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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第二章・日常のあれこれ

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10・私はナユタ

 私は、他人を拒まない。



 私は、他人を引き寄せる。



 生まれついでの──家族の誰とも似つかない──飛び抜けた美貌と、人の心を解きほぐし安堵させる、麻酔のような雰囲気によって。


 花から漂う、香り。

 かぐわしい、蜜の香り。

 それにつられる蝶のように、引き寄せられてくる、人。


 にこやかに微笑みながら、

 うっとりしながら、

 羨ましがりながら、

 友好的な顔で私に近づく人々は……その多くが、不幸なことになった。


 ならなかった人や、ちょっとだけ損をしたくらいの人も、いる。

 それは偶然なのか。はたまた、何かしらの理由が、あったのか……。

 私にはわからない。

 そのことへの興味も、罪悪感も、これといって──皆無。



 私が物心ついたくらいから、私の家族は、体調がよろしくなかった。


 私は、幼さに不釣り合いな知能で、推測した。

 これは私のせいだ。

 きっと、家族の身に起きている、これは、私の魅力と禍々しさが()()した時から、なのではないか、と。

 家族にとって、幸いだったのは、それが……死に至るほどの不調では、なかったことだ。

 血縁だったから、なのかもしれない。


 しかし、ペットは違う。

 飼っていた猫は早死にした。

 それから、我が家では、生き物を飼っていない。

 犬猫も、小鳥も、金魚も、昆虫も。



 顔を合わせると、いつも私の頭を撫でていた、近所のおばさんがいた。


 やはり、触りすぎたのだろう。

 原因のわからぬ、筋肉や神経が衰える病で、片腕がまともに動かなくなった、そうだ。

 それが、私を撫でていたほうの腕なのかは……言うまでも、ない。



 通っていた、幼稚園。

 私のもたらす、目に見えない災いにとっては、そこは……無防備で、無邪気な、獲物に溢れていたに、違いあるまい。


 私に触れ合う者は、次々と、具合が悪くなっていった。

 けれど、私を疑う者など、いない。

 代わりに、食中毒や感染症を疑われた。

 消毒などを徹底したが、無駄なこと。


 結局。

 その幼稚園は、私が、卒園するまで……不本意な、不吉な噂を払拭できなかった。



 小学生になってからも、私に吸い寄せられる、人の波は、途切れない。

 その波をむしばむ、見えざる呪いも。


 私の、隣の席になった者は、例外もあったが、だいたいが、心身を劣化させていく。

 四人が、病院から出られなくなったり、不登校になったりした。

 当の本人達や、その家族知人には理不尽な悲劇だが、私には、ささいなこと。

 面白味は、ない。


 そんな頃。



 興味深い者がいた。



 隣のクラスの生徒で、私のそばに近づかない者が、一人いた。

 女子だった。

 何という名前だったかまでは、記憶に残って、いない。そもそも、覚えていたのかも怪しい。


 その女子が、友人達と話をしながら、廊下で私とすれ違った、その時だ。

 キヒヒという、あまり聞かない、独特な笑い声の女子。

 彼女は、私のことを見るなり……。


 ……しかめっ面をした。


 これには、驚いた。

 顔には出さなかったが、心の機微というものが、著しく、鈍っている私が、驚かされた。

 後にも、先にも、初対面の人間にあんな顔をされたのは、あの、一度きりである。


 それから。

 その女子生徒は、私を、あきらかに避けるようになった。

 こちらのクラスには、絶対に来ない。

 たまに、廊下で会うことがあると、私に対して、薄気味悪いものを見る目を、した。新鮮な視線だった。


 全く姿を見せなくなったのは、確か、それから一ヶ月後くらいだったと、思う。

 家庭に、大きな問題があったようだ。

 あの子の両親は、不仲で、とうとう離婚したのだとか、浮気がバレたのだとか、そんな不確かな話をクラスの女子が、噂して、いた。


 それが原因なのか、

 私を恐れるあまりなのか、

 彼女は、ある日を境に、学校に来なくなった。


 あの子には、私がどう見えていたのか。

 私に、何を観ていたのか。

 何故、あの子だけ、()()()()()()


 こんなことになるのなら、もう会うこともかなわないのなら、聞いておけば、よかった。

 とても、悔やまれた。



 しかし。


 そのような後悔も、いつしか、薄れ、

 周りの悲劇も、そよ風のように、私の心から消え去り、

 変わることなく、私は、静かに咲き続けた。


 しかし、他人の目と関心が、常に私へ向いていることに、いささか、わずらわしくもなってきた。

 気に留めるのを、少しはやめてほしいものだと。

 注目を、そらせないものかと。

 そう、思っていた。


 私の、初めての、悩みと呼べるもの。

 その悩みへの解決は……意外に早く、私の下に訪れた。


 朝、目を覚ます。

 仕度をととのえ、学校へ行く。


 今日くらいは、穏やかな一日にならないものかと、そう、思っていると。

 誰にも、声を、かけられることなく、教室まで着いた。

 いや、声をかけられたりもしたのだが……その後、何事もないように、その人達は、私から離れたのだ。いつもの事だから、気にすることなど、ないとばかりに。


 これには、困惑した。


 しかし、慣れるにつれ、私は様々なことを、理解できるように、なった。

 空気のように、自らの存在を、他者に、意識させない。

 そんな魔法めいた事が、己の意思で、できるようになった。


 これが。

 これこそが。

 私が、異能とでも呼ぶべき、常識や物理をねじ曲げる力に、目覚めた、その始まりだった。

 周りを、無差別に苦しめる呪いを、抑えることはどうにも無理だったが……まあ、これはもう、仕方がないもの、なのだろう。

 別に、どうでもいい。



 それから。

 中学に入って、少し経った頃。


 父の仕事の都合で、転校することになった。正確には、両親に付いていって転校するか、残って祖父母と暮らし転校しないか、という、選択。


 私は、両親に付いていくことにした。

 昔から知っている、地元の景色や環境に、飽きていたのも、ある。

 が、やはり両親よりも、祖父母のほうを、私から引き離したほうがいいと、思ったからだ。

 私にも、少しくらいの情は、あるのだ。


 一学期の終業式。

 その後に、クラスメートへお別れの挨拶をした。

 夏休みを挟み、二学期からは、新たな学舎に登校することとなる。クラスメートも一新される。


 引っ越しも滞りなく終わった。


 あとは夏休みが終わるのを待つのみという、ある日の夜。

 つい、気が向いて、外に出た。

 中のほうが、クーラーが効いていて、圧倒的に涼しいのだが……何故か、出たくなった。


「ちょっと、外の風を、浴びてくる」


「そう。気をつけなさい」


 母は止めなかった。

 まだ、中学生である私が、こんな夜中に外出するのを、心配もしない。

 男女の、ドロドロとした恋物語を流している、テレビから、目を離さない。


 私の力に、よるものだ。


「行ってきます」


「行ってらっしゃい、那裕太(ナユタ)

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― 新着の感想 ―
最後まで女の子連想してた!? おぉぉぉ男の子おぉぉぉ(๑•̀ㅂ•́)و✧
みえる子は能力者の家系でこの子を払おうとして家族諸共逆にやられたかんじか?
あ~なるほど、そういうことですか、たまげたなあ~
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