第9話
今オレは魔族に歓迎されるどころか、侵入者と間違われています。
まあこの状況だけ見たらそう思うのも仕方ない。目の前にいる魔族のおっさんは話が通じればいいが。
「アルザークさん、お久しぶりです。」
フランの知り合いだったか。フランさん、説明お願いしまーす。
「ん?フランじゃないか。お前は確かヒューマン領に魔王様をお迎えに行くと言っていたはずだが。」
「はい、魔王様をお連れいたしました。」
「ということは、そこのザキのとなりにいるのが魔王様なのか?どう見てもヒューマンにしか見えないが。」
「いや、オレが魔王であってる。永山薫だ、よろしくな。」
「そうか、我はアルザーク。魔族の幹部のリーダーをやっている。」
「アルザークか、カッコいい名前だな。」
見た目的にリーダーぽっいなとは思ってたけど本当にリーダーだったよ。
「しかし、カオル。貴様は本当に魔王様なのか?」
「というと?」
「以前一度だけ、魔王を名乗るものが現れ、そいつは偽物だったというとことがあったんだ。」
へーバカな奴もいたもんだな。
「そうだったのか。あっでも、どうやってそいつが偽物だとわかったんだ?」
「簡単なことだ。幹部と手合わせして、その力を確かめた。」
わーオレ嫌な予感がするなー。
「だから、カオルにも今から同じことをしてもらうぞ。」
決定事項なんですね。オレこの世界きて1日目なんだけどなー。続々とイベントが発生してるんだけど。
「では参ろうか。」
アルザークさんや、この床の魔法陣は何かな?教えてよ。教えてくれない?じゃあ自分で確かめまーす。えーと、て・ん・い。転移ねーオレをどこに連れて行くのかな?
本日三度目の転移独特の浮遊感を味わう。うん、だいぶ慣れたよこれにも。
「よし着いたな。しばし待て。」
アルザークさーん、次は何してるのかな?そろそろちゃんと説明を…ああ、ほかの幹部の人たちを呼んでるんですね。
少しして、離れたところに男女五人が転移してきた。アルザークもそちらに歩いて行く。
「待たせたな。カオル、こいつらが今の幹部だ。お前たち、こちらカオル。自分は魔王だと言っている。やることはわかるな?」
雑な紹介に物騒な声かけだな。あなた、実はオレに恨みでもあるんじゃないか?
「えー魔王様には見えないけどなー。」
「そう言ってやるな。アレでももしかしたら本当に魔王様かもしれないだろ?」
なんか初対面で馬鹿にされてんだけど。あのいけすかないやつぶん殴ってもいい?
「無駄口たたいてないで誰からやるかさっさと決めろ。」
「じゃあじゃあーあたしからでもいい?」
「皆がそれでいいならな。」
「やったーいっちばーん!」
そう言って出てきたのは金髪をツインテールにした、中学生くらいの美少女だった。
「えっと君がオレの最初の相手?」
「そうだよー。あたしはリーナって言うの。」
「オレはカオルだ。よろしく。」
ふわふわした雰囲気の可愛い子だ。正直やりづらい。
ここはレディーファーストだ。
「そっちのタイミングで始めていいよ。」
「いいの?じゃあ…」
その時、リーナの雰囲気が一気に変わった。」
「行くよ…」
「おっと」
さっきまでちょっと遠くにいたのに、瞬間でオレの真隣にきて、その小さな拳を振り抜いていた。
まあ、力を押さえてない今のオレにはしっかりとリーナ動きが見えていたが。
既に展開していた魔力障壁でしっかりとガードする。
「へー、おにーさん今あたしの動きが見えたんだ。」
「それで終わりじゃないだろ?」
「むー!」
やっぱり、戦闘が始まると自分でも何かよくわからない高揚感がある。まるでオレじゃないみたいだ。
「だったらこれはどお?」
リーナは瞬時にオレから距離を取ると、両手に火の玉を作り出し、それをオレに投げてきた。
「そんなの効かないことは最初のでわかってるだろ。」
「だから、油断するでしょ?」
リーナの声が背後からした。目の前の魔法は陽動だな。でもこれも想定内だ。
「残念、惜しかったな。」
「えーこれもダメなのー。」
勢いよく繰り出されたリーナの蹴りは、オレが体に纏った魔力障壁に受け止められている。魔力を操作するたびに自分の思うがままに動かせるようになって、こんな芸当もできるようになっている。
そのあとも、色々とやってきたが、全て防御し続けた。
「君の力じゃオレにダメージは与えられないよ。」
「ムカつくー。こうなったら奥の手だよ。」
そう言うと、リーナはもう一度オレから距離を取るった。いいね、奥の手なんて持ってるなんて羨ましい。オレも何か奥の手にしようかな。
「これで絶対におにーさんを倒すからねー。」
リーナの周りに黒いコウモリのような形をした魔力がが集まり始め、リーナを包む。まるで黒い卵のようだ。
その黒い卵にヒビが入り、中から何かがオレに向かって飛び出してきた。まあ、中にはリーナだけだし飛び出してきたのもリーナだろう。
「今のは危なかったな。」
「えぇーこれでもダメなの?」
突っ込んできたリーナはさっきまでの中学生ぐらいの姿ではなく、大人になっていた。控えめに言ってもフランと同じくらい美人だ。
手に真っ赤な剣を持って、それを突き出す形でオレに向かってきたが三重に張った魔力障壁の二枚を貫いたところで、最後の障壁に止められている。
「もう降参でいいか?女の子を殴ったりする趣味はオレにはないからな。」
「むー悔しいけど、分かったよ。降参する。」
ふー良かった。これで、「まだだー」なんて言われて向かってこられても困るからな。
今回はリーナの攻撃を受け続けただけだったが、かなり魔力の操作も精密にできるようなって実りのある戦いだった。
リーナは奥の手の大人バージョンから元の子供の姿にまで戻った。もうちょっと大人バージョンでいても良かったのに。子供バージョンのリーナも可愛いからいいか。
リーナが元に戻ったのが合図となり、アルザークがこちらに来る。
「勝者はどっちだ?」
「えへへ、あたし負けちゃったよー。」
「そうか、では今の試合はカオルの勝利だ。次の試合に行くぞ。」
「休憩とかは…」
オレの質問にアルザークは答えてくれない。やっぱりオレ嫌われてる?
「悪く思わないであげてね。アルザークは誰よりも魔王様という存在を大切にしてるから、本物かわかるまでは心を開かないと思うから。」
そう言うことか。オレが偽物かもしれないからあの態度になるのか。
「じゃあ、オレが本物だってわからせてやるよ。」
「おー、その顔は魔王様っぽいよ。」
一人目、いやザキも倒したから二人目か。あと四人、全員倒してオレが魔王だってあの鉄仮面に教えてやろうじゃないか。
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