クリスマスパーティー
クリスマスパーティーってどういうのなんでしょうか?パーティーなんてしたことないのでこんな感じでしょうか?
雪ちゃんも悠里も少しずつ恋愛を意識し始めてます。
2学期も終わりが近づいています。
期末テストもまあまあの成績で、とりあえず冬の補習はなし。
街はすっかりクリスマスムード一色です。
学校生活はというと、特に変わりはありません。変わったことというと、高遠くんに『雪』と呼ばれるようになったこと。
悠里に呼ばれるのはいいけど、高遠くんに呼ばれるのはまだ慣れない。
「雪ちゃん、クリスマスパーティーしよう!」
「クリスマスパーティー?いいけどどこで?」
「うちで!!」
クリスマスパーティーかー。
パーティーなんて久しぶりだからな、楽しみだけど誰がくるんだろう。
と、いうかパーティーなんてしてていいのか?
誰かに誘われないのか。
「じゃあクリスマスの日にうちに集合ね」
「わかった」
悠里の家ということは人数はそういないだろう。
あまり大勢が集まる場所は好きじゃない。
街中も苦手だ。
クリスマスムード一色の街、そして学校。
文化祭終了してからカップルが増えたのはいうまでもない。
話はクリスマスの予定ばかり。
駅前の大きなクリスマスツリー、至るところにあるイルミネーション。
恋人たちのイベントか。
前世の記憶の中にクリスマスはない。クリスマスは確かにあったはずだが、彼氏いない歴=年齢だったせいかそういうイベントには疎い。
疎いという言葉が正しいのかどうかは不明。今までそんなイベントには参加しなかった。
ああ、一度だけあるな。
病院のクリスマス会。
今の記憶の中のクリスマス会は家かな。
ケーキを食べてプレゼントを貰うくらい。家族との質素なクリスマス会。
それでも、そんなクリスマスでも楽しかった。
だって、家族がみんな笑顔だったから。
前世の…遠い記憶の中の家族はいつも泣いていた。
『どうして……』
そんなことを言われても困る。
私にはどうしようもなかった。
どうすることもできなくて、ただ申し訳ないと感じていた。
だからだろうか。
今の人生は些細なことがとても楽しいし、些細なことが幸せだと感じる。
クリスマス会当日。
悠里の前で立ち止まる。
本当に私がいてもいいのだろうか。いや、悠里と今一番仲がいいのはきっと私だ。自惚れてみる。
「あれ?雪、そんなとこで何してんの?」
ふいに声をかけられて心臓が跳ねる。
私を雪と呼ぶ男子は1人。
「高遠くん」
「悠里の家に用?あっ、クリスマスパーティーだっけ?」
「そうです…」
「そんなに緊張しなくても、悠里のお母さんは優しいよ」
そういう問題ではない。
ここで悩んだ私が馬鹿だった。悠里の家ということはここは高遠くんの家が右隣。そして左隣は我妻くんの家のはずだ。
幼馴染3人がいつも一緒なのはこれが一番の理由。
3つ隣のお家に仲の良い母親たち。
「一緒にいく?」
「えっ?」
「ちょうど悠里の家に行くとこだから」
高遠くんが悠里の家に行くこともあるのか。
行っていてもおかしくはない。だが、この感じ。絶対頻繁に行き来してる。
高遠くんと一緒に家の中に通された。
そこには悠里と悠里のお母さんがいた。
「何、瑛くん。他人行儀にしなくてもいいのよ。息子同然なんだから」
「お母さん!」
「雪ちゃんもいらっしゃいね。雪ちゃんとも会いたかったのよ~。この子雪ちゃんの話しかしないから」
「もういいでしょ!」
あの悠里が振り回されてる。いつも振り回す方の悠里が。
この親にしてこの子ありだな。
「本当に仲良くしてくれてありがとうね」
さっと両手を握りしめて言われる。
うちの親と同じ反応。
子供のことが心配な親の反応だ。
今でこそ両親とはうまくいっているが、昔の…前世の私は厄介者扱いを受けていた。
温かい。人のぬくもり。
私はこれが大好きだ。
当たり前に与えられるものが与えられなかった経験があるから…。
だからこそなのかもしれない。
私は今が好きだと心から思う。
「お母さんはあっち行ってて!」
「はい、はい。あとで色々持っていくわね」
こんなにも優しい世界があるなんて思わなかった。
悠里のお母さんが作った料理を食べ、プレゼントを渡し、なぜか参加する高遠くんと悠里のお母さん。
楽しい。
自然と笑顔になれる。
こんな場所、ここに生まれてきて良かった。
『じゃあ…私はどうするの?』
心の中で問いかけられる。
『わ…………いで……』
後が聞き取れない。
話しかけないで。
私は今が大事なのだから。
『……ない』
聞こえない。
聞こえない。
聞きたくない!
聞かない!!
「雪?」
はっと我に帰る。
「呆けてる…大丈夫か?疲れた?」
「あっ、いや。大丈夫です」
気づいてくれる人がいる。
心配してくれる人がいる。
私は、現実にいる。
この世界に存在してる。
だから…
『ゆるさない』
これは…だれの声だろう。