野獣勇者 ~勇者には絶対に言えない。ボクのアレが消滅したなんて~
勇者。人の家のタンスやら壺を勝手に漁り、西に姫がいると聞いては種付けに行き、東に魔王が現れたと聞けば魔王の娘に種付けに行く人間型理不尽生物だ。
行動原理はカオス。とりあえず時間が空けばハーレムを作るのは確認されている。オークよりも性的にだらしがない。
性格はひたすらエロス。基本的にセックスと戦闘のことしか考えていない。マフィアの女に手を出して追われるのは日常茶飯事だ。おそらく子どもも100人はいるんじゃないだろうか?
金にもルーズで借りたものは返さない。金があればすべてギャンブルに使う。ボクが勇者にいくら貸したかなんて考えたくもない。
そのくせ料理も洗濯もできない。戦闘しかできないこの生き物を殺したいと何度思ったことか!
そんなボクは不本意ながら勇者パーティで賢者をやっている。魔法も法力も使えるし剣も使えるという勇者を除いては最強職種なのだ。
ボクは魔導学院で研究をしていたところを勇者に拉致された。もう一度言う。拉致された。
使える人材ゲットだそうだ。死ねばいいのに。
ボク以外のパーティのメンバーは全員女性だ。
戦士も神官も魔法使いも商人も全員顔で選んだ女性だ。しかも勇者の女だ。
もう一度言う。全員勇者の女だ。
ちなみにメンバーは能力より顔と胸で選んでいる。
勇者のチ○コ腐ってもげないかな。かなり本気で。
と、いつも心の中で毒を吐いていたのが悪かった。
それは二日前だろうか。
ボクは直接見てないからあくまで聞いた話だ。
勇者がいつものように女に手を出したわけだ。いつものように。
死ねばいいのに。
でも勇者ときたら「俺は水面に漂うフリゲート艦。一つの港に居続けることはできないんだ」だってさ。
さっさと沈んでお魚の住処になればいいのに。
それを抱いたばかりの女に言うのだから気が狂っているとしか思えない。
それで女は激高。たまたま呪術師だった女はもげる呪いを勇者にかけたんだ。
頑張れ呪い! 勇者をぶっ殺せ!
「えんぴーばーりー」
だけど呪いは勇者バリアーに阻まれる。
勇者が使えるバッドステータス無効バリアだ。
これさえなければボクが先に勇者を殺していたに違いない。
でも世の中は理不尽なものだ。
世界はこんなクズに天恵を与えてしまったのだ。
こんな世の中滅びればいいのに。
さて弾かれた呪いは呪った本人に跳ね返る。
ところが呪術師は女性。チ○コはない。
そこで行き場を失った呪いは隣の部屋で寝ていたボクを襲ったのだ。
ボクはこれでも賢者。
勇者ほどではないとしても呪術耐性がある。
だから呪われた瞬間は気がつかなかったんだ……
まさかこんなことになるなんて……
そして今日の朝。
「ない!!!」
ボクは焦った。
朝起きたら16年も連れ添った相棒がないのだ。
消えていたのだ!
かわりに女性のものがついていたのだ!
ボク女の子になってる!!!
どうしてこうなった!!!
ボクは焦った。今までの人生の中で一番焦った。
勇者と一緒にマフィアに追いかけられたときよりも3倍焦った。
あまりに焦ったボクはチ○コを探してゴミ箱を漁る。
泣きながらずっと相棒を探し続けるボク。
そんなボクの部屋の扉がノックされた。
「おう、賢者。娼館行きたいから金貸して……どあああああああ!」
勇者だ。
オワタ。
完全にオワタ。
一番知られたくないヤツに知られてしまったのだ……
と、一瞬人生をあきらめたボクだけど、よく考えたらボクは服を着ていた。
「どあああああああ!」なんて言われる筋合いはない。
「変な声を出してどうしたんだよ?」
ボクは若干棒読みで言った。
知られたくない。
このドアホに知られたらなにをされるかわからない。
最悪の場合だと珍しい男の娘(もしくは娘男子?)ですよと奴隷商人に売り飛ばされるかもしれない。
それだけは避けないといけない。
焦るボク。
だけど勇者の態度はボクの予想とは違った。
「い、いや、丸っこくなったなと……」
太ったとでも言いたいのだろうか? 失礼な。
ボクはとりあえず確かめようと魔法で鏡を作り出す。
鏡に映ったボクは以前とあまり変わらない。
胸は小さいし、身長も変わらない。
少しだけ身体のラインが華奢になった気がするがほとんど誤差だ。
よかった。変わらないじゃないか。
「なにを言ってるんだ君は。変な薬でもやったのかな?」
よしこの線だ。
勇者はこのあいだ不思議な薬を興味本位で使ったあげくに全裸で町中を走り回って夜警に捕まったばかりだ。
この線で誤魔化そう。
「あ、いや……気のせいだ……あははははははは!」
「ウン。キノセイダヨ」
よしごまかした!
ミッション成功。
と思ったのも束の間だった。
さわさわさわさわ。
なぜか勇者はボクの尻を撫でてくる。
ボクの腕にサブイボが立つ。
セクハラ……だと……
ボクは慌てて勇者の腕をつかむ。
「なにをするのかな? キミはいつから衆道に目覚めたのかな?」
「いや……つい」
勇者も「なんで野郎のケツ撫でてるの俺?」と不思議そうな顔をした。
やばい!
理屈ではボクが女の子になったことは理解してないけど、本能ではボクが女だとかぎ分けている。
貴様はオークか!
「なぜだ……この手が止まらない……」
ボクがつかんでる勇者の手がワキワキしている。
「とりあえず殴るから」
「ち、違う! これは決してエロスじゃないんだ! もう男でもいいかなとかそんなんじゃないんだ」
貞操の危機。
まずい。とりあえず暴力に訴えよう。
「うるさい! 飛んでけー!!!」
「えぶろば!」
ボクの魔法で強化したパンチで勇者は星になった。
この感じだと30分くらいで戻ってきそうだ。
それまでにチ○コを探さなければ……じゃなくて男に戻らなければ。
でもどうする?
ボクは考えた。
賢者であるボクでもこういう地方のマイナーな呪術の解除方法はわからない。
……いや待てよ。
神官なら。神官なら解除できるんじゃないか?
ボクは隣の部屋の神官の所へ行くことにした。
◇
ボクは左右を確認し、さらにドアの中で情事が行われていないのを確認する。
さらに念を入れてドアをノックする。
「はいはーい。いるよー♪」
と、明るい神官さんの声が聞こえた。
なぜボクがここまで慎重になるのかって?
パーティメンバーと勇者との情事に遭遇したくないからだ。
もの凄く気まずいのだ。
ああ、学院に戻って研究に明け暮れたい。
「ボク……チ○コ取り戻したら学院に帰るんだ」
ボクはそう呟くとドアを開けた。
「やあ、神官ちゃん……あのね……」
ボクはモジモジしながら「チ○コなくしたの助けて!」って言おうと勇気をかき集めていた。
ところが……
「きゃああああああああああああああ!!! かわいいいいいいいいい!!!」
いきなり抱きつかれた。
「なにこれかわいー!!! 腰細いー! お肌すべすべー!!! ねえねえ。お姉ちゃんとお着替えしようね! はぁはぁはぁ、はーいぬぎぬぎちましょうねー♪」
ド変態は勇者だけではなかった。
ボクの貞操が危険なデンジャーだ。
なぜなら神官はボクのシャツに手を入れて生乳をもみはじめたからだ。
「あ、あの! ボク賢者なんですけど! つか胸をもむな! 揉むなあああああッ!」
「ほへ? 賢者くん? どうして女の子に……もしかして男の娘だったの!?」
「誰かもわからないのにもんで……いた……だと……」
なんだこのビースト。
うちのパーティにはビーストしかいないのだろうか?
「そうかあ。賢者君はお姉さんとおねショタしたくてとうとう女の子になってしまったのかー」
全く話にならない。
脳みそが腐っている。
「そうじゃなくて呪いの解除をして欲しいんですって」
「……呪い? なに言ってるの……賢者君は最初から女の子だよ……」
そう言いながら前に出した手の指をワキワキと動かす神官。
犯される! ボクは思った。
「あ、ボクこれから用事あるんだった。じゃあまたね」
「逃がさないよー♪」
がっしり。
ボクは神官に襟をつかまれる。
「うおおおおおお! はーなーせー!」
「さあ、一緒に行こう! ソドムとゴモラの街へ!!!」
「ヤーメーロー! 胸を揉むなー! ぱんつに手を入れるなー!!!」
もう全てがカオスだった。
助けを求めに行ったら襲われた。
なぜこのパーティはビーストしかいないのだろうか?
ああ、このままボクはビーストに食べられてしまうのだ。性的な意味で。
ボクの首筋を神官がぺろぺろしてくる。
うおおおおお! 離せええええええ!
「おっとそこまでだ!!!」
野太い声が聞こえた。
勇者だ。
帰って来たのだ。
もうなんでもいい。
勇者でもいいから助けてもらおう。
「ゆ、勇者……助けて……」
と勇者の方を見たボクの目に飛び込んできたのは、ゴツイ体をメイド服に身を包んだ勇者だった。
「……はい?」
「賢者……」
「は、はあ?」
神官も勇者の姿に固まっている。
「一目見たときから好きでしたー!!!」
「はいいいいいいいいいいいい!?」
バカじゃねえのコイツ。
何口走ってやがるの?
「そう俺は一年前のあの時から思っていたんだ……」
語りはじめた!!!
「ああ……コイツかわいいなって……」
ド変態だ……
「いつも思っていたんだ……お前が女だったらなって!!!」
「10メートル以内に近づかないでください」
「女では味わえないその冷たさがイイ!!!」
「勇者が壊れた……」
「そして今日……俺は覚った……俺がメイドにクラスチェンジすればいいんじゃね? ってな! 早速俺は転職してきたぜ!!!」
変なスイッチ入ったー!!!
「そうね……勇者……私も思ってたの……」
神官!!! お前も何語ってるの? ねえ意味わからないから!
「賢者が女の子だったらなってね!!!」
神官も壊れたああああああああ!!!
ボクは舌でペロペロシようとしてくる神官を突き飛ばした。
「お前らそこから先に来るな! 来たら自爆するからな!!!」
ボクは涙目で自爆魔法の詠唱をはじめた。
寄るな触るな! このド変態ども!!!
だけどボクのささやかな抵抗は無駄に終わるのだ。
「賢者ちゃーん♪ お姉さんといいこと……しよ?」
戦士がボクを羽交い締めにする。
「みゃああああああああああああああ!!!」
右足をつかまれる。
「賢者ちゃん独り占め……ずるい」
「魔法使いいいいいいいいいいッ!!!」
左足もがしり。
「はあはあ。お姉さんと快楽のタックスヘイブンへ旅立とう!」
「商人んんんんんんんんんんんッ!!!」
ボクは全方向をド変態に囲まれた。
どうしよう?
こいつら道連れにして自爆するか。
それとも美味しく食べられるか……
ボクは悩むのだった。
さーせん!!!
書いてみたかったっス!
欲望を抑えられませんでした!