嵐、襲来!?
以前書いた短編の続編?になります。この話だけでも読めるとは思いますが、前作をお読み頂くと解りやすいかと思います。
※キャラの性格が変わっていたらすみません…。
嵐は、ある日突然。僕と可愛い嫁が住む小さな家にやって来た――……
今日は夏に収穫した茄子やトマトの支柱を撤去する作業を畑で、マリエラこと、マリーと僕の二人でしていた。
太陽が大分高い位置に登り始めた頃。
「マリー、そろそろ休憩にしようか」
額の汗を拭いつつ、マリーに声をかけた。
「ええ、そうしましょう。そろそろ喉が渇いてきたし…朝、用意しておいた、お茶とお菓子を今持って来るわね」
「うん。ありがとう、マリー」
マリーも作業を中断し、首から下げている可愛らしい赤い花柄の模様の入ったタオルで汗を拭いながら、家へと向かって行く。
そんなマリーの小さな背中を見ながらー…
「もう、すっかり馴染んでいるなぁ」
数ヶ月前にあった出来事が、まるで数年前に起きた事のように感じる。
このまま、マリーと一緒に。そして、いつか増えるだろう家族と共に穏やかに暮らして行けたら良いな…なんて、そんな風に思って居た時だ。
…――嵐は、やって来た。
「ヤッホー! マルー!! ひっさしぶりー!!」
僕の事をマルと呼ぶ人物は今も昔も、一人だけ。
ついでに言うなら、マルと呼ぶなと何度も言ってきたが、全く聞かなかったので諦めた訳だけど――…
「ユリ? 何をしに来たんだろう??」
ユリ…ユリエラ・バーンズ。彼女はバーンズ子爵家の令嬢であり僕の幼馴染でもある。真紅の長い髪を高く結い上げ、キラキラと輝く翠の瞳を見て変わらないなぁと思う。(…まあ、学園時代も割とよく一緒に居たし、いきなり変わっていられたら、それこそ驚くけど)そんな彼女は茶色いトランクを手に、こちらに向かい走ってきている。
そして、今にも僕に抱き着いて…いや、飛び掛かって来そうだったので――…
(…こっち、かな)
…――ササッと。僕は彼女の進行方向から左に移動した。
「ふぎゃっ!? な、なんで避けるのよー?」
ユリはと言えば。僕の後ろにあった大きな木に抱きついていた。
「え? 当たり前だろう。だって、可愛いマリーに誤解されたくないし」
と言うか。やっぱり抱きつく気だった?
「何よー、マル。この間までは、婚約ー?ああ、あれなら解消されるよ…って言っていたじゃない!」
…ドサッ。
「それは、この間までの話だよ。僕と彼女の籍はもう入れてあるし、来月にお披露目って事で式だって挙げるし。君の家にも招待状を送った筈だよ? …あー、ほら。だから、泣かないで? ね?」
「えっ? そうなの!? 私は聞いてないわよ!? …って、は? 別に泣いてないけど?」
「うん。ユリには言ってないから」
泣かないで、と僕が声を掛けたのはユリの後ろに立っていた人物。僕の可愛いお嫁さん。
「マ、マルローは、やっぱり私の事…っ!」
マリーが今にも泣き出しそうな顔でそこに立っていたのだ。
ちなみに。さっき、ドサッと聞こえた音はマリーが持って来てくれたバスケットを、彼女が落としてしまった音だ。
「ええっ!? マリエラ・エンデルさまっ!?」
「それはもう旧姓で、今はマリエラ・グラス、だよ。ああ、ほら泣かないで? マリー、昔の話だよ? 今の僕は君の事が大好きなんだ、知っているだろう?」
マリーをそっと抱き、背中をポンポンと軽く叩いて。彼女の頬に軽いキスを落とした。
「うわー…何かマル、性格変わった?」
そんなユリの言葉は、聞こえないフリをしておいた。
「それで、いきなりどうしたの?」
半泣き状態だったマリーを宥めてから、三人で家の中に入り、キッチンで(応接間なんてものはこの家には無いからね)僕とマリーが隣、向かいにユリが座る形でテーブルを挟んで椅子に腰を下ろして話を聞く事になった。
「………わ」
俯き表情の見えないユリが何かを呟いた…が。
「え? 何?」
聞こえなかったので問いかけると、ガバッと勢いよく顔を上げて(その際、隣に座っているマリーが驚いてしまい、小さく『ヒッ』と声を上げていた。可愛いよね)――…
「逃げてきたわ!」
えー…逃げてきたのかー。そっか、そっかー。
「それで? 何から?」
何だか面倒事になりそうだから、あまり聞きたくはないんだけど、聞かなければ聞かないで面倒な事になりそうなので、尋ねてみれば…
「お見合いよ!」
何でそんなに自信満々なの? と、問いたくなる様子のユリを前に僕は『やっぱり面倒事かー…』とテーブルに突っ伏したのだった。
三〜五話位の予定です。ここまでお読み下さりありがとうございます。




