最終話 3月11日
2011年3月10日……
美奈子の故郷は宮城県であった。
そしてこの宮城県の石巻市に自分の両親と勝の両親、そして勝の墓がある。
そして3月11日は勝の命日であった。
「それじゃ、心太さん、秀二君、明後日には戻るから」
「ゆっくりしてきてください」
と、秀二は言ったが、本当は自分も着いていくと、言いたかったが、心太も秀二も4年ぶりの里帰り。
自分達がいては美奈子は気を使い、ゆっくりできない。
そう思い、二人は付いていくのをやめたのだ。
だが、このあとに悲劇が起きることを誰もこの時は知らない。
2011年3月11日……
東日本に悲劇が襲った。
地震と津波によって、多くの死者、行方不明者を出した。
2012年2月10日までに死者は1万5848人、行方不明者3305人と、1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災よりもはるかに多くの犠牲者が出たのだ。
これが東日本大震災である。
それから3日後……
宮城へ帰郷した美奈子から何の連絡も無かった。
だが、秀二も心太も彼女は生きていると信じた。
「秀二君」
「……?み、美奈子さん?」
「短い間だったけど楽しかったよ」
「えっ?」
「ありがとう……そして、さようなら」
「美奈子さ~ん!待ってください!僕はまだ、貴女に告白をしていません」
秀二はふと目を覚ました。
どうやら夢だったようだ。
携帯を見て、着信暦がないか確かめたが、やはり彼女から連絡は無かった。
それから1時間後、秀二は心太に電話をした。
不思議なことに彼も秀二と同じ夢を見たというのだ。
その後、二人はそれぞれ違う道を選んだ。
心太は美奈子を探すため、宮城県へ向かった。
秀二は地元に残り、美奈子の帰りを待った。
彼女の生死は刻だけが知っている。
あとがき
東日本大震災から1年が経ちました。
この震災の事は「クローン病に負けるな」を書き始めたときから書くと決めていました。
そのため、前作の「病気と闘う人たち」の時代設定を変えました。
まだまだ1年では被災地の方たちが、安心して暮らせていません。
皆様が安心して暮らせる日が来る事を祈ります。
亡くなられた方、ご冥福お祈り申し上げます。
平成24年3月11日 生時