余談《我妻晴樹の場合》
晴樹視点の余談です。
他キャラの視点を入れるのもたまにはしていきたいと思います。
余談なので短いです。
次から2学期です。
次回更新は28日か29日になります。
本編です。
幼なじみの《ゆうちゃん》が帰ってきた。
並木悠里。
10年前に引っ越した幼なじみ。
いつもあきとゆうちゃんと一緒に過ごしていた。
『きっとまた会えるよ』
その言葉が本物になった。
高校の入学式に会ったゆうちゃんは昔と同じように素直でかわいくて、うっかり自分の素をみせてしまいそうになった。
かわいかったゆうちゃんは大人になっていて、綺麗という言葉が似合う素敵な女性になっていた。
そんなゆうちゃんを『ゆうちゃん』と呼ぶのは照れ臭くて、『悠里』と呼ぶようになった。
悠里は俺にないものをたくさん持ってる本当に素敵な女の子だった。
そんな悠里のそばにはいつも1人の女生徒がいた。
入学式から仲良くなったらしい彼女とは中等部の時に一度同じクラスになったことがある。
ただ、中等部の時の彼女といまの彼女は印象が違う。
『仁科雪』
目立たない。いつも隅にいて、無口で無表情の女子という印象が強かった。
元々普通の女の子とは少し違ってはいた。でも、高校生になってずいぶん大人びた印象がある。
元がおとなしい、落ち着いた女子生徒だったから大人びているのはわからないでもないのだが、あんなに表情が変わる子ではなかった。
悠里のせいなのだろうか。
ニコニコ笑う悠里につられているのか。
ただ時々みせる懐かしむようなあの表情が気になった。
大人の…子供を見つめる視線。
そしてまるで、別人のような立ち振舞い。
「雪ちゃんね…」
悠里は雪ちゃん、雪ちゃんと何かにつけて彼女を呼び出す。
彼女は何も言わずに答える。
あきも、彼女のこと気にしてたな。
花火大会の時、遊園地の時、あきは彼女を連れていることが多かった。俺に気を使っているのかもしれない。
瑛は悠里のことはなんとも思っていないのか?
それはない。
本人からきいたわけではないがそんな気がした。
自分が王子キャラって呼ばれてるのは知っている。
人には優しくしなくちゃ。
でももうやめよう。
みんなに優しくではきっと悠里には伝わらない。
雪ちゃん。
彼女とは仲良くしておいた方がいいかもしれないな。
「うん。あきにも伝えて、正々堂々と」
自分が納得いく選択をしたい。
後悔はしたくない。
2学期からが楽しみだ。