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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第一章・超人復活

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36・一触即発会談

「なんか……えらい事になってるな」


 施設一階にある会議室。

 時間はまだ午前中だ。


 羅喉とかいう神様が星空の彼方から来日するのを防ぐべく、今回の件における関係者がここに一堂に会することとなった。

 さっさと阻止しに行くべきではとも思ったが、やはり人数揃えないとまずいのも、また事実である。

 あちらがどれだけの戦力持ちかわからないしね。


 幸い、まだ時間や日にちに猶予はあるみたいだ。

 だからこうやって集まる余裕があるんだな。タイムリミットがヤバかったら現地集合からの突貫だったんだろう。

 根ノ宮さんという、優れた探知能力者がいたからこその余裕だ。


 集まった関係者の内訳は、こんな感じ。



・七星機関。

 中立派に属する根ノ宮さんと白夜高校のアイドル三姫。


 自由派に属する天原みことという女性とギャル二名。


 過激派に属するサラリーマンとチャラ男と見知らぬ女の子。



・バチカン。

 聖ローラン騎士団に属するシスター二名。



・安愚羅会。

 主流派に属する風船屋。



・帰宅部。

 俺。


 この十四人となる。

 なお、この連中は俺をヒューマン枠にカウントしてなさそうなので、ここに十四人いると思ってるのは俺だけだろう。


 それはいいとして(よくはないが)。

 なんで、俺が「えらい事になってる」と思ったのかだが。


 友好的なムードが無さすぎるからです、はい。


 どいつもこいつも目が据わっております。

 なんといいますか、互いに牽制し合ってギスギスしてるのが実にたまりませんね。

 なので空気が重いこと山のごとし。どんよりです。


「……顔見せも済んだんだから、行こうぜ。その廃工場とやらにさ」


 誰も口を開かないので、俺が率先して口火を切ることにする。

 クラスの委員長キャラじゃないのにな俺。向いてるのは給食委員とかだよ。


「お黙りなさい、妖魔」


 過激派の新顔少女(少女っていっても俺と同い年だが)が、厳しい目で睨み付けてきた。

 目付きも性格も間狩に似てる。


 まあ親戚らしいから、そりゃ似てても不思議はない。髪の色も(ちょっと銅色っぽいものが混じってるが)銀だし。

 信じられないことに、この子も間狩も地毛なんだよな。

 何でも霊的な要素というのは瞳や髪の色によく出るものらしい。

 だから、才能ないと特別な一族の者であろうと黒髪とかあるんだってさ。


「本家の方が不覚をとったようですが、私は甘くありませんよ。出過ぎた真似はしないほうが身のためです」


「……言われてんぜ、間狩。いいのか好きに言わせといてよ」


「事実は事実だから仕方ない。彼に後れを取った私が悪いのだ」


 わざとかたまたまなのか玉鎮が煽る。

 しかし、当の本人は涼しい顔…………いや、ピリついてんなありゃ。


「黙れ、ときたか。ずいぶん威勢のいい分家さんだな。よほど腕がたつらしい」


「ヒヒ、確かに。笑っちまうくらい自信満々だねぇ」


 染めてはいるが頭頂周りの毛だけ黒い、プリン頭の風船屋が、楽しげに同意してくれた。

 きっとトラブルを起こすのも起きるのも好きなのだろう。そんな顔してる。


 なぜこの子がここにいるのかというと、安愚羅会のトップが寄越したからだ。

 名目上は助っ人だが、実のところは今回の件がどういう結末になるのか見届けるための監視役だろうと、そう根ノ宮さんは読んでいる。


「汚ならしいドラ猫さん、笑えないようにしてあげましょうか?」


「おー怖。ションベン漏れそう」


「ま、確かにそいつ程度なら、おたくでも勝てそうではあるか」


 別の方向から嘲りの矢が飛んできた。

 間狩の分家と風船屋の瞳が、危険な光を灯して、九鬼さんの方を向く。


「下らないお喋りはそこまでにしてほしいデス。野良犬の唸り合いに付き合う暇などありまセン」


 さらに別の矢が飛んでくる。

 今度は騎士団からだ。


「だったらテメーらだけで死ににいけや」


 イラつきを隠そうともしないシスターリリアに、チャラ男が噛みついた。


「それは、怖いから自分は行かないので皆さんで何とかして下さい、という意味でしょうか?」


「あはは、痛烈~」


 シスターアリサがすかさずカウンターを繰り出す。

 それに思わず笑ったのは塞霧さんだ。


 誰かが煽れば別の誰かに煽られ、さらにその者もまた煽られ──

 負の連鎖反応が起きている。

 根性ない奴がこの場にいたら急激に胃潰瘍になりそうな程の悪口バトルロワイヤルが始まっていた。


「楽しい交流はそこまでにして、天外君の言うように、目的の場所に向かいましょう。車の手配も済んでいますし、あちらに『浄』も派遣しているので、何か動きがあればすぐこちらに連絡が届く手筈です」


「手際がいいな根ノ宮。流石と言うべきか」


「天原さん、あなたに褒められるとはね。明日の天気は槍かしら」


「そう皮肉るな。私は別に、お前と対立してはいても敵対しているわけではない。褒めるべきは褒めるし、けなす時は遠慮なくけなす。それだけだ」


「褒めるだけにしてほしいものね」


「問題があれば指摘するのは当然だろう?」


 いかにも、私は融通利きませんという感じの女性が、根ノ宮さんと言葉を交わした。


 天原みこと。


 ギャル達から名前だけは聞いていたが、実際に会うのは初めてだ。


 機関における三大派閥の一つ、自由派。

 その中心人物である。

 年は根ノ宮さんと変わらず。退魔業の経歴も同期。

 だからこそ、機関の顔みたいな立ち位置にいる根ノ宮さんをライバル視してるのだろう。

 青みがかった黒髪は、首に届くかどうかくらいのショート。瞳の色は、サングラスでわからない。

 衣服は上下ともスーツで決めている。

 スカートではない。

 完成された男装の麗人──といいたいところだが、豊かな胸の膨らみが、そうはさせじと自己主張していた。


 中心人物といえば、先ほど俺に突っかかってきた銅混じりの銀髪さん。

 彼女もまた、派閥の一つ──過激派のまとめ役だったりする。


 八狩(やがり)雷華(らいか)


 俺や三姫と同じ十六歳。

 高校一年。

 ギャル二名と同じお嬢様学園に通ってるらしい。

 特徴的な色合いの髪を背中まで伸ばしているのは間狩同様だが、うなじ辺りで一度縛っている。巫女さんぽさがあるな。

 まあ、そんなまじまじと巫女さんの髪型とか見たことないから、なんとなくそう感じただけなんだけどさ。


 そうだ。

 過激派の他二人なんだが。

 特殊な手袋付けてる七三分けサラリーマンが朽木重吾(くちきじゅうご)、チャラ男が凪原剣一(なぎはらけんいち)という名前なんだとさ。

 どうにも記憶に残りそうもない名前だ。午後にはもう忘れちゃいそう。


「……なんですか、人の顔をジロジロと」


 やべ。

 間狩の分家に気付かれた。

 あー、不機嫌そうな顔してるわ。きゅっと眉ひそめてこっち睨んでる睨んでる。


「いや何でもないよ」


 人前だと肩肘張り続けるタイプだな。

 誰かに弱音吐いたりとか、絶対やりそうにない。

 限界迎えたらすぐ壊れそう。


「ふん、何でもないのに見ていたというのですか? 見え透いた嘘をつきますね。構いませんから、言いたいことがあるならハッキリとお言いなさい」


 ここで素直に言うのは馬鹿である。

 この言い回しをする奴がハッキリ言われて逆上しないケースなど、恐らく皆無に違いあるまい。天然の罠だ。

 だから誤魔化す。


「いやー、やっぱ親戚だからか似てるなーと」


 と言って間狩を指差した。


 すると、少しの間を置いて、わずかのズレもなく見事なシンクロで、



「「似てない!!!」」



 激怒された。


 誤魔化すどころの話ではなかった。


 これは大失敗である。いかん。

 二人同時に噴火したのでたまらずその場から逃走すると、外に待機していた車の一台に乗り込み、すぐに出してもらった。


 向こうで再会した頃には、怒りも冷めて落ち着いてくれてるのではないか。

 そんな淡い期待を胸に、座席に背中を預ける俺であった。

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