1-2 集会
「森光葉月、スズメ、到着でーす!」
「白石小夜、フクロウ……きました」
「大原結衣、タカ、着いたぜ」
降り立った三人の少女は莉多に体を向ける。
葉月と名乗った茶髪ツインテールの少女は、白いワンピースの上に茶色のマントを纏っている。五人の中では最も幼い顔つきをしていて、背も低い。
小夜という白髪ロングの少女は、水色のパジャマに白色のマントを羽織っている。眠そうな表情と、服の上からわかる豊満な胸と腰が特徴的だ。
結衣は金髪ポニーテールの少女で、その服装は黒いパーカーとグレーのジャージに赤いマント。身長は五人の中で最も高い。
葉月の肩には茶色のスズメ、小夜の肩には白いフクロウ、結衣の肩には赤毛の鷹がそれぞれ乗っている。
莉多はこの三人を見渡し、小さく頷いた。
「全員そろったわね。では、さっそく始めましょうか」
彼女の言葉を聞き、カラスとメジロは鳥の姿になって遣いの肩に足を着けた。
莉多は一呼吸置いてから口を開いた。
「まずは昨夜の報告から。私の担当する中央区は、不幸因子が均一に出ていたわね。それ以外には特にないわ」
莉多が話し終えると、次は小夜が小さく手を挙げた。
「ワタシの南区は……不幸因子が数か所に集まっていた……黒塊ができるほどの量じゃなかったけど」
小夜の次は結衣が腕組みをして報告を始めた。
「アタシ担当の東区は、全体的に不幸因子が濃かったな。事故は起きなかったが」
結衣の報告が終わり、葉月が大きく手を挙げた。
「葉月担当の北区は不幸因子が薄かったでーす!」
四人の報告が終わり、最後に奈津の番が回ってきた。
奈津は昨夜の出来事を整理し、言葉にした。
「わたし担当の西区では、触手型の黒塊が一体出現しましたが、撃破および吸収しました。あと、不幸因子が泥酔した男性に入りましたが、無事に救助しました。以上です」
その報告を聞き、莉多は眉をひそめる。
だが、すぐに余裕のある表情に戻った。
「みんなありがとう……西区は要注意ね。一人で対処できないレベルの黒塊が出た際は、私たち全員に知らせるように。黒塊が建造物を壊し始める前に、協力して撃破しましょう」
莉多の言葉に、四人は小さく返事をして頷いた。
少しの間を置いて、莉多は次の議題に移った。
「他に、何か知らせておきたいことはあるかしら?」
莉多が問いかけると、葉月が元気よく手を高く伸ばした。
「はいはーい! 今朝、北区のほうで人身事故がありました」
「いつものことね……葉月は一応、不幸因子の関与がないかどうか調べておいて」
「了解です!」
葉月は敬礼のポーズでにこやかに笑った。
その横で、小夜が思い出したように手を小さく上げた。
「南エリアで……大企業の重役が合同会議するみたい……だからといって何かあるわけじゃないけど……交通が普段と少し変わる程度かな」
「わかったわ。些細な事でも情報提供は重要よ。ありがとう……他には、ない?」
莉多は死神の遣いたちを見渡す。
奈津、結衣、小夜、葉月は互いに目を合わせるだけで何も言わなかった。
「ないみたいね……一応、みんな知っていると思うけど、今日は月曜だから、夜は不幸因子がいつもより多くなると予想されるわ。特に企業の密集地はね。だから、充分に気をつけて」
「そっか。今日月曜か。どうりで朝の空気が重いわけだ」
莉多の言う事に、結衣は斜め上の反応をした。
奈津はあきれたように頭を落とした。
「結衣さん……曜日くらい覚えておいてくださいよ……」
「まあ、そんなかたいこと言うなって。黒塊が出たら、アタシがぶっ飛ばしてやるからよ」
結衣は力拳を何回か叩いて奈津に見せつける。
その光景を見て、莉多は笑みをこぼした。
「ふふ、頼もしいわね……では、これで終わりにしましょう。解散」