1.注:ここは魔王城です
ここから第三部です!
「いやぁ、今日も快晴! 農作業に精が出るね!!」
「そうですねっ! 最近は時々にアルフレッドさんや、クリスティーナさんも手伝いに来てくださいますし。以前より賑やかになっていて、私も嬉しいです!」
「だね! なんか、アルがサタンナを見る目が怪しいと思う時もあるけど――それを除けば、全部がいい感じに進んでいるね!」
「……いい感じ、とは?」
「あ、それは……秘密~っ!」
「えぇ~、ズルいですよ! リクさん!」
昼下がりの魔王城。
その中庭では、もはやいつもの光景となった農作業の様子が見られた。
愛用の鍬で畑を耕したり、出来た作物の具合を確認して間引きをしたり、サタンナもかなりその手の作業に慣れてきたようだ。完全に農家である。
「あぁ、それは置いておいて……サタンナは聞いた?」
「置いておかれた――いえ。なんの話でしょうか」
その最中、突然にリクはサタンナにこんな話題を振った。
「クリスティーナから聞いたんだけど、王都の教会に所属する人たちが巡礼してるんだってさ。魔物の実態調査も兼ねて、って話だったけど」
「ふむふむ。実態調査ですか――たしかに、また活発になってますからね」
「そういうこと。名目上、ここは魔王城だから気をつけて、って」
「思うに、王女様が流して良い情報じゃないですよね?」
あっけらかんと話す青年に、少女は鋭いツッコみを入れる。
たしかに、王女であるクリスティーナが横流しして良いものではないだろう。リクはそのことを特に変に思っていないらしく、首を傾げるのだった。
「まぁ……とりあえずは、しばらく注意することに越したことはないですね」
「うん、アレだね。不要不急の外出は控えましょう、ってやつ!」
「いや、正しいかもですけど何かが違――」
と、そんな間の抜けた会話をしていると。
「――だぁれぇかー!? 助けて、下さいぃぃ!?」
そんな悲鳴が聞こえてきた。
二人は声のした方を見る。すると木々の生い茂る場所から、小さな神官服に袖を通した少年が駆けてきた。丸い黒縁メガネをかけた彼は、血の気の引いた顔をしている。そして、ハッとしてこちらを見ると――。
「そ、そそそそそ、そこのお二人! 助けてください!?」
全速力で、リクとサタンナのもとへ。
二人の背後に隠れると、ガタガタと小刻みに震えていた。
そうして間もなくすると、森の方からは蜂型の魔物であるジャイアントビーが姿を現す。単純に大きな蜂というだけの魔物なのだが、それなりの強さだ。
それが一匹、二匹――おおよそ十匹か。
「サタンナ、ちょこっと予定変更。まずはあの蜂を倒そうか!」
「は、はい!」
鍬を構えて、リクが言う。
するとサタンナもまた、手に持っていた小さな鎌を構えるのだった。
◆◇◆
そして、数分後。
魔素に還っていく蜂の群れの中に、リクとサタンナは立っていた。
「それで、キミはいったい何者なのかな?」
「あ……えっと、ボクはエミリオ・リオンハートといいます」
奥の方で身を隠している少年に青年が声をかけると、そんな返答。
「その、巡礼に参加してたのですけど――途中ではぐれてしまって」
「あぁ、なるほどね……」
それを聞いて、リクは納得したように言った。
どうやら、このエミリオという名の少年は噂に聞いた巡礼に参加していた神官――おそらくは見習いだ――の一人だったのだろう。
しかしその一団からはぐれ、結果としてココに流れ着いた。
「どうしましょう。ここがどこかも、まるで分からないんです……」
涙目になるエミリオ。
黒いボサボサの髪に、太めの眉。磨けば光りそうな端正な顔立ちに、悲しみの色を浮かべていた。そんな表情をされると放っておけないのが、魔王城の二人。
「うん、それじゃ一晩はここで休んでいくと良いよ」
「そうですね。王都に送り届けるのは、明日以降で良いでしょう」
即決だった。
迷いなく決められたことに、少年は呆然とする。
果たして、神官見習いの少年エミリオとリク、そしてサタンナは出会ったのだ。
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次回の更新は19時頃予定(すみません、少し遅れるかもです。
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