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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第一章・超人復活

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28・帰宅、新たな生活、それから

 たらふく血を飲んだあと、根ノ宮さんが都合つけてくれた病院へ、あの胴長の高級車で送ってもらう運びになった。

 気分はVIPだ。

 つい偉そうに座席にふんぞりかえってしまった。


 裏口からこそりと入り、俺のために用意された個室へ。

 入院患者用の衣服に着替え、心電図とか測る機械を胸につける。

 これでよし。

 後は父さん母さんがくるのを待つだけだ。

 根ノ宮さんの話だと、俺がここに入院するタイミングで家のほうに一報するとのことである。

 感動の再会だ。演技しないとな。



 なのだが。



 父さん母さんは喜び泣いて俺にすがりつくものかと思ったが、俺が逆に驚くくらいあっけらかんとしていた。

 いわく「お前がそのくらいで死ぬか」と。

 いや死ぬだろ。トラックのぶちかましやぞ。あんたらの息子は超人ハ○クか何かか?

 念のために一週間ほど入院することになったと言っても「そんなに休んで遅れがでないか?」と、健康ではなく勉学の心配をする有り様だ。

 少しは身体のほうを気遣えよアンタら。



 と、まあそんな具合で、たまにあのギャル二人が見舞いという名の勧誘に来ることもあったが、それ以外に特に何もなかった。てっきり過激派の一人二人押しかけてくるものかと構えてたんだがな。拍子抜けだ。


 クラスメートも来そうなものだが、そちらはゼロ。

 俺は絶対安静にすべき状態だと担任がホームルームで言ってたらしく、遠慮して誰も来なかったのだ。

 一週間後に登校してから、久々に会う友達からそう聞かされた。

 なお、俺がトラッククラッシュから一週間で復帰してピンピンしてることに関して、誰からもツッコミはこなかった。お前ならまあ大丈夫だろうと満場一致で言われた。

 この世に俺の身を案じる人はいないらしい。


 間狩のやつは相変わらず氷姫の仮面を被り、誰とも親しく関わろうとしない。いや、俺に対してのツンだけは若干増している気がする。

 玉鎮は別のクラスだし、グロリア先輩はそもそも学年が違うので、付き合いは元々ない。


 かくして、再び日常が戻ってきた。

 高校生になってから初の夏休みまで、あと一週間。







「──おい、そっちに行ったぞ」


「うるさい、黙れ。言われなくともわかってる……!」


 昼間の暑さがまだ残る、夏の夜。

 化け物どもが根城にしていた廃墟の中は、冷蔵庫の中みたいにひんやりとして、そして悪しき気配に満ちていた。


 そんな、魔の縄張りと化した廃墟で。


 ──間狩の霊刀が、月光をはじくように閃く。


「ゲァアアッ!?」


 いかにも悪魔というデザインの、長い角を生やした邪悪そうな顔に、翼を背に生やし、下半身が山羊っぽい化物が袈裟斬りにされた。

 しゅううう……と、蒸気めいた音を立て、黒い煙をあげながら悪魔が消滅していく。


「臭っ」


 うわ、なんだこりゃ。

 ドブ臭いぞこの煙。

 悪魔って死ぬとこんな臭い煙になるのか。身をもって嫌なことを知ってしまったな。俺が押さえ込んでるこいつもそうなのだろうか。


「ほらよっと」


 暴れる魔物の首の骨を、ボキリとへし折る。

 蛇みたいな長い尻尾を持つ大型犬のような魔物が、俺の腕の中でぐったりとなり、つんのめって地面に倒れた。


 よし。

 本日の仕事、終わり。



(ぜんぜん和風じゃない怪物どもだったが、やっぱ外国産なのかね。聞いてみるか)


 間狩が教えてくれるとは思えないので、あちらで一仕事終えてきたグロリア先輩と玉鎮に聞くと、悪魔ぽいのが『人狩の猟魔』で大型犬ぽいのが『地獄の猟犬』と呼ばれているそうだ。

 弱いくせに大した種族名だ。名前負けだな。


「昔はそうでもなかったらしいけどよ、最近はこんな感じで海外の化物もよく現れるみてーだな」


「この国は宗教が混在していますからね。必然的にあやかしの類いも、国際色豊かになるというものです」


「だとさ」


 そうなんだ。

 俺よりもずっと年季も上で経験も豊富な先輩がそう言うならそうなんだろう。

 そのうち世界中の魔物が現れるようになるかもな。


 ──とまあ、多少ギクシャクはしているが、俺は一応、七星機関に所属する退魔師として活動することにした。

 まだ新人なのでポカをやらかして周りに尻拭いさせることもあれば、大物を仕留めて手柄を立てることも同じくらいある。トントンだ。

 根ノ宮さんからは「そんな帳尻合わせやめてくれないかしら」と、嫌がられているが、俺だって好きでやってるわけじゃない。

 まだ数件しかこなしてないのだし、そこは理解してほしいものだ。



 こうして俺は、怪物や妖魔だけでなく、組織内部の他派閥とかち合うこともあるが、どうにかやっている。どうにか黙らせているともいう。

 やはり力こそ正義。

 人間をやめることになってどうなるものかと不安もあったが、豪快に生きていこうと腹をくくった。

 どうなろうと俺は俺。俺がいる、ゆえに俺ありだ。

 お気楽に生きていけばいい。


 しかし、そうは問屋がおろさないとばかりに、運命はめんどくさい出会いをもたらす。



 高一の夏休みも真ん中辺りに差し掛かった、ある日の夕方。


「このような東の果てで、悪霊の王が生まれようとはデス。許されざることデス」


「人の子の皮を被りし悪魔よ。主に仇なす、呪われし者よ。断罪の時は来たれり。いざ、覚悟なさい」


 『聖ローラン騎士団』とか名乗ってる、十字架首からぶら下げたシスター二人が、槍と剣をこっちに構えてるわけでございますよ。エクソシストだエクソシスト。

 まさか海外から刺客が来るとはびっくりだよ。


 ……叩きのめしても、国際問題にならないよな……?

面白かったり今後に期待できたら

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香ばしいやつらが来た
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