34 アイリーさん
バレエ劇場もこれまた大当たりして、宿屋に泊まる客はパンク寸前だった。
こうなってみれば、アイリーさんのホテルがあって、良かったな、などと思える。
そして、また、忙しい日々が戻ってきた。
俺はアイリーさんとの勝負に勝った!…いいや、負ける事は無かった!が正解だろう。
こうして、活気を取り戻したEarthはエブリファーム区、メニーストア区、リブ北区と、フル稼働し始めたのだった。
そんなある日、俺がバレエ劇場の指導に当たっていると、カイが話があると俺を呼んだ。
はて?
アイリーさんがまた何か新しい建物を建てたのだろうか???
そんな事を思いながら、カイの後に付いていく。
「なぁ、カイどうしたんだよ?」
「アイリーさんがお見えになっています…」
「何だとぅ!?
また、俺に宣戦布告するつもりだな!?
こうなりゃ、徹底交戦だ!」
「違います…」
カイが短く言う。
「え…じゃ、何???」
そうしてる間に屋敷のリビングに着き、アイリーさんと対面した。
「ご無沙汰しておりますわね。
エイトさん。
と言っても、あなたの活躍は聞き及んでおりますわ…」
アイリーさんが言う。
「はぁ…?
しかし、あなたが俺の屋敷に来るなんて…」
「私、Earthの隣の地から撤退しようかと思っていますのよ。
こんな僻地以外にも、経営してるホテルはたくさんありますしね。」
アイリーさんは言う。
「へー…
本当ですか…?」
どうも信じられない。
「それから、私静養しようと思ってますの…」
「え?
静養…?」
どうも、アイリーさんの話について行けない。
「私…
胃ガンですのよ…」
アイリーさんは衝撃の事実を言った。
この世界で胃ガンを治すことは、まず不可能とされていた。
「そんな…」
俺は言う。
「ですから、しばしのお別れですわ。
エイトさん、私の分も頑張るのですわよ?
では、失礼します。」
アイリーさんはそう言うと去っていった。
そんな…
アイリーさんが胃ガン…?
「エイトさん!
追いかけなくて良いんですか!?」
「追いかけ…る…?
追いかけて…どうするんだ…?」
「馬鹿ですね!
アイリーさんが最後にエイトさんの元に来たのは、一縷の望みをかけていたんですよ!
あなたなら、胃ガンでさえも治せるかもしれないと!!!」
カイが半分怒鳴るように言う。
「そんな…
俺には…
そんな事…」
地球図鑑にもガンは不治の病に近いものとして取り扱われていた。
それを俺にどうしろと…?
しかし、俺はアイリーさんを追いかけていた。
今思えば俺が奮起するきっかけになったアイリーさんを、このまま死なす訳にはいかない!
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