第6話 「改革と変化 其の一」
警視庁を震撼させたあの大事件から約1ヶ月後の11月中旬
警視総監であった渡部嘉郎が逮捕され、内閣府ではその後任をだれにするかで議論されていた。
現任の内閣総理大臣はあの男を推薦するが主要幹部は反対していた。
「私は、岩瀬君を後任にしようと思っているのだが、どうかね?」
「なるほど。あなたは彼を推薦するのですか。」
「はい。ほかに適任な公認なんていないでしょう。」
「確かにそうなんだが、彼にはまだ荷が重すぎる気がするのだよ。」
「おっしゃることはわかりますが、副警視総監の彼はまだ着任してから1年。
前任の副警視総監はすでに退職していて他に居ません。
どうか私の言うことに賛同をいただけないでしょうか?」
幹部たちは総理のその熱いまなざしと言葉に心打たれて拍手を送って
そのうちの一人が「よし。君がそこまで言うのであれば任せよう。」
最後の後押しに入ってくれて渡部元警視総監の後釜に岩瀬真一が選ばれた。
「第101代警視総監は岩瀬真一君に決定とする。」
総理大臣の一言で会議室には拍手がまるで大雨のごとく続いていた。
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そして、岩瀬真一伸警視総監が記者会見を開いていた。
「本日、本会場にお集まりのマスメディアをご覧の皆さん。
そしてネットの生配信を視聴してくださっている皆さん。
本日は第101代警視総監に就任しました私、岩瀬真一の就任会見を
視聴してくださり誠にありがとうございます。早速なのですが何点か先に
全国の警察官を代表して謝らなければいけないことがございます。」
岩瀬は一切の原稿を作らず自らの言葉のみで伝えようと今この場所に立って話していた。
一呼吸をおいてまた話し始めた。会場の空気は静寂そのもの。
誰もが彼の言葉に黙って耳を傾けて真剣に聞いていた。
「警視庁所属の警察官で今から約27年前に発生した事件と
約5年前に起きた事件、そして先日起きた事件の加害者ではなく被害者である
五十嵐敦史警視と五十嵐典子警視監の両名に対する事件の犯人とする捜査の方針は
前任の渡部元警視総監の完全なでっち上げでそう言った事実は一切ございません。
息子さんへの長年の深い悲しみと苦しみは到底耐え難いものであったことには
変わりありません。この場をお借りして警視庁の警視総監として、
また、前任の警視総監であった渡部嘉郎が起こしたことに対する警察官を代表して
謝罪します。大変長い間申し訳ありませんでした。
そして、息子さんの五十嵐琢磨警部補の先日の事件の指名手配につきましても
重ねてお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。
次に、先ほど申し上げました五十嵐琢磨警部補の処遇につきましては
指名手配を取り下げ、警視庁の前部長と後任の副警視総監と十分に話し合いの結果、
適切な処遇を下したことを今お約束いたします。
そして、警視庁と警察官の信用と信頼を地に落とした張本人でもある
渡部元警視総監の処遇につきましては先日付で懲戒解雇、及び緊急逮捕いたしました。
国民の皆様にはご不安とご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした。
これからは私、岩瀬が国民の信用と信頼の回復を少しずつ取り戻せるよう
日々精進してまいります。私からは以上です。」
岩瀬は一言一句かむことなく話し終えると回れ右をして深々と壁に向かってお辞儀をする、
その意味は全国の警察官を代表してこれまでの謝罪とこれからの日本の警察官を背負っていく
という固い意志から出た者であった。




