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復活したら人食いチート怪物と化していた天外優人、その奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第四章・暗黒埋蔵金伝説

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200/215

46・え、俺が引っ掛かるの?

とうとう200話いきました。

まさかこんなに続くとは。

コンゴトモ、ヨロシク……

「さて、どうしたものか」


 また来てしまった医療施設系の廃墟。

 正式名・第二特別救病療養所。

 聞いたはずなのにすっかり脳から抜け落ちていた名前。

 二度目に教えてくれたのはグロリア先輩だった。今度は何日覚えていられるか。


 南京錠をかけられ鎖で閉ざされていた両開きの玄関扉があったのだが、今はもうない。

 破壊されていた。

 錠も、鎖も、扉もこっぱみじんだ。


 聖女たちの仕業──いや、違う。

 この破壊は、風船屋の仲間である、あのイカれたブルドーザー使いの女が蹂躙したことによるものだ。

 ノンストップとか言ったっけ、あの片腕しかない姉ちゃん。

 味は悪くなかったな。若いだけあって。


 壊されてるのは、正面玄関以外に、建物の横っ腹もそうだ。

 大穴が空いている。酷いもんだ。

 突撃していいだけ暴れ回ってたからな、あの重装甲ブル……。


 魔女カサブランカがここを植物まみれにしたのは、明かりの確保だけではなく、建物の補強もかねてのことだったのかもしれない。予兆なく盛大に崩れたりしかねない……とまではいかなくても、かなりガタはきてるはずだからな。


「どうしたもこうしたもない。中に入るに決まっている」


 落ち着いた、しかし闘志の込められた声で、間狩が言った。

 さっきの爪女との短いやり取りで火がついたらしい。

 けれど、鼻息を荒くして、今にも建物内に突き進もうという様子ではない。

 静かに、冷ややかに燃えている。


 氷姫と呼ばれる所以(ゆえん)はこういうところなのかもな。


「どんな罠が張られてるかもわからずにか?」


「怖いのか?」


 質問に質問で返してくる間狩。

 化け物のくせに、とか続けて言うかと思ったが、余計な言葉は付け足してこなかった。

 やっぱ丸くなってきてるなコイツ。


「いや怖いとかじゃなくて、罠にかかったら不利になるだろ。有利になるわけない。そういうことを言ってるんだ」


「なら、誰かが見つけてくれるまで、ここで指をくわえて待つとでも? あるかもないかもわからない罠を、人任せにして」


「そう言われると……」


 それはそうなんだ。

 それについては間狩のほうが正しい。


 どんな異様なものがあるのかわからないので、わかるまで手出ししませんってのも、安全ではあるが、悠長すぎる話ではある。

 そもそも、その『異様なもの』を見つけ、やっつけるのが俺の仕事であり間狩たちの使命なんだから。

 そこでビビってたら話にならない。


 でも、俺もこいつも、昨日引っ掛かってるんだよね。

 ここでまた引っ掛かったら、なんか嫌な流れができそうでさ。そんな流れは断ち切っておきたい。


「気にすることはない」


 天原さんが言った。


「罠なんか踏み壊して進めばいいだけさ」


 そりゃあんたはそうだろうね。

 俺もそうだけど、つまらんトラップにかかっていらん手間が増えるの面倒じゃん。


「それに、彼女らは危険な小細工は弄してないと私は思うよ」


「へえ」


「なんだ、気のない返事だね。疑ってるとみえる。だったら、なぜそう思うのか理由を言おうか」


 「その理由は?」と聞こうとしたのだが、天原さんのほうが、俺が聞くより先に根拠について語りだした。やはり展開の早い人だ。


「私はね、彼女らがキミを一対一で倒したがってるように思える。だから、こざかしい罠なんかで窮地に追い込むつもりはないと、そう推測する」


 それは、ないこともない話だ。

 リシェル少年と戦っている間、魔女も泣き女も、割って入ったりせずに大人しく観戦していたからな。


「その代わり」


 天原さんが、この場にいる女子高生四人に、順に目をむけ、


「私やこの子たちに対しては、存分にやるだろうね。危険なものではなく……引き延ばしのための小細工を」


「引き延ばし?」


 どういう意味だろう。


 そう思ったのは、俺だけではなかった。


「どーいうことなの天原さんよ。わかりやすい説明ヨロだぜ」


 意味について訊ねたのは、ほむらだった。

 髪の毛触りながら首をかしげている。


「難しいことじゃないよ、ほむら。聖女さま御一行にとって我々の首は価値がない。彼女らにとって価値があるのは、優秀な騎士の命を奪った魔物、すなわち彼の首だ」


「だからやってないって。天地神明に誓って無実だっつーの」


「まあまあ、気持ちはわかるけど落ち着きなさい。むやみに話の腰を折ってはいけませんわよ?」


「いや、しかし先輩」


「はーい、どうどうー」


「……あのさ、動物じゃねえんだから……」


 先輩とゆらぎに止められた。ゆらぎの方はおちょくっている気もしたが。


 …………まあ、いい。

 どうしても訂正しなきゃならんわけでもないからな。ここは引こう。


「……話を進めよう」


 吸い終えた葉巻を携帯灰皿にしまい込み、天原さんが言う。

 見た目的に、足元にポイして踏んだりするのが似合いそうだが、やらなかった。環境に優しい鉄人。灰は落としてるけどな。


「価値のない我々とやり合っても何の得もない。それどころか、むしろ、殺せば殺すほど由々しき問題となる。なので我々を彼から引き離し、できるだけ遠くに追いやり、邪魔無しで彼とやり合うための時間を稼ぎたいと考えるのは……至極当然だと思うがね」


「つまり、俺だけスムーズに先に行かせて……あんたらには、ひたすら時間のかかる罠か遠くに飛ばす罠をかけると」


 つまり牛歩とオナラだ。


「ああ。私はそう推測した」


「つまり、わたくし達が気を張りつめておかなければならないと……そう仰りたいのですね」


「そうだね。私は罠など蹴散らすつもりだが、君たちは回避に専念したほうがいい。戦線離脱したくなければ」


 ということになった。



 ──その結果。





 俺だけワープした。

 なにこれ。話と違うじゃん。





 どういう事かというと。


 療養所の荒れ果てた玄関から入り込み、どこに敵さんがいるのかなと、しばし探索していた時。

 ふと足元を見ると、毒々しい紫色の花があった。

 ……そうだ、あのムラサキババア──魔女カサブランカも衣服とか紫だったな……なんて思っていたら、つい、だんだん、踏みたくなってきた。


 踏んだ。

 やってやった。


 そうしたら、いきなり景色が揺らめいて、酔ったのかと錯覚するくらい周りが激しく波打ち、風景が一瞬で変わり──


 ──やけに広い空間に出たのである。



 壁や床、天井を見渡す。

 葉っぱや花が生えた枝、ツタ、木の根っこまみれとなった、自然豊かな療養所の内部と全く変わらない。

 しかし広い。

 こんな、学校の体育館よりもはるかに広々とした部屋なんか、この建物にはなかったはずだ。


 まさか……地下?

 こんな空間が、療養所の地下に?

 いや、そんなはずがない。窓がある。ここが地下だとしたら窓なんかあるはずがない。

 どうなってるんだ?


 人の心理を突いた、巧妙な罠。

 そんな恐るべき仕掛けにまんまとはまり、転移させられた先にあった、この、存在そのものがおかしな謎の空間。

 そこにいるのは、俺だけではなかった。

 俺の立っている場所から、少し離れたところに数人の男女がいた。

 距離にして、だいたい十メートル。


「ようこそ、神に仇なすものよ」


 前方にいる連中、その内の一人が前に出てきて、五メートルくらいまで近づくと、こちらに(こちらもなにも俺しかいないのだが)声をかけてきた。

 聞くだけで耳が清められそうな声。

 天上の音色ってやつか。


 声の主は、女性だった。

 顔の──いや頭の上半分が、兜のようなもので隠されている。

 長く、柔らかそうな金髪。

 衣服は白一色。ローブだけでなく、その上から羽織っているマントらしきものも、ブーツまでも白。

 そしてこの、きらびやかな、汚れなき雰囲気。


 間違いない。


 こいつが、この女性こそが、

 『極光の聖女』コルテリアで間違いない。


 他に、銀の全身鎧をまとった巨体の人物や、青いスーツと黒コートを着て、邪悪なオーラを放っているでかい剣を背負った女もいる。

 情報通りなら、こいつらは『完全なる』オーバザイルってやつと、『汚れた剣』こと騎士アンジェリカだ。


 残りの二人は……よくわからない。

 槍を持った学生服の少年と、どす黒い大きな鎌を持った軽装の少女。どちらも俺と年齢が大差なさそうだ。


「おたくらの神に喧嘩売ったことなんて一度もないんですがね」


「悪しきものがこの世に存在する──そのこと自体が、主への反逆に等しいのです」


「うわあ」


 言葉は通じるが基礎常識が違いすぎて会話にならないタイプだ。これは面倒臭いぞ。

 こんな奴とまともに会話したら平行線で話が進まない。


「しかし、多数で囲み、打ち滅ぼすというのも、いくら魔物相手とはいえ慈悲に欠ける行い。それゆえ、選択の余地を与えましょう。──あなたは、我らの中の、誰に討たれたいですか?」

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― 新着の感想 ―
こんばんは。累計200話到達おめでとナス! うわぁ…やっぱり宗教ってクソっスね。忌憚の無い意見ってやつッス。
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