第12話 ダイアナ
次の秀二と美奈子は、土方と永倉のお見舞いに来ていた。
二人以外にも沖田と由紀子が来ていた。
6人はロビーで談話していた。
「しかし、昨日の戦いは凄かったな~」
と、永倉が言った。
彼は医療関係の仕事をしている人間なのに、病院を抜け出して、鬼と修羅の戦いを目に焼き付けてきた。
運よく。彼が無断で外出をしたということは、ばれなかったようだ。
沖田の隣で静かに座っている由紀子のところへ、美奈子が話しかけてきた。
「由紀子さんもクローン病でしょう。大変よね。でも病気に負けず頑張って生きている」
「でも私、病気に負けて、沖田君に迷惑かけたことがあるんです」
すると沖田はこう言った。
「過去の事だよ。今は心許せる仲間だ」
その言葉に由紀子は泪が出るくらい嬉しかった。
「俺とゆきちゃんは同じだね」
と、秀二が言った。
「えっ?」
「だって、僕は美奈子さんが好きだが、まだ、友達になったばかりだ。でも、焦らず、彼女に告白する気だよ。ゆきちゃんもいつか自分の気持ちを沖田君に伝えなよ」
「はい」
「今からバンドの練習があるんですが、秀二さんも美奈子さんも来ませんか?二人のスタジオ代くらい出しますよ」
「ありがとう。でも自分達のスタジオ代くらい僕が出すよ」
と、秀二は言ったが、彼は美奈子にお金を借りている身分である。
一時間後……
秀二と美奈子は沖田と由紀子に連れられ、スタジオに来た。
「な、懐かしい……」
秀二がそう呟いた。
このスタジオは館長である後藤の知り合いが、店長をしているスタジオだ。
昔、秀二が、その時の兄弟弟子同士とバンドを組んでいた時もこのスタジオを使っていた。
「あの時より綺麗になっている。前は防音装置とかも酷かったのに」
スタジオには沖田、由紀子、秀二、美奈子の他に、秀二の弟秀三や山崎が集まっていた。
北斗は仕事があるため、今回はヴォーカル無しの練習となった。
由紀子や秀三が用意をしていると、山崎がXJAPANの曲を弾き始めた。
「おっ!ART OF LIFEか」
秀二は喜びながら、山崎のギターを聴いた。
「こんな感じです」
「凄いな~よくこんな曲弾けるね~シューベルトの未完成を頑張ったが、俺は挫折した」
ART OF LIFEは1993年にXJAPANがリリースした曲である。
一曲なのに30分もある超大作である。
また、シューベルトの交響曲第8番ロ短調「未完成」のフレーズが使用されている。
「でも、このバンドLUNA SEAのコピバンじゃなかった?」
「今のところはそうです。でもそのうち、マリスや黒夢なんかもやって、オリジナルもやる予定です」
「楽しそうだな」
その言葉に、山崎はこう言った。
「ギターやりませんか?ルナシーは、2ギターだし……僕がSUGIZOのパートで秀二さんがINORANのパートでやりませんか?」
「TRUE BLUEなら弾けるけど、ROSIERは無理だ。一番好きな曲なのに……」
「そうですか」
「まあ、ライブ活動始めたら、1曲くらい歌わせてよ」
「僕だけでは決めれませんが、たぶん皆いいというと思います」
彼らのバンド、ダイアナはルナシー同様にリーダーのいないバンドであった。
ルナシーと同じで、メンバー全員で話し合って活動していくと、決めたのだ。
結局この日、北斗の変わりに秀二がヴォーカルを担当して練習したのであった。