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文化祭

文化祭当日です。少し雪ちゃんの恋も進展しました。

楽しんでいただけたら幸いです。

なんだか周りがざわついています。

朝から準備に追われ、服を着替えてついに開店時間。

今日は文化祭です。

待ちに待った文化祭当日。


時間は二時間前に遡る。

早めに登校し、食材の下準備を行い、昨日準備したテーブルの上に花を飾る。

テーブルを拭いて、お皿やコップを準備。男子の執事服の胸ポケットに綺麗にアイロンをかけたハンカチをいれ、女子のメイド服の前にエプロンをかける。

忘れてはいけないヘッドドレスを人数分並べて、クラスメイトがくるのを待つ。

なんだか楽しみにしすぎた人みたいになったけどこれは性格だ。

やれることはやっておきたい。後悔はしたくないから。

ただ、誰かこの状況を説明してはくれないだろうか……。


「仁科さん、あと何かすることある?」

「いえ、お手伝いしてもらったので大丈夫です」


なぜか手伝いをしてくれる我妻くん。

なんで同じクラスでもない彼が手伝ってくれるのか。いや、それよりもなぜこの時間に彼がいるのかだ。


私は前世の記憶のせいか、こういうイベントになると心配で早く準備を開始する癖がついている。

ああ哀しきかな、ブラック企業。


本当は手伝いはいらないのに、彼が手伝いたいと言ったから頼んだけど…なんでこの人ここにいるの?

いつもは悠里と同じくらいの時間に登校してくる。

高遠くんと一緒に。


「あの、我妻くん。クラスの方はいいんですか?」

「うん。大丈夫だよ。俺、客寄せ係だから。なんかしたくて朝イチに来たんだけど、クラスの方は人数いたからこっち、手伝いに来たんだ」

「そうなんですか。こちらももう終わりましたから大丈夫ですよ」


なるほど。そういうことか。

多分、クラスメイトに当日客寄せだけでいいとでも言われたのだろう。

準備に参加したかったようだ。

わかる。その気持ち。

私は裏方の方が良かったけど、悠里の一声で表に…。

きっと役に立たないから準備だけでもと早めにきたのだから。

要領が悪いわけではない。ただ、人には向き、不向きがある。私は表舞台は向かないのだ。


ただ、こちらの準備も終わったのだからクラスに帰ってほしい。それか誰でもいいから早く登校してきてくれないだろうか。

2人きりは恥ずかしいし、何を話せばいいのかもわからない。

悠里、早く来ないかな。


変な空気が流れる。

会話も進まない。

気まずい。

なんなのこの間は。

何分くらいたっただろう?多分5分も経っていないとは思うが体感では何十分という感覚。

気まずい空間を割ったのは誰かの廊下を歩く音だった。

登校時間、1時間前。

やっと誰かやってきた。

準備中は良かったのだが、もうこの空気に耐えられなかった。


「あー!やっぱり雪ちゃん来てた」


足音の正体は悠里だった。

そういえば、昨日悠里には朝早く行って、最終確認する予定だと伝えていたんだった。


「悠里!おはよう」


悠里の姿にホッとして、駆け寄る。

助かった。


「あれ?はるもいたの?」

「うん、1人だったから手伝ったんだよ」

「ふーん。これ、2人でやったの?凄い!」


教室を見渡して悠里が目を輝かせて感嘆の声をあげる。

こんなに喜ばれるとやって良かったとこちらまで嬉しくなる。

やって良かった。


それから、悠里のおかげで変な間も空気もなくなり、我妻くんも自分のクラスへ戻っていった。


そして、今に至る。

文化祭が始まった。

他の学校の子や、保護者、家族、地域の人たちが文化祭にやってくる。

私たちはメイド服に着替えて接客を行う。


「仁科さん、できたから持っていってー」

「はーい」


始めこそ緊張に失敗を繰り返していたが、慣れてきたのか失敗もしなくなった。


「ねぇ、仁科さん。私、彼氏がきたから休憩行ってきていい?」

「いいんですよ」


さっきからみんな休憩に行ってしまって自分の休憩がない気がするがそれは気にしないようにしよう。

青春っていい。


接客の休憩時間になれば、裏方の調理を手伝う。簡単な作業くらいはできる。むしろ、ホットケーキは作る方だから任されるのは嬉しい。

忙しく仕事をする。

自分に役割があることが楽しいし、嬉しい。


「仁科さん、休憩してもいいよ」

「あっ、はい」


休憩といっても、この格好(メイド)で出し物を見て回るのは抵抗がある。

教室の裏方の隅で椅子に座り、ジュースを飲む。

悠里は休憩時間に我妻くんが連れ出してしまった。たぶん文化祭を見て回っているのだろう。

悠里はいつものように私とと言ったが今回は断ってみた。

いつも一緒だと我妻くんかわいそうだし。

そういえば、高遠くんも一緒なんだろうか。

あの2人は私と悠里のようにセットに感じる。

夏休みに4人だったからかな。


「仁科さん、文化祭見に行かないの?」

「あー、はい。この格好だし」

「じゃあ、なんか買ってこようか?」


クラスメイトが気を遣ってくれる。

でも、申し訳ないな。


「大丈夫です。悠里が何か買って来てくれると思うし」


悠里にお願いしてるわけではないけど、クラスメイトに買って来てもらうくらいなら自分で買いに行く。

人に迷惑はかけたくない。嫌われたくないから。


「あっ、仁科さんいた」


急に名前を呼ばれて驚く。

その声は夏休みによく聞いていた。


「高遠くん?」

「悠里いないから暇でしょ?ちょっと付き合ってよ」

「えっ?」

「なぁ、仁科さん連れてっていい?」

「ずっと働いてるからいいよ~」

「じゃあ行こう」


私の意思は無視ですか?

手を引かれる。

手を繋ぐのは何度目だろう。何度経験しても恥ずかしい。

この人、なんで悠里と一緒じゃないんだろう。

暫く2人で文化祭を回る。

主に高遠くんが回りたいところばかりだけど。

でも、なんでだろう。2人でシェアしながら食べたり、展示物を見て回ってる。

釣り合いがとれてないのはわかってる。でも、自然と笑ってしまう自分がいる。

彼はこんな私にも優しい。

やっぱり、なんで攻略できなかったのか疑問だ。


「そろそろ戻らなきゃ」


時計を見るとあれから30分も経っている。

休憩時間も終わりだ。


「仁科さん、もう少し付き合ってよ」

「でも…」

「少しくらい大丈夫だよ。みんな帰ってこないんでしょ?」


だから帰って、代わってあげたいんだよ。

今頑張ってくれてる子たちが文化祭を楽しめないのはかわいそう。


「だめです。だからこそ、代わってあげないと」

「そう。じゃあ、オレも手伝おうかな」


いや、うちのクラスはいいから自分のクラスを手伝ってあげて欲しいのですが。


「あっ自分のクラスは大丈夫だから。うちのクラスの出し物展示だし」


考えが顔に出ていただろうか。

展示なら人がいなくても成り立つ。

クラスに戻って、再び仕事をする。

クラスメイトからはもう少しゆっくりしてきても良かったのにと言われたが、大丈夫だと答えた。

高遠くんは違うクラスなのに、もう溶け込んでる。さすが中等部からの持ち上がり組。

悠里はまだ戻ってこない。

いつ帰ってくるんだろう。

1年時の文化祭イベントを思い出してみる。

何があったかな。

相手は我妻晴樹。ああ。我妻くんのルートだから、恐らくイベント発生したな。

悠里は1年目の文化祭、我妻くんのクラスを急遽手伝うイベントが発生する。お人好しだから、断れない。

そうだった。

しばらくどころかおわりまで悠里は帰ってこないな。

少しは見れたかな。


あわただしかった文化祭もようやくおわりが見えた。

後夜祭には参加せず、片付けを行う。

クラスメイトには後夜祭に行ってきていいと伝えた。

悠里は一度戻ってきたけど、あまり参加できなかったと聞いたから後夜祭だけでも参加してきてと我妻くんに押し付けた。


「楽しかったな」


片付けしながら文化祭を振り返る。

楽しく過ごせたな。

クラスの役にも立てた。


「やっぱりここにいた」


後ろから声をかけられる。

この人、なんで悠里の側に行かないの?


「どうかしましたか?高遠くん」

「悠里が、雪ちゃん片付けしてるからって」


悠里に頼まれたのか。


「私は大丈夫ですから、高遠くんも後夜祭に行ってきてください」


後夜祭開始頃にクラスメイトと後夜祭に行けって追い出したのに、帰ってくるなんて。

悠里の影響力すごいなー。


「手伝うよ」

「いえ、もう終わりましたから」


本当に片付けはほぼ終わっている。

ああいう華やかな雰囲気が苦手だし、みんなが楽しそうにしているのをここから見るのが楽しかった。


「じゃあ、オレもここにいよ」

「なぜですか?」

「はるの為。たまには2人きりにしてあげなきゃ」

「友達思いですね」

「まあね。ねぇ、仁科さんさ、雪って呼んでいい?オレもあきでも瑛でもいいから」

「はっ?」


名前?いや、ちょっと待て待て。

名前で呼び会うほど仲良くしてたっけ?はぁ?

頭が追い付かない。


「まあダメっていっても呼ぶけどね」


彼との仲が少し近づいたらしい。

まさか、攻略の目的果たせそう?

好感度の確認がしなくなった。

こうして文化祭は終了した。

いろんな意味で疲れた……。


遅い更新で申し訳ありません。

頑張って更新しますので暖かい目でみていただいたらと思います

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