2.二人の関係って……?
エミリオは貧乏な家の生まれだった。
それでも家族はみな、女神アヴィトラの敬虔な信者であり、貧しくもそれを救いにしていた。そのことが神官長であるヴァネッサの目に留まり、教会の幹部に採用されたのである。周囲もまた祝福し、妬む者もまたいなかった。
『されど、謙虚であれ。清貧こそ清廉なり』――と。
エミリオの父は、口を酸っぱくして息子にそう言っていた。
少年もまたそれを正しいと思い、魔物や魔族は滅せられるべき対象だ、と。そう胸に刻み込んで、日々の活動に励んできたのであった。
◆◇◆
そんな少年エミリオは今、魔王城にて――。
「おいひいっ! このスープの野菜って、全部ここの畑のものなんですか!?」
「そうですよ~っ! 喜んでいただけて嬉しいです!」
「おかわりは、いっぱいあるからね~?」
「ありがとうございます!!」
――提供された絶品スープに舌鼓を打っていた。
普段、節制と口うるさい父の出す料理しか口にしていないエミリオ。それは確かに教えとしては正しいのであろうが、食育としては良いものではなかった。
証拠として、彼はその年頃の男児の平均よりも背が低いように思われる。
「こんなに美味しい野菜スープをいただいたのは、初めてです!!」
乾いた砂地に、恵みの雨が降り注ぐようなそれ。
エミリオは何度も祈りを捧げながら、どんどんとおかわりをしていった。そうして、その回数も二桁に到達しようという時だ。
「そういえば、お二人のご関係はいったい……?」
本当に気になっただけなのだろう。
世間話のように、少年は首を傾げてそう言った。
「え、俺たちの関係……?」
おかわりのスープを準備しながら、その質問を繰り返すリク。
「そう言われてみれば、私たちってどういう……?」
サタンナもまた、青年の方を見てそう口にした。
不意に生まれた沈黙の中、最初にそれを破ったのはエミリオ。
「もしかして、ご夫婦――とか?」
どこからそう類推したのか、純粋な眼差しを向けてそう言うのだった。
すると、二人は――。
「ないな、それは」
「ないですね」
――同時に、答える。
ぴしゃりと。その可能性はない、と。
微塵も考えたことがなかったかのように、そろって言ったのだ。
「そうなんですか。なら、お二人はいったい……?」
それでも、そんな空気など関係なしに少年は話を掘り下げる。
そうなってくると、なかなかに難しい問題だった。
「うーん、そうだなぁ……」
しかし、そんな中でもどうにか絞り出したのだろう。
リクは「あー……」と呻きつつ、
「共犯者――とか?」
飛び出したのは、そんな言葉。
サタンナも特にツッコみは入れなかった。しっくりきたから。
だけども、少年にとってはそうでもなかったらしく――。
「共犯、者……?」
ポツリと、そう首をさらに大きく傾げるのだった。
そうやって夜は更けていく。
一人の少年を含めて、まるで温かい家庭のように談笑しながら……。
今回、短くてすみません。
いつもありがとうございます!
次回の更新は明日の昼ごろ!!
よろしくお願い致します!!
<(_ _)>




