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【シリーズ】 13代目の破壊神

ムースクルス

作者: 千路文也

 俺はこれまで幾度となく武器を持たず闘ってきた。己の肉体を使って、様々な相対する敵と死闘を繰り広げた。長きにわたって拳のみで戦地を切り開いている俺は、いつしかこう呼ばれるようになった。ムースクルスと。


 名声と富を手に入れた俺に人々は喝采を浴びせる。時には皆がスタンディングオベーションで、神を招いているかのような称賛の拍手を送ってくる。だが、俺はその度に罪悪感を感じてしまう。


 それは俺の考え方が引き起こしているのは自分自身が良く分かっている。俺はこれまで何千もの怪物達と拳を交わして打ち倒す事で、英雄として認識されるようになった。そうは言っても、俺に怪物を倒したという記憶は無い。


 俺は猜疑心の塊だ。


 真の敵が、常に己の心に巣食っている。だから怪物と闘う前の葛藤したり苦悩したりとマイナスな事しか思い出せない。怪物と相対した瞬間をほとんど覚えていない。


 俺が思うに、俺を成長させてきたのは疑問だ。心に湧いてくる疑問を感じて、それを答えるために行動する。この疑問と回答の架け橋となっている行動こそが敵だと常々感じてしまう。


 だから俺は、目の前に迫りくる獰猛な怪物を敵だと認識出来ない。真の敵が何なのかを知っているからだ。



 残念ながら俺の考え方は人々に理解されない。



 怪物を倒したという事実だけが俺を英雄として仕立て上げている。だが、そうじゃない事を理解してほしい。なぜなら俺は常に負けている。


 心に猜疑心が巣食っている時点で、俺に英雄の資格などない。この猜疑心を晴らすためにひたすら怪物を倒す俺は、本来ならば哀れな存在の筈だ。


 誰でもいい。誰でもいいから俺に脚光を浴びせないでくれ。


 己の猜疑心を払拭するために拳を振るう俺は、何よりも怪物に近い存在なのだから。



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