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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第一章・超人復活

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27・生命の水

 新顔が次々と俺のところにお邪魔しに来たが、それも一段落ついた。


 最後に来たのは根ノ宮さんである。


「……やらかしたみたいね」


 言葉のトーンに怖いものが含まれている。

 どうも、車椅子の美女はちょっとオカンムリらしい。

 理由は言うまでもない。俺があの赤筆頭と喧嘩の売買をしたせいだ。

 でも、これに関しては、そんなに俺は悪くないのではないだろうかと思う。初対面の相手をうんこモンスター呼ばわりするなんて世が世なら殺し合い待った無しだぞ。


「あんたの顔に泥を塗るような真似したくはなかったが……ついムカついてやっちまった」


「やり過ぎよ」


「すんません」


 ここは素直に謝っておく。

 謝って済むならそれでいい。この人の機嫌は損ねたくないからな。それなら最初から喧嘩すんなと言われそうだが、それはそれ。

 ああいうタイプは初手で力の差を思い知らせておけば黙るからな。

 黙らなかったらもっと思い知らせてやればいい。次は殺すぞと脅したが、それはあくまで脅しだ。本当に殺したらここを追い出されて賞金首にされかねない。

 なのでまた舐めたこと抜かしたらマウントポジションからのボコボコ祭りを開催してやる。俺が奏者役であいつが太鼓役だ。好きなだけ叩けるドン。


「あなたの立場はいまだ危ういのよ? 間狩さんの態度を見ればわかるでしょう?」


「そりゃまあ」


 俺への敵意はだいぶ薄れたとは思うけど、警戒心はまだまだ消えてないのは丸わかりだ。

 正当な理由ができたら真っ先に俺の首取りに来そう。でも俺のほうが強いからまた返り討ちにしそう。そしてガキみたいにまた(わめ)かれそう。

 そんな強くないんだから好戦的な姿勢するなよなって思うが、母親が動かなくなった事への負い目からなので、周りが言って大人しくなる話でもなし……。


 ……めんどくせぇな、あのお姫様。

 他二人は友好的になってきてるのに。


「グロリア先輩や玉鎮は、ある程度妥協してくれてんですけどね」


「あの二人と間狩さんは、環境や経緯が違うもの。間狩さんの過去、教えたでしょう?」


「ええ。忘れてませんよ」


「あなたの存在そのものが彼女の神経を逆撫でしてるのよ。彼女にとって許しがたい存在が、討伐されることなく身近にいる──受け入れられるものではないわね」


「そっすね」


 なんも俺悪いことしてないのに。


「わかってるんだったら少しは自重しなさいな。言うまでもないけれど、殺しなんてもっての外よ」


「降りかかる火の粉くらいは払いたいですけどね」


「その時はまず私の名前を出しなさい。それで大抵の相手は引き下がるわ。引き下がらないようなら……それはもう、払っても構わないから。とにかく暴力でカタをつけるのは極力控えること。いいわね?」


 ぐっさり釘を刺してきた。

 俺も、立場がまだ不安定なだけに、貴重な後ろ盾相手にこれ以上ゴネるわけにもいかない。

 なので、首を縦に振らざるを得なかった。どうしても暴れたいタチでもないし、まあいい。


「よろしい」


 俺が聞き分けよくしたことに根ノ宮さんのイライラも収まったのか、やっと不穏な雰囲気が消えたようだ。


「そんないい子には後でプレゼントをあげるわ」


「プレゼント?」


 なんじゃろ。

 口振りからして、金銭ではないよな。


「あ。そうだ、俺の処遇ってどうなったんすか」


 忘れてた。

 あんな雑魚やじゃじゃ馬のことなんかより俺のこれからだ。


「そろそろ家に帰りたいし連絡取りたいと思うんだけど」


「そうね。あなたは別の病院にたらい回しされたことになったわ。ご家族には、意識が無かったから連絡も取れなかったということで、口裏を合わせてほしいの」


 俺が担ぎ込まれた事になった病院には、根回しが済んでるそうだ。

 きっとここの組織の息がかかってる所なんだろうな。


「あの病院は?」


 根ノ宮さんは、俺の部屋に備え付けられてあるテレビを指差した。

 何となく察して、リモコンで画面を映す。



『──そうです、はい。こちら、現場では、レスキュー隊が救助活動に当たろうとしていますが、安全確保がまだ為されておらず、手をこまねいている状況です』


 チャンネルを切り替える。


『昨日深夜に起きた、この大事件。果たして何名の犠牲者が出たのでしょうか』


『こちら現場です! 見て下さい、この地域で一番大きな病院が、無惨にも半壊しております! 何らかの爆発が起きたと──』


 電源ボタンを押し、テレビを切った。

 どこもこのニュース一色となっていた。マジで吹っ飛ばしたらしい。嫌な爆発オチだ。


「不幸中の幸い。たらい回しのおかげで俺は難を逃れた、と」


「あなたには、後程そちらの病院に移ってもらうわ。ここにいたら辻褄が合わなくなるもの」


 ということになった。

 細かいところで矛盾がいくつも生まれそうだが、そこは強引にごまかすしかない。うちの両親は割とおおらかだから納得してくれるだろう。



 ちなみに根ノ宮さんからのプレゼントとは輸血パックだった。

 クーラーボックスに入れられた冷え冷えのやつが何袋もだ。これは嬉しい。


「んー、うまうま」


 何ともいえない甘味とコクがある生命の水が、喉を通り、胃袋に流れ落ちていく。

 ああ、やっぱこれだよこれ。人間の血液最高。

 あと肉もあればなお良しだったが、流石にそれは無理か。

 でもこれだけで充分だ。

 ただでさえみなぎっている活力がさらに高まる感じがする。ビタミンミネラル塩分が含まれた完全食なだけはあるぜ。

 サンキュー、根ノ宮さん。

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― 新着の感想 ―
 なんか、主人公なら、入院中のお母さんに憑いている呪いも「ぺいっ」って取っちゃえる様な気がします。
なんで主人公この女にへこへこしてんのか謎すぎる、喧嘩しないまでも指図すな程度のコミュニケーションでよくないか
人を食わないと生きていけない生物という訳でもなさそうだし共存はできそうよな 別種になって人間をマミる忌避感がなくなっただけみたいな
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