煩悩の神
「おいっ、喪女太郎。こんな所で道草をしてる場合じゃないでしょう?」
天から声が聞こえてきました。
雲の隙間から、明るい光が差し込みます。
「だっ・・誰ですか?」
と、僕は恐る恐る声をかけました。
「私は、喪女の煩悩の神レイナです。
漢字で書くと「霊無」と書きます。
よく男性に、漢字で書くと気持ち悪いって言われるからカタカナ表記にしてます。
私は、貴方の母の煩悩の世界を作りあげています。
彼女は、日々出会った人、テレビ、新聞、インターネットなど。
ありとあらゆる媒体を通じて、様々な情報を仕入れては妄想を繰り返しています。
私は、その妄想を元に世界を作っている神なのです。
彼女が死んでしまえば、この世界は無くなります。
また、彼女にとって強烈な想いが現れると偶像が産まれ「俺が島」に生物が誕生します。
大体、彼女の好きなイケメンタレントそっくりの人が殆どですが・・。
中には、片思いをしている男性や道端でカッコいいと思った人も登場します。
その人達を、彼女の元に引き寄せる為には。
喪女の強い意志と行動力が必要になります。
喪女に、強い意志が生まれれば生まれるほど貴方のパワーや行動力は強くなります。
その分、活発に俺が島で活動する事ができます。そして、彼女の旦那探しにも一役買う事が出来るのです。
しかし。
喪女自体が、ぐうたらしてる間は。
貴方自身も、ぐうたらしてしまうのです。
いわば、貴方は喪女の仮身のようなものなのです。
ただし、貴方達は合わせ鏡のような所もありまして。
貴方が、活発に動こうとすれば喪女も動くようになっています。
つまり、この旅を終わらせる為に大切な事は・・
貴方自身が、動こうとする気持ちなのです。
貴方が動かなければ、何も掴めません!
喪女も、ただでさえグウタラ人間なのですから!
さあ。喪女太郎。
動くのです・・。」
煩悩の神レイナは、そう言ってすうっと雲の隙間から消えていった。
えー。動けって言われてもぉー。
何すりゃいいのさー。
とりあえず。俺。
ニートなんだよなぁ。
金ないし。
そんな訳で、喪女太郎は再び「吉備団子仁」に行ってバイトする事に決めたのであった。