六甲山全山縦走4-ヒマラヤへ-
「六甲山最高峰931m。」
山頂の標識を影一は読み上げた。
ここが六甲山全山縦走中の最高地点である。
遠くには神戸の街並みの夜景がきれいに見える。
11月末の夜の山頂は雪こそないもののとても冷え込んだ。
「加藤文太郎もこの景色を見たのかな?」
文太郎のことを思い考える影一。
そして。
「加藤文太郎はヒマラヤを目指していた。とてもひとりで登れる山ではないから単独行の文太郎はザイルパートナーを持ち山で死んでいった。」
「だが俺は違う。山岳会に入りヒマラヤを目指す!!」
「5年後にはヒマラヤだ!!」
誰もいない暗闇の山頂で影一は決意とともにそう叫んだ。
山を始めてから今日まで何が自分にとっての目標になるのかずっと考え続けた影一だったがついにこのときその目標が決まった。
山岳会に入会して技術を学び仲間を募ってヒマラヤを目指す。
こんなにもドキドキするようなことが他にあるのだろうかと影一は思った。
一時期は人を信じれなくなった影一だったが山で出会う人達とは普通に話すことが出来た。
山岳会に入ればその環境が自分を変えてくれると信じた。
もし入会動機をいう場面があるのなら自身の成長の為。
それが影一の本音だった。
ヒマラヤを目指す過程で出会う様々なものが自分を変えてくれるに違いないそんな確信が影一にはあった。
だからこそ今は山岳会が必要だと思った。
そして山を下りる影一。
下り調子だというのに相変わらずペースは上がらずだらだらと歩き続け永遠にこの道が続くのではないかと思うようになった頃宝塚の町に降りた。
もう体は石のように重く満身創痍であったがなんとか車を停めてあるコインパーキングまでたどり着くとすぐに寝ることにした。
休憩込の行動時間は18時間を超えていた。
目を覚ますとすでに昼前になっていたが体は重くいろんなところがとても痛いので車で有馬温泉まで移動して日帰り温泉で体を癒してから家に帰ることにした。




