3.唐突な飯テロ
書いてて食べたくなってきました。
「これは、なんですの……?」
「なんでしょうか。私も知りません」
「いえ、わたくしが言っているのは、知る知らないではないのです。このように粗雑な料理、見たことがないという意味でして……!」
サタンナとクリスティーナは、テーブルに置かれた料理を見て言った。
目を丸くして、見慣れぬそれを様々な角度から観察している。対して、それを運んできたリクはどこか自慢気であった。胸を張り、二人に説明する。
「これはね、ジャガバター、っていう料理だよ!」――と。
クリスティーナは、それを聞いてこう答えた。
「……ずいぶんと安直な名前ですのね。ふかしたジャガにバターを付けているだけで、どうしてそんなに自信満々なのでしょうか」
訝しげに青年を見つつ「これが、客人に出すものなのですか?」と、チクリ。
しかし彼は全然気にしない、といった風に笑っていた。サタンナはそんなリクの様子に、少しだけ考えてから、まだ熱をもつジャガバターに手を伸ばす。
ややバターを多めにつけて、ふーふーと息を吹きかけてから一口。
柔らかなその実を咀嚼した。すると――。
「ふわぁぁぁぁぁあっ!」
少女の、蕩けるような声がした。
クリスティーナは驚き、友人のふにゃふにゃになった顔を見る。頬に手を当てて、恍惚としたように目を細めるサタンナ。その姿に、王女は震える。
少女とジャガバターを交互に見て、唾を呑み込んだ。
「し、仕方ありませんわね。サタンナに免じて、わたくしも一つ……」
そして、おもむろに手を伸ばす。
少しだけ熱さに顔をしかめたがそれでも、どうにか皮をむき、可食部にバターをつけた。じわりとそれが染み込み、色の変わるジャガ。その時、不意に漂った芳醇な香りに、クリスティーナはまたも唾を呑み込むのだった。
「では、いただきますわ……!」
緊張した面持ちで、ついにジャガバターを口に運ぶ。
歯を立てた瞬間に崩れるジャガの実。想像以上に柔らかかったそれに戸惑いながらも、王女はそれを口内でもてあそぶ。噛む必要もなく解れていくジャガ。
それが、舌に触れた。その時――。
「――――――――――――――っ!?」
ジャガの甘みとバターの酸味が組み合わさった、旨味がいっぱいに広がった。
自然と頬が緩み、思わず口元を手で覆い、何度も瞬きをする。声にならない声を上げて、しかし止まらずに二口目。クリスティーナはそれを繰り返すのだった。
無我夢中。小さな口で、ジャガバターを必死に食す王女。
そして、二つ目のジャガバターに手を伸ばそうとした時。
「――――はっ!」
彼女は気付いた。
にこやかに笑いかけている、リクの存在に。
すると途端に羞恥心がその身に襲いかかったのか、顔を赤らめた。
「くうぅ……! おかわり、いただきますわ」
「はい、どうぞ!」
しかし、それでも食欲には勝てなかったらしい。
彼女は二つ目を受け取って、今度はゆっくりとそれを堪能するのだった。
「ふふっ!」
そんな初めての友人の姿を見て、サタンナは微笑んだ。
リクと視線が合う。そうすると二人とも、自然と笑顔になるのであった。
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