体育祭
体育祭ですね。
愛要素も少しずつ入れていけたらと思います。
楽しんでいただけたら幸いです。
「暑いー」
季節は夏。
いよいよ体育祭です。
夏の日差しが照りつける。女子生徒たちは日焼けしてなるものかと全身に日焼け止めを塗っている。
中間テストも終わり、クラスが一丸とならなければならない体育祭がやってきた。学力同様凡人の私が出場する競技は個人種目1つと団体競技1つ。運動神経のいい人はというと、クラス代表のリレーなどに出場する。
我妻くんや高遠くんがこの部類に入る。
悠里は1年生の時にはまだ運動神経も普通だから私とそう変わらないようだ。
「雪ちゃん、次の競技でるんだよね?」
「あっもうそんな時間かー。行ってくるね」
「頑張ってね」
出場者の集合場所へ行く。
私が出場する競技は足の速さは関係ない。だって、私が出場するのは障害物競争だから。
障害物競争なら足の速さは関係ない。
しかも障害物競争というなのパン食い競争だし。
足の速さ関係ない上にパンまで食べられる。最高な競争だと思う。
集合場所で待機していると一際大きい歓声が聞こえてきた。
今やってるのは短距離走だからそんな歓声をあげるようなことはないはず。
運動場へ目をやると、どうやら我妻くんの出番らしい。
悠里も応援するだろうな。
涼しげな顔してスタートをきる。綺麗な金髪が風にさらされる。仕草の1つ1つが美しい。
さすがパッケージキャラ。綺麗だ。
彼はスチルも綺麗だったよな。
モブになって、非攻略キャラの攻略もだけど近くであの顔を見れるのはちょっと役得かもしれないとも思っている。
いや、だって普通の人生に中々ないよ。乙女ゲームのキャラ間近で見るの!!
短距離走が終了し、いよいよ自分の競技になった。
あまり点数には関係ないとは思うけど、それでも一生懸命やらなきゃね。
自分の番になり、ピストルのスタートの合図で走り出す。
「雪ちゃん!がんばれー」
途中、悠里の声が耳に届く。
頑張らなきゃ。
パンに飛び付くも中々口では難しい。みんなは恥じらいもあるみたいだけど、そんなことも言ってられない。
口を大きく開けて飛び付く。
やった!取れた!
なんとか口に咥えてゴールする。
3位か。まあまあかな。
あんパンを片手に自分の順位に満足する。
競技が終了し、自分のテントへ帰ろうと歩く。悠里が待っているはずだ。
テントへ戻りながら体育祭のイベントを思い出してみる。
1年生は特になかった気がする。うん、たぶん。
「仁科。仁科雪!」
考え事をしながら歩いてると声をかけられる。
この声には記憶がある。と、いうか私の名前知ってるんだな。
「高遠くん。何か用ですか?悠里ならテントにいますが」
「知ってる。用がないと声なんてかけないだろ」
「はあ」
意外と口が悪い。これは新発見。
「ところで、そのパン。自分で食べんの?」
「えっ?」
手に持っているパンに話題を振られ、驚く。
いや、もちろん食べますよ。だって私のだもの。
「食べるけど」
「それ、半分くれない?お腹すいてるだよね」
「え?」
いや、さらっと何いってんのこの人。
「悠里がお菓子持ってるから貰えばいいのでは?それにもうすぐお昼だよね?」
だいたいなんで私?悠里がパン食い競争に出てないから?いや、そんなことはない。
誰ともでも仲良しなんだから他の子に貰えばいいのでは?
「あの、もう行くね」
高遠くんを置いて歩く。
これ、普通だよね?もしかして罰ゲームかなんかだったのかも。うん。そう思うことにしよう。
テントへ戻ると話しかけにくい二人の姿。
悠里と我妻くんだ。
絵になる。
何度かスチルで二人の姿は見てるが、悠里の顔は隠されていた。
話しかけにくい。
「だから呼び止めたのに」
背後から再び声をかけられる。
そうか。彼は知っていたんだな。
わかるけど。
しばらく二人を見つめていると、悠里がこちらに気づく。
「雪ちゃん!」
笑顔で手招きされる。我妻くんはばつが悪そうな顔をしている。
うん。私もしかしなくても邪魔じゃない?
そんなこんなで体育祭の午前中は終了したのだった。
長くなってしまいそうなので前後編にわけることにしました。