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温泉を温めただけなのに火山が噴火しました

作者: 花竜
掲載日:2026/01/14

最近、

巣の近くに温泉が湧いた。


正確には、

いつの間にか湧いていた。


山の岩肌の隙間から、

白い湯気がもくもくと立ち上っている。


岩をどかし、

湯気の立つ水たまりに足を入れる。


「……ぬるい」


冷たくはない。

だが、熱くもない。


悪くはないが、

満足でもない。


「惜しいな……」


少し考え、

周囲を見回した。


人間もいない。

冒険者もいない。


「ちょっと温めるか」


そう思っただけだ。


首を伸ばし、

山の奥――

火山の方へ向けて、


ほんの少しだけブレスを吐いた。


ごく弱く。

慎重に。

調整もした。


(これで、じんわり温まるはずだ)


完璧な計算だった。


ゴゴ…


地面が、鳴いた。


ゴゴゴゴゴ……!!


山が、光った。


「え?」


次の瞬間、

火山が噴いた。


盛大に。


しばらくして。


再び温泉に浸かっていた。


「あー……

 ちょうどいい」


湯が身体を包み、

鱗の隙間までじんわり温かい。


熱すぎず、

ぬるすぎず。


完璧。


「やっぱ温泉はこうじゃないとな」


満足して、

大きく息を吐き、

湯に身を沈めた。


――遠くで。


ドォン、

という音がした。


さらに、

鐘の音。


何度も。


温泉から上がると、

遠くの山肌に、

黒い煙が立っている。


そのさらに先。


……町があった。


「あれ?」


首を傾げる。


しばらくして、

人間たちが来た。


前より多い。


装備も、

なんだか洗練されている。


「災厄竜だ!!」

「今度は火山だ!!」


「ん?火山?」


結界が張られる。

魔術師が陣を組む。

祈る人間までいる。


(何事!?)


一歩下がった。


槍が飛んできた。


「話し合おう!」


と吠えたが、

聞いてもらえなかった。




翼を広げ、

空へ逃げた。


背後で、

人間たちが叫ぶ。


「温泉街は守られたぞ!!」

「災厄竜を追い払った!!」


……温泉街?


空の上で、

少し考える。


(温泉、楽しかったな)


その日から、

新しい呼び名が増えたらしい。


《火山を怒らせる竜》

《湯を血で染める災厄》

《近づくと山が噴くもの》


……盛りすぎじゃないか?


ただ、温泉がぬるかったのが嫌だっただけだ。


こうして、

**災厄竜《アウル=ヴァルグラディオス》**は、温泉好きになった。


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