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第7話 修羅に生きる者

ここ数日で、秀二の住む町の名のある武道家たちが謎の者に倒されていた。

そして、ある日の夜……

20時過ぎに薬剤師でもある新戦会の四天王の一人、永倉が仕事を終え、帰宅しようとした時、黒い道着に、黒い覆面をした小柄な者が現れた。

「何だお前は?たかりなら相手が悪いぞ」

「あなたを真の武道家と認め、試合を申し込みます」

と、覆面が言った。

「(女か?)俺を新戦会の永倉と知っての狼藉か?」

「ええ、戦う人の事は事前にある程度調べてあるわ。新戦会の幹部、永倉新一さんでしょう。本職は薬剤師」

「そうか。お前が最近、名のある武道家に喧嘩を売っているものか。だがな、新戦会うちは館長の許可なく他流試合は禁じられている」

「あなたを本気にさせる自身はあるわ」

と、覆面は構えた。

「(な、何だこの気は……)面白い。どうやら武道家として、破門されても悔いのない戦いが出来そうだ」


30分後……


倒れていたのは永倉の方であった。

「な、何て強さだ……」

「永倉さん、すごく強かったわ。(でもあなたも私を殺せるほどの実力はなかったわ)救急車を呼ぶから、お大事に」

そう言って覆面は去っていった。

だが、去る時に何かを落としていった。

永倉は這って、覆面が落としたものを拾った。

「こ、これは……薬」

覆面が落としたのは薬であった。

薬剤師である永倉はすぐにその薬がなんの薬か分かった。


しばらくして救急車が到着し、永倉は病院に運ばれた。

22時過ぎに、病院から永倉の妻に連絡が来たため、彼女は病院へ行った。

「あなた大丈夫?」

「へっ、俺は武道家だぞ。このくらいの怪我、なんともない。それより明日、職場と館長に連絡をしてくれ」

「はい」


次の日の朝、彼女は永倉が勤務している薬局と館長に連絡した。

夕方、仕事を早めに終わらせ、館長は土方を連れて、病院へ向かった。

永倉は、昨日の夜の出来事を館長と土方に話した。


2時間後、二人は病院を出た。

そして、すぐに幹部である四天王と北斗を道場へ呼んだ。


幹部達はすぐに道場へ集まった。


「永倉以外は皆集まったな」

「押忍!」

「忙しい中すまんのう」

「館長、電話では話せないと言っていましたが、何があったんですか?それに永倉さんは?」

と、原田が訪ねた。

「実は永倉が昨日の夜、病院送りにされた」

「それは本当ですか?」

「ああ、最近、名のある武道家たちが次々と倒されているのは知っておるだろう。おそらく、永倉もそいつにやられた」

「あの永倉さんが……」

北斗がそう呟いた。

「永倉の話では黒い道着に覆面をしていた。そして、声からして女と思われる」

「女ですか!」

「そうだ。あと、こんな薬を落していったようだ」

「何の薬ですか?」

「永倉から聞いたが、これはパキシルとか云う抗うつ剤らしい。秀二も使用していたようだ」

「あ、あのう、そ、それで、永倉さんは破門なのですか?」

と、沖田が聞いた。

「本来なら俺の許可なく試合をし、しかも敗北したのだから破門だが、永倉やつは破門されても武道家として、後悔のない戦いでした……そう言っていた。だが、アイツは、今まで新戦会のために、いろいろと尽くしてくれた。それゆえ、今回は、復帰したら黒帯全員から下段蹴りの刑で許すつもりだ」

「そうですか」

その時、一人の六十代くらいの男性が道場へ入ってきた。

「何者!」

と、沖田が訪ねた。

「久しぶりじゃのう。後藤」

「お、お前は宮本」

「知り合いですか?」

と、土方が訪ねた。

「ああ、23年前、新戦会を創立した頃に、試合をしたことがある男だ。勝負は俺が負けたがな」

「か、館長が!」

皆が驚いた。

「懐かしいのう」

男のフルネームは宮本強。

明光天神流という古武術の16代目継承者である。

「そうか……宮本おまえには二人の弟子がいたな」

「ああ……」

「確か、まさるという男と、美奈子という女だったな」

「美奈子って、北斗じぶんのカミさんと同じ名前だ」

「それに秀二さんの好きな人の名前も美奈子さんでしたよ」

と、北斗と沖田が会話をしたため、後藤は怒鳴った。

「やかましい!馬鹿タレが!」

「押忍!すいません!」

「なるほど。永倉を倒したのはお前の弟子か。それならアイツが負けたのも納得がいく」

「後藤……すまん」

と、宮本は頭を下げた。

「どういうことだ?お前が頭を下げるなんて」

「確かにワシには二人の弟子がいた」

「いた?今は違うのか?」

「23年前、後藤と戦ってすぐの出来事じゃった。勝の家族と美奈子の家族は、旅行中事故を起こし、生きていたのは勝ると美奈子だけだった。二人のそれぞれの両親とは昔からの知人だったため、行く当てがない二人をワシが引き取り、弟子にした。やがて勝と美奈子は愛し始めた。ワシは勝に自分の後を継がせ、美奈子が勝を支えてくれる事を願った。だが、4年前、勝は病気で死んだ。そして美奈子は置手紙を残し、わしの前から去っていった」

そう言って、置手紙を後藤に見せた。

手紙にはこう書かれていた。


今までありがとうございます。

本当に感謝しています。

これからは明光天神流の17代目になるため、修羅の道を歩みます

            

如月美奈子


「この4年間で、アイツは武道家、さらには裏の世界の人間にまで喧嘩を売っておる。そして、この街に居る事を知ったワシは、必ず新戦会にも喧嘩を売ると思い、来たのじゃが、すでに一人犠牲者が出てしまったか。本当にすまん」

「宮本、ワシらは武道家だ。別にお前の弟子を憎んでいない。永倉は正々堂々と戦い、負けたんだ。むしろ、アイツにとってはいい勉強になっただろう。それに破門されても悔いのない戦いが出来たと喜んでいたわ」

「そうか……」

「沖田」

「押忍!」

「さっき秀二の好きな人が美奈子とか言っていたな」

「押忍!」

「フルネームは?」

「上の名前までは分かりません。まさか、その美奈子さんが永倉さんをやったとお考えですか?」

「それを確かめる。秀二に道場に来るよう連絡しろ」

「押忍!」


しばらくして、秀二が道場にやってきた。

後藤は秀二に、今までの出来事を話した。

「確かに、あの人の名前は如月美奈子ですが、同姓同名ではないでしょうか?」

すると、後藤はあるものを出した。

それは覆面が落としていった薬だった。

「これは、パキシル」

「永倉から聞いたが、お前もこの薬を飲んでいたのだろう」

「押忍!でも、今は飲んでいません」

「では、お前の知る美奈子はこの薬を飲んでいたか?」

その言葉に、秀二はふと思い出した。

「パキシルかどうか分かりませんが、休憩中になんかの薬を飲んでいたところ見たことはあります。でも彼女が永倉さんをやったなんて信じられません」

だが、秀二はあることを思い出した。

「そういえば、4年前に彼氏を亡くしたと言っていました。でもそんな……」

「秀二とやら、ワシは美奈子に天神流の跡を継がせる気はない。美奈子にはこれから、普通の女性として生きてほしい」

宮本の言葉に、後藤はこう言った。

「お前にとって、美奈子という女子おなごは弟子というより、娘のように思っているんだな」

「ああ……そうじゃ。わしはそんな大事な娘を修羅にしてしまった。何とか、アイツに女らしい生き方をしてほしい」

「僕もそう願います」

と、秀二が言った。

「お前さん、美奈子のことを好いているらしいのう」

「は、はい」

「お前さん、美奈子の生き方を変えれるか?」

「……自身はありません。ですが、美奈子さんを説得したいと思っています」

宮本はしばらく秀二の目を見ていた。

そして、宮本は後藤にこう言った。

「後藤、この青年に任せてもいいか?」

「ああ、本人もそうしたいといっているんだ。秀二、見事彼女を説得してみろ」

「押忍!」


果たして秀二は美奈子の生き方を変えれるのだろうか。





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