宿屋にて
馬鹿ども追っ払って間も無くしたら、教えてもらった宿屋に到着した。
外観は、綺麗になっていて木造建築でかなり古そうなのに汚れひとつない美しい状態の二階の宿屋だ。
「おぉ すごい綺麗にしているのね〜」
女子であるリゼお姉ちゃんが、こう言うのだからそれなりにしっかり手入れをしているのだろう。
さぞ几帳面な人が管理しているのだろう。
そう思い扉を開けると“カランコロン“と言う音をたてて開いた。
内装を外装とマッチしていて暖炉とか以外は全て木製で出来ていて、テーブルで食事をしている人がいる。
どうやら一階は食堂になっていて、二階が宿になっているようだ。
料理を運んでいるのは13歳ぐらいの可愛げのある女の子でテキパキ働いている。
そんな様子を見ながらカウンターに座っている人に目を向けた……うーん予想よりも90°上をいっている人がたたずんでいた。
熊のような巨躯に、隻眼、スキンヘッド、極め付けはそのおっさんが座っている後ろに、巨大な戦斧が飾られている。
しかも、その戦斧所々紅っぽくなっている気がするような………………
「おう! 新顔だなようこそいっらしゃい!」
「えっ……はい」
「まず料金について説明するぞ! 食堂は、基本的にメニューによって料金が変更するから詳しくは娘か嫁に聞いてくれや! 宿泊については、二人部屋は、銀貨1枚 大部屋ならその半分だ! どうする?」
「え〜と ちなみに一人部屋の値段は?」
「銀貨1枚だ!」
「リゼお姉ちゃん?二人部屋でいいの?」
「えっ……まぁいいんじゃない?」
「じゃあ決まりだな 晩飯だけは付いているから
さっさと食わないと出せなくなるから! じゃあこれが部屋の鍵だから無くせんじゃねぇぞ」
「うん じゃあ行こうか」
「ん〜」
カウンター横の細い階段を登っていくと、七つの扉があり。
その一番が大部屋で、それ以外が個室になっている感じだ。
右手側の一番手前の部屋が貸し与えられた部屋のようだ。
中に入るとそこまで大くもないが、大きなベッドが1つと、トイレがあるだけの質素感じだが、ここでもおっさんの丁寧な仕事ぶりが窺える。
「特にやる事もないし、飯でも食いに降りようか?」
「そうしましょうかねぇ〜」
スタスタと階段を降りていると、喧騒が聞こえてきた。
酒が回ってか、さっきまで楽しく飲んでいたはずの冒険者が取っ組み合いの喧嘩をしていた。
「おぅ 悪いな嬢ちゃんら そこら辺の空いてる席で注文して待っててくれや!」
「あれは放置でいいんですか?」
「いいんだ いいんだ しょっちゅうある事だしな まぁ店のもの壊したりしたら……」
(こいつ絶対やばいヤツだ!)
そう言うおっさんの目は笑っていた。
「まぁ、娘に注文してくれ!」
「はーい」
さっきからの殴り合いは両者ともに満身創痍になっており、当事者たちも周りの野次で熱くなっているのか、なかなか終わりそうにない。
「さてメニューはっと…」
メニューに目を通すと、色んなものがあった。
言語理解のスキルがなかったら何書いてるかマジでわからなかったんだろうな。
「リゼお姉ちゃんどうするの?」
「私? 取り敢えず ミノタウロスのモモ肉ステーキでも頼もうかな?」
「決まっているならウェイレス呼ぶよ すいませーん」
「はいはいはい ご注文からお決まりですね
何に致しますか?」
「おすすめとミノタウロスのモモ肉ステーキ定食お願いします」
「はいはい かしこまりました」
「ありがとうね えっと…」
「私の事は、ルーちゃんと呼んでぐださいね」
「うん お仕事頑張ってねルーちゃん!」
「お母さんおおすめとミノタウロスのモモ肉ステーキ定食1つずつ」
「はいよー」
「というわけでもうしばらくお待ち下さい」
「うん了解」
リゼは心底どうでもよさそうにボーッとしていた。
そしてまだ続いている喧嘩に終止符が打たれた。
おっちゃんが、冒険者2人の顔面を掴んでアイアンクロウして宙吊りにしているのだ。
一応装備を付けていないとはいえ武器持ち出し、大の男なので総体重は150キロ近いはずなのに平然と持ち上げている。
両名ともにおっちゃんの腕を叩いて解放を要求しているので、渋々といった様子でおろしていた。
さっき見た時よりも頭がちっこく見えるような…
そんなやりとりを見ていると、晩飯が運ばれてきた。




