第2話 「計画」
指名手配されてから数日後、3人は東京の琢磨の地下室を訪れており
無事に見つかった当時のUSBとこれまで彼の夫婦が集めてきた資料が
そこにはおいてありそれを持って出ようとしていた矢先のことだった。
「それを渡してくれないかな?」
背後から言いかかってきたのは水野沙羅。五十嵐琢磨の婚約者だった。
突然の一言に思わず振り返ると彼女がそこに立っており
手にはどこから入手したのかわからない拳銃があり
それを2人に構えて脅していた。
「いいからその手に持っているものを床に下ろしなさい。」
岩瀬は冷静になり、水野を落ち着かせようとなだめる。
彼女はその言葉に一切応じる様子が内容で拳銃を手に持って
その場にただただ立っていた。
「ねぇ?琢磨君。それから岩瀬さん。
知らなかったと思うのだけれど私の母方の苗字は『相良』。
つまりどういうことかわかるよね?」
「まさか、君の祖父は・・・。」
「察しの通り。現内閣総理大臣の相良直達は私のおじいちゃん。
おじいちゃんはあの人ただ1人だけで昔からよくかわいがってもらってたっけ。」
なんと、水野沙羅の祖父は相良直達であった。それを聞いた2人は
どうすることもできずにいたが、岩瀬が機転を利かせ水野に見えないように
合図を送ると、水野は琢磨が向かってくると頭突きをかまされその場に倒れこむ。
岩瀬は倒れこんだ水野に一瞬の隙を与えることもなく手に手錠をかける。
水野は琢磨の頭突きに気を失う。
水野が目を覚ますと、地下室にあった椅子に両手を後ろに組んで拘束されていた。
「ねぇ。ただ話を聞いてもらいたかっただけなんだよ。」
「とりあえず、君が裏切り者だね?」
岩瀬は水野が裏切り者だと考えていてストレートに聞く。
水野は岩瀬の質問に対して「違う。」とは言葉では言わなかったものの首を横に振る。
「果たしてそうかな?」
「何をする気なのですか?」
岩瀬は直接水野に対して手を下すわけではなく、どこかに電話をかけ始めた。
「もしもし。わたしだけど少し彼女についてすぐに調べていきたい。」
電話相手の男はすぐに「わかった。」その一言だけ言うと岩瀬は「頼んだ。」と
返事を返すと電話を切った。
水野は岩瀬の電話の内容に苛立ちを覚え、質問してきた。
「一体、私のなにについて調べるつもり?」
「今話したことが本当かどうかと本当に裏切り者かどうか。」
岩瀬の代わりに琢磨が水野について答えを返す。
琢磨のその答えに首を横に振る水野。
「なんで今更このタイミングでこんなことしたのか答えてもらおうか?」
岩瀬のその発言に沈黙を貫く水野。しかし、彼のスマホから着信が鳴った時事態は急変する。
1時間後
発信者の電話番号を見てすぐに出る岩瀬。
「あぁ。俺だ。それで彼女についてはどうだった?」
「彼女は確かに相良直達のお孫間違いないです。」
「それで?」
「ですが、彼女の両親は幼い時に亡くなっており彼女を育てたのは父方の祖父母。
そして生まれたからたった1回しか相良直達にしかあったことがなく
彼がかかわっていることはないと思います。」
「なるほど。わかった。ありがとう。助かったよ。」
岩瀬は電話相手にそう告げると水野も元へ歩み寄る。
「疑って悪かった。それで急になんであんなことをしたのか聞かせてもらおうか。」
水野はいつもの口調に戻った岩瀬が問いかけてくると静かに事の経緯を話し始めた。
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数年前 (五十嵐琢磨の母親が不振を遂げる少し前)
五十嵐琢磨と水野沙羅は付き合い始めて約2年が経過していたある日のこと。
水野は五十嵐典子に電話で呼び出しを位1人で五十嵐琢磨の自宅に足を運んでいた。
「水野ですけど。言われたとおり1人で来ました。」
「中に入って。玄関の鍵は開いているから。」
「はーい。お邪魔します。」
水野はきちんとした礼儀で五十嵐宅を訪れる。
中に入ると玄関の中で五十嵐典子が立っていた。
「急に申し訳ないね。1人で呼び出しなんかさせて。」
「それで、いきなりで申し訳ないんですが、用事というのは何でしょうか?」
「詳しい話は部屋の中でお話ししたいからとりあえず上がってくれるかな?」
「わかりました。失礼します。」
典子は水野に部屋の中に入るように言うと、水野は玄関の靴を揃えて入っていく。
彼女に案内されるまま着いた先は今3人がいる地下室だった。
「さぁ。入って。ここなら盗聴と化される心配はないから。」
「そんなに大事なことなんでしょうか?」
「えぇ。そんなに大事なこと。話始めるね。」
「はい。お願いします。」
水野が覚悟を決めてつばを飲み込んだ音を静かに聞いた典子が口を開き静かに話し始めた。
「まず、結論から先に言うね。私は殺される。確実に。」
「え?」彼女のその一言を遮るように続きを話し始めた。
「それで、今ここに置いてあるUSBとファイルの存在を
彼氏の琢磨と岩瀬という男に託してほしい。」
「それはわかったのですが、なんで私なのですか?何か関係があるのですか?」
「大変申し訳ないのだが、君の過去について全て調べさせてもらった。
君の祖父である相良直達に私は用事があってね。
今はもう関係はほとんどないみたいだけど。」
「そうだったんですか?知らなかったです。
一体それがこの件とどうして関係しているのですか?」
「君が相良直達を恨んでいるの一目瞭然だ。どうなんでしょうかね?」
「恨んでいるのは確かです。その話お受けしましょう。」
「それでは万が一私に何かあればこの部屋の中にあるこの2つは頼んだよ。」
「わかりました。」
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「というのが琢磨の母親から託された最後のお願いだった。
それでこの中に裏切り者がいないか試したが、いなくて正解だった。」
「なるほど。」岩瀬は水野のその言葉に納得し、琢磨と同じタイミングでうなずく。
「それで、この資料はどうする?」
岩瀬は琢磨のその一言に悩んでいた。そして少し考えながら返事を返す。
「そうですね。私に考えがあります。」
「わかりました。どのような考えなんでしょうか?」
「この資料を知り合いの週刊誌にまずもっていって内部告発で第一段階。
そして、警視総監室兵器証拠を持参し辞職させます。それが第二段階。
最後にこの相良内閣を崩壊させます。それで終幕、という流れです。」
「それは確かに聞くと素晴らしいのですが、どうやって警視総監室に行くのですか?」
「それはだな。協力者が警察内部に居てね。
というのも以前君たちがあったかどうかはわからないが
『出山』という男は知っているか?」
「出山ですか?誰ですか?」
岩瀬は琢磨には特にあの事件があった影響で言いにくくなっていた。
「君のお父さんと戦って勝った人だよ。」
「そうなんですか?」
「なんでお父さんを助けてくれなかったんですか?」
「それについても今から説明するよ。」
岩瀬は琢磨に事の経緯を説明し始めた。
あの事件が起きる少し前に遡る。
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「私が、彼を足止めし生き残れるようにします。」
岩瀬は琢磨たちには内緒で石川県に来ていた。
そこには琢磨の父親で亡くなった五十嵐敦史と彼を倒した出山、
そして運転手の上村正と岩瀬真一の4人で話し合いが行われていた。
「彼がそれをするのはいいのだが、奴らはいつここに来るのかね?」
「おそらく、琢磨君がその手紙の存在に気づいてここに来るというのが
流れ的にはあり得るのでしょうから、9月下旬ごろと思うのが妥当でしょう。」
敦史と上村・出山は岩瀬の話に理解を示し頷く。
「上村さんは、どうされるおつもりでしょうか?」
出山は彼の運転手でもある上村に尋ねる。
「そうですね。皆さんを逃がさないといけないため、死にます。」
「それはいけません。敦史さんを守るのは誰がするのですか?」
「それは、岩瀬君がすればいいのではないではないか。」
「確かにそうなのだが、わかりました。」
「出山さんは今後はどういう方向で我々を援助してくれるのですか?」
「ん・・・・。琢磨君の家に彼らが何もしてないとは言い切れないので
琢磨君の警察学校時代の友人・黒田に協力してもらいます。
そのあとは、警視庁に異動となるのは確定なので内部から崩します。
渡部警視総監を引きずり下ろす策は彼らが持っているのしょうから
それを週刊誌とメディアにリークしてその権威を失墜させます。」
「なるほど、とりあえず後はぶっつけ本番だ。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく頼むよ。」
彼ら4人はこの計画に万が一の想定外には想定していなかった。
その想定外のことが起きてしまった。
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「というの事の経緯だ。本当に申し訳ない。」
「お父さんが本当に亡くなったのですか?」
「あぁ。本来であればそんな計画ではなかったのだよ。すまない。」
岩瀬から今後の計画を聞いた琢磨と水野は新たな希望を抱き心に誓うのであった。
渡部警視総監を倒すために壮大な計画が今、始動する。
岩瀬たちが計画したものが果たしてどこまで行くのか!?




