モノ盗り
「まぁ!ほら」
またこのおっさんはビル瓶を俺に突きつけてくる。
俺が酒弱いの知っててやるんだから質が悪い。
「いや、もう。もう結構ですって明日も仕事がありますし」
「またまたまたまたんもぉ~、そんなこと言わずね?ね?」
普段は悪い人じゃないんだけど、この人絡み酒だからなぁ。
「いや、ホントに、勘弁…いや…その……はい。じゃあ最後に1杯だけ」
「そうか!あっそうか!はぁいそれじゃあおっととととと」
いやそれ、注がれる方が言うやつでしょ。
「だよね~君がゆうやつだ・よ・ね~」
帰りたい…
「帰りたいってんもぅ!まあーだまだ、よれはこれからですよーーーーだ」
さっさとビールをのどに流し込む。
そろそろ終電もまずくなってきたとこだ早く逃げなければ。
「だめだよーおビールさんを味合わないとんね?」
あーなんか、眠くなってきた。
「そろそろ時間が?」
時計を指さすと、針は11:30を示していた。
今日は休日ダイヤではない間に合うはずだ。
「なーに!いってんのぉ!まーーだ間に合うでしょハイ!ハイ!もーいっぱい」
いっその事朝まで梯子と言うのはどうだろうか。最近部下もストレスがたまっているようだこの機会に飲んで晴してしまおう。
「んええ?」
「どったの?」
「ぶ、ぶぶ部長?な、何で?」
この部下は何に対して驚いているのだろう。まるで何かを盗まれたようではないか。
「モノローグ……盗られた」
そして、彼はなぜだか自分からビールを煽るのであった。