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プロローグ

彼らの存在した証が、ほんの一片残ることすら許せなかった。


***


ローゼリアには、皇国軍とは別に皇帝直属の特殊部隊がある。

通称『紅の剣』(くれないのつるぎ )

隊員の数はおよそ30と少ないが、その実力は折り紙つきで、皇国軍を遙かに凌ぐと言われている。

まさしく少数精鋭。

『紅の剣』に入隊することは己の実力が認められたということであり、大変名誉なことである―――などと言えば、聞こえはよいが。

その実、能力はあるが扱いづらい人間の収容所のようなものだ、とシェスカ・クォーツは考えている。

例えば、現『紅の剣』隊長のリヒャルト・アルヴァス。 前皇帝の息子であり、今の皇帝の弟でありながら、前『紅の剣』隊長を実力で倒した男。

例えば、副隊長のハーク・ガーウェン。 平民の出だが剣の腕は隊長のリヒャルトに次ぎ、四大魔法以外の魔法―――いわゆる特殊魔法―――も保持している。 ただし女と酒に滅法弱く、だらしない。


例えば。

(シェスカ・クォーツ―――私自身とか、ね)


イリーナの大火からおよそ一ヶ月。 シェスカは『紅の剣』へ異動になった。 そのことに対する不満は無い。 実力を認められたという点においてはそもそも不満を抱こうはずもなく―――厄介払い、という点においては。

(どうでもいい)

ただその一言に尽きる。

シェスカにとって、自分の居場所など問題にならないのだ。

そんなもので揺らぐような優しい夢を持っていなかったから。



***



煌々と燃える赤。

風にたなびく黒。

ただその2つだけが、そこにはあった。



***



「随分と楽しそうだなぁ、リヒャルト」


ニヤニヤと笑うハークに応えるように、リヒャルトも口角を上げる。 穏やかと呼ぶには不純物の多い笑みを浮かべ、手元に記された名前を指でなぞった。


「ようやく『魔女』を手に入れたのです……当然でしょう?」


シェスカ・クォーツ。 もしくは『イリーナの魔女』。

それが、リヒャルトの新しい駒の名前だった。

一月もかけて手に入れた、気高い黒のクイーン。

彼にしては随分時間がかかった方だが、そんなものは大したことではない。

ゲームは既に終盤にさしかかり、手駒も揃っている。



(私の―――勝ちだ)



脳裏に浮かんだあの日の惨状さえ、今の彼には勝利を裏付けるものでしかなかった。

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