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未だ見えぬセラエルの想望  作者: きらの
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プロローグ 「エリル・セラエル」


__この世界のさらに下の次元にはヘル・ディメンションという低次元エリアが存在する。

地上での生活において神の意に反した者たちは死後、この世界へと送り込まれることになっている。

その世界において、今まさに最悪なシナリオが企てられていた…

ヘル世界のすべてを統率する彼の名をジェラ・ルシフェルと呼ぶ。

その統率者を見た者は、彼のまとう漆黒の闇に汚染され二度と正気には戻ることはない。

この最果ての地にて彼が望むことはただ一つ、高次元世界への復讐である。


「さあ、今こそ復讐の時。天から追放された屈辱を果たす時が来たようだ。今の地上世界の波長は非常にこのヘル次元の波長と近い。これを好機として地上世界へと領土を拡大し、より高次元の世界を制圧するための兵力を集める」


地面を揺るがすかの如く鳴り響く、ずぶとくて低い声明は民の忠誠心を駆り立たせるほどの力がある。現にひれ伏している者もいれば、彼に祈りをささげている者までいる。

その中の一人、この世界における最強ともいうべき存在、アリィ。

その容姿はどこか幼げにも感じるが、何とも言えないオーラを放っており近づくことすら恐怖に感じるほどのものである。

彼に近づくアリィの表情は決意に満ち溢れていた。そして彼の前で膝まづく。


「了解しました。わが主よ。この世界のNo.2の力、存分に発揮して見せましょう」

「あの時の想いを忘れていないだろうな?」

「ええ、もちろんです。この身はあなたのためにあり、この力もあなたのためにあります。今こそ果たしましょう…」


そう告げるとアリィは開かれた暗黒の空間へと消えていった。







__次の瞬間、僕は倒れこんだ。

とてつもない重圧と体に迫る謎の圧迫感に意識が薄れていく。

倒れている彼を取り巻く暗雲。

その隙間から見える周りの人々も、どうやら自分と同じようによくない”何か”に支配されているみたいだ。

こんな瞬間がくるとは思わなった。僕たち人類は道を誤ったのだろうか。道を踏み外さなかったらきっと違った未来があったはずだ。そんなことを考えながら目を閉じようとしたその時、視界が真っ白になる。まるで無限に続く真っ白な空間に一人だけいるような…


「大丈夫ですか。…しっかりしてください」


どこからか声が聞こえた。女性の声のようだ。透き通った明るい声は心の奥底まで一直線に伝わっってくる。


「…あなたの力を貸していただきたいのです。厳密にはあなたの魂の輝きをです」


目の前は真っ白だ。

誰かがいるような気配はない。

だがその声だけはとても温かく、どこか懐かしさも感じられた。想いがあふれてくる。こみあげてきた感情が一気に放出されると、彼の目からはとめどない涙があふれていた。

__あれ…なんで泣いてるんだろう。

今までこんなぬくもりを感じたことはなかった。


「あの…僕はどうなってしまったんでしょうか…」

「あなたは今、世界の命運のはざまに位置しています。あなたはあの約束を覚えていますか?」

「約束…ごめんなさい、あまりよく思い出せないみたいです」

「そうですか…ですが大丈夫です。今度は道を誤らないでくださいね」

「今度はって…僕は何か良くないことをしてしまったんでしょうか?」

「それはお答えできません。ですがもしあなたが力を貸していただけるのであればその答えはおのずと見えてくるでしょう」


今は考えても無駄ということらしい。僕は確かに何か大きな責務を果たそうとしていた。そんな記憶があるのだが思い出そうとすればするほどに遠のいていってしまう。

現状から察するに選択肢は2つしかない。この声に従い力を貸すか、それとも断ってこの命を危険にさらすか。どちらにしろ命が危険にさらされる可能性だってある。

だが何もできずに朽ち果てていくことだけはごめんだ。できることがあるならばせめてそれを成し遂げてから終わりを迎えたい。答えは出た__


「失礼かもしれませんが僕はあなたのことを知りません。ですが力を貸すことで何かを取り戻せるのであれば…この身すべてをかける覚悟があります」


ほんの少し間があいた後、その声からの返答が来た。


「…すべての縁に感謝を。そして決意してくれたあなたに無限の光を授けます。使命を果たす最後の瞬間まで、自分を見失わずにいてください。これから私はあなたと共に救済を始めます。どうか強い意志で生き抜いてください」


なんだかとてつもなく大きな物を背負った気分だ。これからのことを考えるだけでも不安になる。

だけど僕も男だ。やると決めた以上筋は通さなければならない。


「エリル・セラエル。それが私の名前です。ではまた地上でお会いしましょう」


そして、この無限に続く真っ白な空間での僕の意識は完全に途切れた。


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