砂の城
ある夏の日
近くに浜辺のある病院に、1人の女の子が入院してました。
ある日女の子の元に男の子が、お見舞いに来ました。
男の子は女の子が寝ているベッドの横に 立ち、そっと静かに椅子に座りました。
女の子は身体を起こそうとしましたが、身体が言うことを聞きません。
それを見て男の子は、そっと、いいよ…、と言い女の子の手を握りました。
女の子は、ごめんね…、と言いながら男の子を見ました。
男の子は泣いていました。
泣きながら男の子はこう言いました。
余命1ヶ月…
女の子は驚きもせず、只男の子を見続けました。
男の子は、まだ泣いていました。
女の子は言いました。
泣かないで…。私、自分の為に泣いてほしくないの。
女の子は微笑みながら男の子に言いました。
男の子はゆっくり口をひらきました。
だけど言葉が出てきません。
必死に口を動かしますが、言葉は一言も出てきません。
それを見ていた女の子は、大丈夫だよ…、と呟きました。
女の子は続けました。
私は悲しくないよ?だって、君に見守られてるんだよ?君が側に居てくれるだけで、私はまだ、笑ってられるよ?
だから、泣かないで…。
男の子は女の子の手を更に強く握りました。
何処へも行かせないように。
するといきなり女の子が、こんな事を言いました。
ねぇ、私が退院したら、あそこの浜辺でおっきな砂のお城作ろ?
男の子は女の子の顔を見ました。
その目は希望でいっぱいでした。
男の子は、うん絶対だ、と言い、病室を後にしました。
数日後、女の子の容態が悪化しました。
余命1ヶ月が残り 2日持つか分からない状態になりました。
男の子は、病室に行きました。
そこには、昨日見た、希望に満ち溢れていた女の子はおらず、ベッドに横たわり眠っている女の子がいました。
男の子は側に駆け寄り、女の子の名前を呼びます。
しかし、女の子は起きません。
男の子は女の子に何か語りかけ、病室を出ていきました。
男の子が向かったのは、あの病室から見えた浜辺でした。
男の子は必死に砂をかき集め、山をつくりました。
今度はもっと沢山の砂をかき集めました。
男の子は泣いていました。
それを今度は手で削っていきました。
その手はどんどん汚れていきます。
だけども、男の子は手を止めません。
男の子は泣いていました。
どんどん削っていきます。
時間を忘れて…。
男の子が砂でお城を作り終った時、女の子は息を引き取りました。
まるで、男の子がお城を作り終えるのを待っていたかのように…。
fin.