表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

嫌いな人の話


金茶の髪と、暗緑色の目。

その色彩の組み合わせに、思わず息を飲んだ。

彼は『違う』とわかっているのに、どうしてこうも心が騒ぐのか。

リヒャルト・アルヴァス。 現皇帝の弟。 ついでに言えば、シェスカの新しい上司。

『違う』ことはわかっていても、彼のことは好きになれなかった。

女みたいに綺麗な顔も、さして筋肉などなさそうなのに剣技が一流なところも。

そして、何より。

―――初めまして、『イリーナの魔女さん』?

『紅の剣』に来た、初日のこと。

あの綺麗なお顔に何を考えているのかわからない微笑を浮かべて、あの男は言ったのだ。

思い出すだけで腹が立つ。

さすがに異動初日から問題を起こすわけにもいかず、理性を総動員させて耐えたのだが。



『イリーナの魔女』

畏怖や侮蔑といった感情とともに吐き出されるその名が、シェスカは嫌いだった。

少なくとも、今の上司と同程度には。

かつてイリーナという名前の国があり、その滅亡に多少なりとも関わった。

ただそれだけだというのに。

どうして、よりにもよって、こんな――――――



「―――姉様? もしかして、お疲れですか?」

心配そうにうかがうイリアにはっとする。 最愛の妹との貴重な時間だというのに、なんであんな男のことを考えなければいけないのか。 冗談じゃない。 今度会ったら殴ってやろうか。

「もしかして……『隊長』さんのせいですか?」

黙ったままのシェスカに、イリアは更に言葉を重ねる。 『隊長』さんというのはリヒャルトのことだろうから間違ってはいない、が。

「あの人に聞いたの?」

それをこの子が知るはずがない。 あの人にでも聞かない限りは。

「っ、あ、ご、ごめんなさい……!」

「怒ってないよ……イリアには、ね」

まったく、あの人はいつもいつも余計なことをしてくれる。 リヒャルトのことを言わなかったのはこの子に心配をかけないためだというのに、あの人はそれをわかっているのだろうか。 ……おそらく、わかってやっているのだろう。 そういう人だ。

厄介で面倒で忌々しくて、けれどイリアの役には立つ。

そうでなければ、とうにこの家への出入りを禁じている。

(本っ当の面倒な人……!)

正直、リヒャルトと同等だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ