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思いつきの短編

1週間カプセル

作者: 空音

1日の綴り


朝起きて顔を洗い、歯を磨く。

朝食を食べて、洗濯物を干した後にゴミを出して家を出る。

車を運転して会社へ着いたら仕事を始める。

昼休みは食堂でご飯を食べて、その後に歯磨きとトイレに行ったら

また仕事を始める。

夕方になったら仕事を切り上げて帰宅。

家に帰って洗濯物を取り込み、掃除機をかける。

そして夕食の準備をして、食後にお酒を少々たしなむ。

本を読むか、テレビでも見ていたら夜になるので

床について一日が終わる。


これが1日の綴り。

でも1週間になると休日も入ってくる。

1日1日が続いていって休日が来る。

でもさ、考えてみると休日ってなんだと思う。

農家の人、畜産をしてる人、休日という休日ってないだろうなと思う。

たくさんの人が集まって、代わる代わる仕事をしている。

だから休日ができるのかな。


休日は何してる?

釣りしてる?

映画見てる?

運動してる?

テーマパークに行く?

勉強してる?

家事してる?

デートしてる?

友人と会っている?

ドライブしてる?

買い物してる?

病気になって寝ている?

いろいろあるけど、私の1週間の綴りは上記のどれかをしていると思う。


そして1週間の綴りは1か月の綴りに、1か月は1年の綴りへ延びていく。


人の一生は儚い。

そうは言うけれども、1日、1週間、1か月、1年、時は経ち、一瞬を重ねていくと長く感じるときもある。

思い出せることは少ないが、やってきた事を数えると意外にたくさんある。

そして、おじいさん、おばあさんになった。


A氏の研究でそんな人の人生を1週間で体験できる薬が開発された。

脳を刺激してこれから起こる時の流れを認知させてくれるらしい。


「いいかい?このカプセルを飲んだら人生が1週間で体験できる。」

「すごいな、さっそく使わせてくれよ」

「いやいや、まだ理論とマウス実験だけで人ではこれからなんだ」

「ちょうどいいじゃないか、俺が実験台になろう。マウスは大丈夫なんだろう?」

「まぁ、そうだが、本当にいいのか?」


言っても聞かないので、「分かった。どうなっても知らんからな」と言って薬を飲ませた。


「ん?何も起こらないじゃないか」

「まぁ、これからだ1週間生活したら結果を教えてくれないかな?」

「ふむ、それでは1週間後に」


 家に帰ってしばらくしても何も起きない。

「なんだ、人では初めてと言ってたからな。失敗だったのかもな」

 そう思い、気に留めていなかったが、4日目の朝になると若干体が重いことに気が付いた。

「なんだろうか、疲れてるのかな?」

 栄養ドリンクを飲んで普通に出掛ける。5日目になるともっと体が重くなっていた。

 肌の張りがなくなり、髪が大分抜けた気がする。もしかして薬の副作用か?なんかちょっと風邪でもひいたかな?今日は会社を休もう。

 6日目になると膝などの関節も大分痛くなってきた。

「これじゃあ、ただの老化じゃないか」

A氏にあってなんとかしてもらわないと、重い体を起こしてA氏の元へ向かった。


「やぁ、薬の効果はどうだった?」

「薬の効果も何も、ただ老化するだけじゃないか」

「ふむ、おかしいな。」

 少し話をしている間に、深い眠りについてしまった。


 目が覚めると、体が軽くなっている。

 肌のつやも戻っている。やたら心地の良い眠りだった気がする。

「A氏、私に何かした?」

「いや、何もしてないよ。恐らく薬の効果が切れたのだろう」

「それにしても、あの薬は失敗じゃないのか?」

 A氏は首をかしげていたが、少ししてなるほどという顔に変わった。


「おそらく、君は毎日規則正しい生活を送っていたから何も起きなかったのだろう」

「それはどういう事でしょうか?」

「死ぬまで毎日同じ生活をしてるって事だろう」

短くおさめるって難しい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 星新一みたいな落ちですね。 たぶん、わたしがこの薬を飲んでも同じ結果・・・。
[一言] 物語拝読いたしました。 人生は長いようでいて、短い。そんな人生を一週間で体験できるとはとても恐ろしいように感じました。 短い文章でしたが、きちんとまとまっていて、読みやすかったです。
2017/04/26 09:25 退会済み
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