだろう見るからに超お高級な感じのお部屋であった。


んー…休まる気がしないんだが…。でも、わざわざ部屋変えてもらうとか申し訳なさすぎるし…んんん…。


慣れるしかないのかなー、そういやベッドって…


ベッドは、なんとびっくり天蓋付きベッドでした。




絶対、寝れねぇぇええええ…し、慣れる気しないぃぃぃいいいいい!!!!!


豪華すぎる部屋に見合わない、庶民すぎる自分にまた胃痛がしてきた。


取り敢えず、一段落したら胃痛薬貰おう…


お腹の辺りをさすっていると後ろから声が掛けられた。


「蛍様、それではご入浴とお着替えを致しましょうか。」


「あ、わかりました。」


確かに、飲み会の時と同じ服のままだったので服からはタバコなどの居酒屋特有の匂いがした。それに、様々な疲労が重なってクタクタだったのでお風呂は有難い。ここが、お風呂の存在する異世界であったことに感謝した。


「あの、着替えなんですけど…」


「お着替えは、こちらで用意させていただきますゆえ。」


「分かりました。……その、大丈夫だと思うんですけど出来ればあまり華美でないものをお願いしたいのですが…」


「あら、残念です。承知致しました、なるべく派手でない物をご用意致します。」


『あら、残念です。』???!!!

え、やばかった???やばかった感じかこれ!!!!??あっっっぶない…言っててよかった…さすがに、三十路手前であのキラキラした感じの服はキツい。


着替えの事で一安心してるのもつかの間。さぁ、ゆっくりお風呂に浸かろう!と意気込んでいたら、沢山の侍女さん達に身ぐるみを剥がされ、あっという間に生まれたままの姿にされてしまった。


『一人でっっっっ!!!一人で入れますからっっ!!!』


という声も虚しく、あれよあれよと身体の隅々まで綺麗にされ極めつけにエステやらなんやらを施され気が付けば、仕事と人間関係のストレスでカラッカラに干からびていた大地(肌)が、ツルンツルンに潤い、なんなら質感も赤ちゃんのようなタマゴ肌になってしまった。


そして、用意されていた着替えをまた沢山の侍女さん達に着せられる。さすがに、ちょっと人が多すぎて気になったが勢いよく締められたコルセットでそんな考えなど全て吹っ飛んでしまった。…死ぬ。


最終段階である第二陣が待ち構えており、目にも止まらぬ早さで綺麗に髪や化粧が整えられていった。




完成した自身を姿見で確認して、絶句し顎が塞がらなかった。用意されていた着替えは、ドレスだったのだがこちらの希望どうり控えめな装飾であまりフリフリしていない物だったので、動きにくいドレスという事に少し不満はあるが妥協した。なんだろう…4歳、とまでは言わないけど3歳ぐらいは若返ってる気がする…侍女さんたちの技術ヤバい…流石です…え、なんで無料なんだろ…恐ろしいよ。


プロフェッショナル侍女さん達に心の中で大拍手を送っていると、部屋のドアを軽くノックされた。




王宮の人達の名前紹介を軽く致しましたが、また後ほど詳しい人物紹介を書きます。

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