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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第一章・超人復活

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33・浅はかな離反

「何をとち狂って裏切ったんだか」


 率直な感想がこれだった。


「それなりの見返りがあるからこそでしょうね。あと、彼は仲間内でも軽んじられていたそうだから、それに対する苛立ちも、今回の行為を後押ししたんじゃないかしら」


「だから後ろ足で砂かけて去っていったと」


「これまでのお返しね」


「そういう事だけはキチンとこなすんだ……腕を磨いたりとかロクにしないくせに」


 こないだぶちのめした時に思ったが、そこそこの才能とそこそこの実力しかないと感じたな。

 ほぼ素のままというか、大して鍛えてないなと。


「それが出来ないしやりたくないから、短絡的に、楽なほうに飛びつくのよ。目先の得しか見えない。いつ実るかもわからない努力など積み重ねていられない。頑張りたくない。本気で取り組みたくない。遠回りしたくない……」


 ふぅ、という溜め息が、スマホの向こう側から、かすかに聞こえた。根ノ宮さんも言ってて嫌になったのだろう。

 無い無い尽くしだな。


「楽したいってのは同感ですけどね」


 その気持ちだけはわかるよ。

 茨の道とかわざわざ選びたくないもん。近道できるならそりゃそっち行くさ。

 俺だって自分の中にあった力を活用して好き勝手してるだけだからな。努力の無さならあの赤筆頭と大差ない。

 まあ、訓練つーか、実験はしてるがね。

 この身体がどこまでやれるのか。この力でどんなことがやれるのか。行き着く果てはどこなのか。

 あれこれ試したくて試したくて仕方ないんだ。ワクワクする。

 なんせ自宅の庭で一人組手みたいなことを延々とやるのにハマってるくらいだ。


「けど、本当に見返りなんて貰えるんですかね。利用価値が無くなったら処分されそうな気がしますよ」


「そうね。だとしても、本人が選んだ道よ」


 バッサリ言い切ったな。


 ……自己責任、か。その通りだな。

 確かにそうだろうさ。

 でもあの赤筆頭は、そんなこともわからずウキウキで剣と槍持って逃走したに違いない。思えば頭悪そうな顔してたもんな。


 あいつ自身は、これで未来が開けたとでも思ってるのか。

 自分を軽く見てた奴らに吠え面かかせてやったと、ほくそ笑んでるのか。

 人生の袋小路に入り込んでるというか……爆弾男のあのゲームで自分の置いた爆弾で逃げ場なくなるような真似をリアルでやってるというか………なんとも哀れな話だ。馬鹿なことには変わりないが。

 だから同情するつもりはない。


「私はこれから居場所を探るから、あなたはいつも通りこちらの施設で待機してて頂戴。車を向かわせるわ」


「んじゃ用意しますね」


 まあ外出用の装いに着替えるだけなんだけどね。武装とかないし。


「あのお姫様たちは?」


「当然、彼女らも連絡して召集するわ」


 面白くなってきたな。


「天外君、もしやとは思うけど、まさか……楽しい事態になったとか、思ってない?」


ぎくり


「……ないこともない、くらいですかね」


 嘘だ。

 かなり楽しげにしていた。

 しかし、イラっときてそうな根ノ宮さんにそんなこと正直に言えるはずがない。

 だから多少の本音を混ぜて取り繕った。


「……まあいいわ。やるべきことを支障無くやってくれるのが、最も重要なことだものね。多少の気の緩みは見逃しましょう」


 多少どころじゃないけどね。全部だ。

 気の緩みオンリーである。


「ではまた」


「了解っす」


 さて、着替えて、あと……そうだ。

 今日は遅くなるかもしれないと、母さんに言っておこう。この先どう転ぶか予測つかないからな。


 今日も暑くなりそうだ。



 高級車が家の前に毎回毎回止まると近所が何事かと注目するので、できれば普通の車で迎えに来て欲しい──そう事前に言っておいた。

 なので最近はこうやってワゴン車で送り迎えしてもらっている。

 お高いにも程がある車だと乗り心地が良くても落ち着かないので、これくらいが丁度いい。


 やがて目的地に到着する。


 相変わらず何をやってる場所なのかわからない、『生体総合科学研究所』という具体性のない名前が壁に書かれた施設。

 そうやって、退魔師の一大組織である『七星機関』の拠点としての存在をカムフラージュしているのだ。

 でも学生とか出入りしてるのは不自然だから、そこら辺を嗅ぎ回られたら厄介だな。どうせ揉み消せるとは思うが。

 病院ひとつ丸ごとドカーンするくらいの影響力あるんだし、ルポライターやネット配信者といった単独犯ごとき軽く捕まえられるだろう。その後どうなるか知らんけど。埋められるのかな?


「あら」


 施設内のロビーに昨日見たばかりの二人組がいた。

 金髪碧眼の外国人シスターと、黒髪ポニテの日本人シスターだ。

 うわ、もう来たのかよ。


「あっ、泥棒悪魔デス!」


「よくもぬけぬけと姿を見せましたね、この鬼畜!」


 なんちゅう言い草だ。


「元はといえばお宅らが俺に喧嘩売ったのが原因だろうが。バチカンの偉い人からの依頼だか命令だか知らんけど、返り討ちにあって命まで奪われなかっただけ感謝しろよ」


「何を偉そうなことを! 大人しく我々の武器を返しなサイ!」


「あれは、あなたごとき者が所有していい品物ではないのですよ! 枢機卿より(たまわ)りし聖なる剣と槍を奪い取る蛮行、許されるとでもお思い!?」


「返したいのは山々なんだが、それがそうもいかなくてね」


「どういうつもりデスか!」


「説明してください!」


 おお、詰め寄る詰め寄る。そんな暑苦しい格好で密着すんなよ。

 人間やめてから暑さ寒さがほとんど体調に影響しなくなったとはいえ、それでも一応、暑けりゃ不快ではあるんだからさ。


「身内の裏切り者に持ち去られた。どこ行ったか絶賛捜索中だ」


「「……………………」」


 二人が口を半開きにして固まる。


「はうっ」


 黒髪ポニテ──アリサのほうが崩れ落ちた。

 へえ、しっかり者に思えたが、メンタル面はこっちのほうが脆いのか。


「ア、アリサ!? しっかりしなサイ! 傷は浅いデス!」


 気を失った相棒を揺さぶる金髪碧眼──リリアだったが、その相棒は正気に戻ることなく、揺れに身を委ねて身体をガクンガクンさせるだけだった。


 とりあえず意識のはっきりしている金髪シスターのほうに、知ってることを全て教えてやるかどうか……。

 どうすべきか、俺は迷っていた。

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