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第8話 説得

次の日の夜

美奈子はシフトが入っていたが、秀二は3日間もシフトに入っていない。

そのため秀二は、休憩室で、20時頃に15分だけ休憩をしに美奈子が来るから待っていた。

「秀二さん!今日は休みじゃなかったんですか?」

そういいながら、彼女は薬を飲みだした。

「実は困った事があって、それでブログで知り合った人にも励ましている美奈子さんに相談したいと思いまして……」

「そうなんだ。私でよければ聞きますよ」

「今日22時までですよね」

「ええ」

「誰もいないところで聞いてもらいたいので、この近くにある、池田公園に22時頃待っています。まあ、それまで漫画喫茶で時間潰しているので」

「分かったわ」


22時15分……

秀二はすでに21時55分頃から、公園で美奈子を待っていた。

それから22時30分過ぎに美奈子はやってきた。

「遅くなってごめんなさい」

「いやいや。相談に乗ってもらうんですから……僕の方こそ忙しい中スイマセン」

「それで困った事って何?」

秀二は空を見上げて、こう言った。

「実は2日前、僕の知人が病院送りにされたんです」

「えっ!病院送りって誰かにやられたんですか?」

今度は美奈子のほうを見てこう言った。

「はい。それで僕は困っているんです。知人をやった人が僕の知り合いらしいのです」

「……」

美奈子の表情が険しくなった。

「秀二さん、はっきり言ったらどうですか」

「そうですね」

と、頭をかきながら言った。

「新戦会の永倉さんを病院送りにしたのは美奈子さん、貴女ですよね」

美奈子は一瞬黙り込んだが、すぐに答えた。

「……そうよ。まさか秀二さんが新戦会の方だとは」

「空手自身は辞めたんですが、会にはまだ所属しているんです」

「それで、仇を討ちに来たわけですか?」

「いえ、永倉さんが勝てない人に僕が勝てるわけがない。それに永倉さんも館長や幹部の方も、そして僕も貴女を恨んでいるわけではありません」

「じゃあ、私にどうしろと?」

「昨日、貴女の師匠にもお会いしました」

「師匠がこの街にいるの!?」

美奈子は大声で秀二に聞いてきた。

「はい。今は館長の家にいます」

「そう……」

「美奈子さんの恋人が4年前に亡くなったことは、漫画喫茶であったときに教えてくれましたよね」

「ええ」

「(や、やばい……こんな時に腹が)」

秀二は痛みをこらえ、会話を続けた。

「で、置手紙を置いて師匠の元から去ったんですよね」

「ええ、明光天神流の継承者になるため、己を強くするために、この4年間で多くの強者と戦ってきたわ」

「なるほど」

秀二は腕を組んで聞いていた。

そして彼女にこう言った。

「でも僕は、貴女が戦う理由が他にあると思うんですが(クソ……痛みが強くなってきた)」

「理由なんて他にないわ」

「そうですか」

そう言って、秀二はパキシルを出した。

「美奈子さんの薬ですよね。永倉さんとの戦いのときに落とされたそうですよ」

「うっ……」

「他にも休憩中に薬を飲んでいましたよね。失礼だと思いながらも、貴女が出て行った後、薬の空をゴミ箱から取り出しました。4種類の薬をさっき飲みましたよね。デパス、メイラックス、安定剤ですよね。あとの2つは分かりませんが、おそらく安定剤でしょう」

「……そういえば、永倉さんは薬剤師でしたわね」

「そうですよ。でもこの薬の事を入院している永倉さんに聞きに行ったり、電話で聞いたりしたわけではありません。僕もこのパキシルとメイラックスを飲んだことがあるんです。デパスは今でも飲んでいます」

そういいながら、美奈子にパキシルを渡した。

「美奈子さんは肉体的には強いけど、精神的にはあまり強くない。失礼な言い方をしてすみません」

秀二はお腹を押さえ始めた。

「恋人を失い、その悲しみを癒すため、薬を飲んでいるが、それだけでは悲しみを忘れる事はできない。だから、強い人と戦うことで、少しでも悲しみを忘れようとしている」

美奈子は静かに秀二の話を聞いていた。

「さらに僕はこう思った。貴女は死を選ぼうとしている。最後くらい武道家として戦いの中で、死に場所を探している」

「そんなことないわ」

と、美奈子が言った時、ついに秀二の痛みが激痛になった。

「いて~」

「(何?急に痛がり始めた。演技?いや違う。本当に苦しんでいる)」

「ハアハア……」

「秀二さん、あなたどこかからだの具合が悪いのでは?」

「ええ、まあ……うっ……いて~」

「今救急車を呼ぶわ」

だが秀二はこう言った。

「必要ないよ。なれているから……クッ……」

そう言って、お腹を押さえながら、公園にある水道で、ソセゴンという非麻薬系の強い痛み止めを飲んだ。

だが、彼は長年使っているため効きが悪くなっている。

彼の痛みが和らぐのに2時間かかった。

「はあ~」

「本当に、病院に行かなくていいの?」

「なれているから大丈夫ですよ。それより美奈子さんはやっぱ優しいな~」

「えっ?」

「倒した相手には必ず救急車を呼ぶんでしょう。そして今、僕を心配してくれた」

「あ、当たり前でしょう」

「で、さっきの僕の答え、本当に違うんですか?」

秀二の真剣な表情に美奈子はついに本音を言った。

「そのとおりよ。でも、あなたに、私の気持ちまでは分からないでしょうね」

美奈子が言った言葉に、秀二はこう答えた。

「分かりますよ。僕も彼女を病気で失っているから」

「(嘘……じゃなさそうね)」

「愛した人を失って世の中が嫌になりました。まあそれだけじゃないですが……でもいろんな人が僕を励ましてくれたから、こうして生きている。そして今もブログでルナさんと言う人から励まされている」

「えっ!まさか、あなたが生きる時?」

「そうです。クローン病という難病を抱え、格闘技や音楽をやって、今は物語の中で、格闘技を続けている。そして、亡き友たちのために祈りというCDを自主制作し、配布、販売しました」

「そうだったの」

「ルナさんが美奈子さんだと知ったときは嬉しかった。だって僕の好きな人が……これはまだ言うのが早いな。ルナさんや武蔵くんから焦らずにって、アドバイスされてたんだよね」

「秀二さん……」

「お願いです。生きる目標を持ってください。貴女が死ねば、僕や美奈子さんの師匠、さらに亡くなられた勝さんまでも悲しみます。美奈子さんの師匠は美奈子さんが普通の女性として生きてくれることを願っています」

美奈子は下を向いて、こう言った。

「ありがとう。私の事をそこまで思ってくれて……」

「いや~……美奈子さん、まずは、友達としてお付き合いしてください」

彼女は悩んだ。

「いいの?私は多くの人を……あなたの兄弟子まで傷つけた女なのよ」

「永倉さんは真の武道家。さっきも言いましたが、新戦会の者が貴女を恨んでいる人は一人もいません。それに人を傷つけずに生きている人間なんてそんなにいないと思いますよ。ブログを読んでいるから知っていると思いますが、僕は中学の時いじめられていた。だが、高校に入ってからは今度は僕がいじめをしていた。弱い人を傷つけた僕の方こそ愚か者です」

「秀二さん」

「笑ってください。あなたの笑顔を見るのが僕は好きです」

その言葉に美奈子は微笑んだ。

「あっ!そうそう、もう一つ悩みがあるんです」

「なあに?」

「いや、これは言いにくいな~」

「私達友達でしょう」

「そ、そうですね。実は最近の僕の給料が少なくて、次の給料日まで、全財産千円しかないので、三千円貸していただけると助かります。給料日までまだ2週間あるんで……」

「クスッ……しょうがない人ですね」

美奈子は微笑みながら、財布から五千円を出した。

「三千円でいいですよ」

「今五千円札と一万円札しかないの」

「そ、そうですか。では五千円お借りします。給料が入ったらお返しします」

「少しずつでいいよ」

「な、なるべく早く返します」

秀二のおろおろした態度に美奈子はクスッと笑った。

そしてこう言った。

「生きる楽しみができたわ」

「本当ですか」

「ええ、あなたが私にどう告白するのか楽しみだわ」

秀二はブログに「一つになりたい」って書いたことを思い出した。

「(うわ~、あんな事書くんじゃなかった)」

「秀二さん」

「は、はい」

「これからは秀二君って呼んでいいかしら?」

「もちろんです。じゃあ、僕は美奈子ちゃんって呼ぶね」

二人は微笑みながらそう語り合った。

だが、しばらくすると美奈子の表情が険しくなった。

なぜなら、彼女にはまだ新戦会や自分の師匠に謝罪をしなければいけないからだ。

「今日は遅いから、明日、後藤館長に連絡してくれる」

「分かりました。何度も言いますが新戦会うちはなんとも思っていませんから」

「でも、けじめはちゃんとつけなきゃ。永倉さんにも謝罪をしなければいけないし……」

「そうですか。とりあえず、明日ってかもう今日ですね。朝連絡しておきます」

「お願いします」


それからしばらくして二人はそれぞれの家に帰っていった。






どうも生時です^^

え~、僕の通っていた空手の会 (もうなくなったようですが)の館長も創建会社をしていた人です(運転代行もやっていた時期があり、僕や他の弟子達がバイトしていました)

また、幹部の四天王の一人に永倉と同じように、薬剤師さんがいて、よく薬の事で、相談に乗ってもらっていました。今でもお付き合いがあります。

他にも辞めた方の何人かは今も連絡し、集まることがあります。今週の27日にはアメリカで暮らしている兄弟弟子が結婚したため、ちょっとしたお祝いパーティをする予定です。

さらに北斗と同じように木材工場で工場長をやっていた方は元ヤンです(館長も……)

あと、この作品を書いていたら、また格闘技がやりたいと思えてきました


生時


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