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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第二章・日常のあれこれ

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26・腑に落ちない結末

「これでよし」


 通話を切る。


 電話の相手はちーちゃんさんだった。

 根ノ宮さんはちょっと忙しいらしく、代わりに応答してくれたのだ。

 あの人が忙しい……ってことは、もしかして『星詠み』とやらをしていて手が離せなかったのかな。詳しいことよくわからんけど、天体望遠鏡とか使うんだろうか。

 ま、連絡することはしたし、問題はない。

 後は待とう。

 待っていれば『浄』の人達が後始末や現場の調査に来てくれる。それと替えの衣服も。


 なにしろ今の俺は全裸だ。


 武装した男どもの死体から奪ったヘルメットでかろうじて股間を隠している有り様である。

 ヘルメットの中身は不要なのでそこらに投げ捨てた。おっさんの頭とかよほど空腹じゃないと食べる気にもならん。

 人が寄りつかなくなっているんだから、隠す意味はないのだが……いつ『浄』の人達が来るかわからない。来てから慌てて隠すってのも情けないのでずっと隠しておく。


 当面、やることは無い。

 奇跡的にあまり破損せず残っていたトラックの座席に座り、今日を振り返る。



 昨日の美少女と再会し、


 牛と馬の混ざった怪物を倒し、


 昨日の美少女に逃げられ、


 街で暇を潰しまくり、


 怪しげな封鎖区画で撃たれまくり、


 アステカの怪物のクローンを倒し、


 おばさんに逃げられ、


 色々と爆発した。



「んん~~~~……」


 締まらない。

 モンスター退治と女に逃げられるの繰り返しである。しかも爆発オチ。ファンタジー漫画の三枚目主人公かよ俺。

 しかも、これが全て午後の出来事なんだからな。

 なかなかの密度だ。

 密度のわりに得た情報は手抜きのカルピスくらい薄いが。


「…………わかんねーな。結局こいつら、何が目的だったんだ?」


 俺はまたソナーで探索してみた。

 今度は、探る範囲を封鎖された区画くらいに限定する。


 ──動くものは、ほとんどいない。

 いてもネズミくらいだ。

 探っていると、人間のパーツらしき反応が二ヶ所にあったので、近い方から向かってみる。

 当然、全裸ヘルメットだ。こんなお笑い芸人いたな。



 近い方は汚い路地裏だった。


「あーあ、死んでる死んでる。見覚えある装備の奴らが死んでるわ」


 俺に弾を撃ちまくった奴らのお仲間らしき死体が転がっていた。装備がそっくりだから間違いない。

 しかし死にかたが異常だ。

 比較的まともな死体が下半身だけのもので、残りの五体は干物みたいに乾いて死んでいた。

 誰がやったのか。

 ソナーでわかっていたが、やっぱり犯人の姿はどこにもなかった。


「何かの縁だ。ありがたく頂こう」


 干からびた死体からズボンを剥ぎ取り着用する。死人から衣服を奪うのはこれで何度目になるだろうか。バチ当たりなことだ。

 でも服ってのは生きている人が着てこそ価値があると思うんだなボクは。


 思いがけずフルチン状態を逃れることができた。

 ズボンの持ち主にお辞儀してから、今度はもう一ヶ所のほうに行く。



「こっちに逃げてたのか。駄目だったようだが」


 反応が遠いほうに向かうと、生首が転がっていた。

 あの図々しいおばさんのものだった。


 当たり前だが生きてはいない。

 驚いたような、必死に何かを叫んだような、そんな死に顔をさらしていた。


「やらかしが酷すぎて、物理的にクビにされたのかね」


 残っていたのは頭だけではなかった。

 手足や、内臓も散らばっている。

 何かが爆発したような形跡もアスファルトの地面に残されていた。


 このやり口からして、俺が知る限り、やったと思われる人物は一人しかいない。

 そうなると、()()()の組織は、あの薬屋と仲良しってことになるな。

 いや、闇社会の何でも屋に近い組織のようだし、今回たまたま後始末を依頼されただけなのかもしれん。

 そこらの裏取りは他の人に任せよう。

 俺は暴力専門だ。あと解呪も。


 ……解呪か。



「…………美味しかったなー、間狩の母さん」



 いつかは間狩のやつも、あんなに肌や汗が美味しくなるほど育つのかな。肉が熟れるのかな……。


 とか考えてると、腹の底から食欲が湧き上がってきた。


 散らばっていたおばさんの脚を拾う。まだ新鮮だ。

 地面に落ちていて汚いなと思ったが、ストッキングが破れず残っていたから良かった。

 ストッキングを剥がし、太ももを引きちぎって、かぶりつく。


 大好物の味が口の中いっぱいに広がる。

 人の、血肉の味。


「んぐむぐ…………やっぱ、女はうまいなぁ」


 脚を一本まるまる食べたらバレて文句言われそうだが、これくらいだけなら、吹き飛んでなくなったと判断するんじゃないかな。根ノ宮さんにはバレると思うが。

 でも、あの人なら、これくらいは必要経費というか必要悪というか、まあ見逃してくれそうではある。

 嫌な顔されるだろうけど、それで済むなら安いものだ。


「そろそろ二学期か」


 夏休みも終わりに迫ってきている、そんな夕方の、誰もいない通り。

 人が近寄らなくなる効果の副作用なのか、ほんのりと涼しげな空気に満ちている。

 そんな場所で、俺は人肉を頬張りながら、新学期もおかしな事件や奇妙な人間に遭遇するのかなと、面倒臭さの混じる期待を抱いていた──

ということで第二章完です。

元々、短いエピソードを2~3やる章の予定でした。

ナユタ可愛いと思った方は、よろしければブックマークや星(評価ポイント)をつけてくれると嬉しいです。

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ナユタと主人公が次邂逅する時はどうなるんだろうか? 勝手にだけどナユタを「推し○子」の、ツ○ヨミをイメージした感じの見た目に脳内変換してる
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