第1話 「運転手と脱出」
突如として五十嵐敦史の隠れ家にやってきた謎の男たち。
彼らの正体に気づいた敦史と上村は息子たちを逃がすことにするのだが・・・。
「早く逃げろ・・・。」
敦史が息子の琢磨に言うと背中を向けて拳銃を構え玄関の扉に立つ、
横には運転手で五十嵐敦史の元部下で現石川県警刑事部捜査二課所属の上村正の姿があった。
「早く開けてくれませんか?五十嵐敦史元警視庁公安部長さんよ。」
「なぜ、君たちがそれを知っているのだ?」
「この方からすべて教えてもらいましたから。過去の経歴も含めたすべてをね。」
少し体格がよく、声が低めな男が敦史に向かってい言う。
敦史はなぜ自分の正体が知られているのかはっきりとわかっていない様子で、
上村に指示を飛ばす。
「おい。上村。お前だけでもあいつらのもとへ行ってくれないか?」
上村は「いいえ。僕が行っても足手まといになるだけですから。」と言い切る。
敦史は少し考えこんだ様子で決断をする。
「俺もここに残ってあいつらが逃げるまでの時間稼ぎをしようかな。」
「それはダメです。あなただけでも逃げてください。」
上村と敦史の激しい言い合いにしびれを切らしたのか、男たちは玄関の扉を開こうとするが
玄関のカギは施錠されていて、道具でも持ってこない限り開きそうにない。
すると、後ろのほうにいた黒いハット帽をかぶった男が敦史に問いかける。
「敦史くん。久しぶりだね。この声がだれだかわかるかい?」
「まさか。なぜ渡部警視総監がこんな場所にいるのですか?」
ハット帽の男は渡部警視総監であった。おそらく石川県警本部長に圧力をかけたのだろう。
渡部は敦史に再度質問する。
「敦史君。君を拘束しに来た。ついでに上村さんも一緒にね、」
「なんで俺らが逆に拘束されなきゃいけないのでしょうか?」
「それは、私の件含めたものだよ。」
「それは・・・。」
敦史は、言葉が詰まり、無言になる。
「はやくしないか。そちらがその気ならこっちも力ずくでも立ち入らせてもらうよ。」
「わかりました。」
敦史が玄関の扉の鍵を開けたと同時に外にいた男たちが家の中へと押し入ってくる。
「これより、五十嵐敦史及び上村正、2名を重要参考人として所までご同行願おうか。」
男の一人がそう言いきったづぎの瞬間、天井に向かって発砲音がその場に居た全員が耳にする。
「敦史さん、早く逃げてください。」
「でも、お前ひとりでは・・・・・・。」
「いいんですよ。」
「わかった。後のことは任せる。必ず戻って来い。これは最後の命令だ。」
「わかりました。後で例の場所で落ち合いましょう。」
「了解。」
上村は敦史を逃がし、1人だけで10人を相手にしようとしている。
男にはこの瞬間からもう生きて帰れないとひそかに悟っていた。
「さてと、さすがにこんな人数相手にしたことないんでね。
少し、お手柔らかに頼みますよ。」
玄関の近くにあった棚の中から警棒を取り出し、戦闘態勢に移る。
「おいおい。上村君だけでこの人数を相手にするつもりかね。」
「えぇ。そうですよ。」
「無理じゃないか。あきらめて投降しなさい。」
「嫌だと言ったら?」
「ここで死んでもらうよ。さようなら。」
「嫌だね。」
「話は決裂だな。君たちこの男は好きにして構わない。
私は、あいつらを追う。始めてくれ。」
10人くらいの男たちが一斉に「了解。」と息のあった声で返事をすると、
上村に襲い掛かってくる。渡部はその場から離れて敦史と逃げた琢磨たちを追う。
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上村は序盤こそかなり有利に動き、半分の5人は倒したのだがここで横やりが入る。
「バンッ。」拳銃の発砲音とともに上村が頭から血を流して倒れこむ。
「渡部警視総監。ご報告いたします。」
残っていた4人のうちの一人が渡部に無線で報告する。
渡部は追いかけていたが、慌てて傍受し話を聞いていた。
「なんだ。」
「我々のうち約半数は意識消失。
しかしながら、上村は部下の一人がこめかみに拳銃を打ち込み射殺。
その場で死亡が確認されました。」
「そうか。ごくろうであった。家の中を調べてくれ。」
「承知しました。」
男たちは上村の遺体を隅によけて家の中をくまなく捜索し始める。
午後12:28 上村正。拳銃により死亡。享年50。
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上村が死亡したとほぼ同時刻 隠れ家地下隠し通路
「今、拳銃の発砲音がまた聞こえました。」
「この音ってまさか・・・。」
琢磨が岩瀬にだけ聞こえるように質問をする。
岩瀬も同様に琢磨にだけ聞こえるように答える。
「多分、君の父親じゃないと思うよ。
お父さんは強いからそう簡単にはね。」
琢磨はその言葉を聞いてか安心した様子で足を進める。
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上村が死亡したとほぼ同時刻 隠れ家地下隠し通路付近
「上村。おい。聞こえるか?今の拳銃の音は何だ?」
敦史は上村に無線で詰めるように聞くがその返事が返ってくることは二度となかった。
ただそこにあるのは上村正という元警察官の遺体が横たわっているだけだった。
「おいおい。まさかあいつ死んだんじゃないんだろうな。」
敦史はさっきの発砲音聞いて戻りたくなったが、「わかった。」のセリフを思い出して
前へと進み始めるのであった。
上村正の死亡が確認され、五十嵐琢磨たちと敦史は大ピンチに・・・。
果たしてこの展開を打開できる策はあるのか?
そして、新たな犠牲者が?




