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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第一章・超人復活

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20・食べ物で遊んではいけません

「よし、開いたぞ」


 肩にハンマーかついだ玉鎮がドヤ顔をしている。


「開いたことは開いたな。そこは間違ってない。そこしか合ってないともいうが」


「何か文句あんのかよ、氷雨。律儀にノックして中の返事待ちすりゃよかったか?」


「いえ、今ので問題ありませんわよ。魔術的な錠がかかっていたようですもの」


「ほれみろ~」


「……グロリア先輩、あまり甘やかさないほうがいい」


 先輩のその意見は正しいのだろう。

 玉鎮のやつが乱暴極まりない『開けゴマ』した時、何か、霊的なものが弾け飛ぶ気配を感じた。それが錠というか封印だったんじゃないのかな。

 だけど間狩の意見もまた正しいと思う。ほっとくとすげえ調子乗りそうだもんこの褐色ヤンキー女。


「それじゃ、中に踏み込みましょうか。まあ私はこれだから踏み込めないのだけど」


 根ノ宮さんがなかなかのものをぶっこんできた。

 そんな車椅子ジョーク言われてもどう反応していいか困るんだが。


「では行こう、皆」


「何が待ち構えていようと退きはしませんわ」


「しまっていこーぜ!」


 三姫は特に何のリアクションもしなかった。聞こえてないのかってくらい慣れた様子に見える。

 つまり、このくらいのセンシティブな冗談を、これまでに幾度となく聞かされているのだろう。

 ならば郷に入っては郷に従え。

 俺も聞き流すことにした。



 ──と、根ノ宮さんの発言はさておき、困ったことは他にもある。


 今更ではあるが、俺の力の原理とか根源とか理屈がわからない。さっぱりわからない。

 俺は雰囲気で謎の力を振るっている。

 『何故できるのかわからんができるからいいだろう』の主義でここまで来たが、本当にこれでいいのだろうか。


 これでいいのかといえば、この連中の側に付くのがベストなのかも少し疑わしい。

 なし崩しにダラダラと関わり続けてこんな所まで来たが、七星機関という組織と安愚羅会とやらのパワーバランスもわからぬままだ。あちらの方が勢力としては上という可能性だって充分にある。

 乗りかかった船がタイタニックでしたでは済まされないのだ。

 沈みそうな予感がしてきたら別勢力への鞍替えも視野に入れておかないとな。もしくはフリーになるか。

 なったら間狩が嬉々として殺しに来そうだな……。


「……おい、どうした化け物。ここまで来ておいて怖じ気づいたか」


「……ん?」


 間狩が挑発してくる。

 なんでそんな酷いこと言うのかと思ったが、ちょっと思案に夢中になってフリーズしていたみたいだ。それにしたって言い過ぎじゃね?


「つい物思いにふけってただけだろ。そこまで言うかね。口悪いお嬢様だな」


「言っておくが」


「ん?」


「私は、君を……お前を信用してはいない」


「だろうね」


「今は大人しくしていようが、いずれはその本性を剥き出しにするだろう。私はそう睨んでいる」


「睨んでいるじゃなくて、そうなってほしいの間違いじゃないのか? 俺を仕留める大義名分ができるからな」


「…………」


 あらま、黙っちゃった。

 口喧嘩弱すぎるぞお前。

 少し痛いところ突かれただけでこれかよ。小学生じゃあるまいし。


「……バーカ!」


「えっ!?」


 間狩は扉の向こう側へと早足で消えた。

 白と黒の式神が、無言でその後に付き従う。


 逃げやがった。

 しかもバーカって。

 どんだけ煽り合い苦手なんだ。打たれ弱さ半端ないな。攻撃力全振りかお前。


 もういい俺も行こう。



 部屋の中は、まあまあ広かった。

 ちょっとした体育館くらいの奥行きがある。

 屋根までの高さはそこまででもない。四メートルくらいか。


「おい、あれ……」


 玉鎮が指差した先、部屋の中央には、不気味なものがうごめいていた。


「なんだありゃ」



 表面に浮かぶ血管らしきものが脈打つ、肉の塊。

 いや、肉の繭か。

 なんでそう思ったのかと言うと、内部にいる何かがうっすら透けて見えるからだ。

 何本もの腕を持つ、阿修羅じみた何かが。



「まだ孵化してないみたいね」


「んじゃ、今なら楽に倒せるんじゃないですか?」


 楽観的に俺がそう言ったら、根ノ宮さんは静かにかぶりを振った。


「その希望は、かなわないようね」


 何でですかと理由を聞こうとしたが、それは唸り声に邪魔された。

 肉繭の内から聞こえる、おぞましい声に。


『ヴボボボボゥゥゥゥゥ………………!!』



 腕が、肉繭を突き破る。

 次々と何本もの腕が肉繭を引き裂いていく。

 やがて、内から左右に大きく割り広げ、その正体をあらわにした。


 人間の死体を継ぎ接ぎして作られた、フランケンシュタインの怪物めいた仏。

 そうとしか言い様のない、不謹慎の化身のようなものが、血にまみれて誕生した。

 つまりさっきのヴボボボは……産声? 嫌な産声だなぁ……。


「──屍楽天(しらくてん)


 根ノ宮さんが、これまでの飄々とした態度から一変して、真剣なものになった。


「全て抹消されたはずだったのに……まだ残っていたとはね。内輪によからぬ者がいたのかしら。考えたくないけど」


 立場を利用して、ろくでもないことした裏切り者か。どの業界にも腐ったリンゴがいるんだな。

 これだから人間ってやつは。


「どこの誰の手引きだか裏切りだか知らないが、食い物でこんなお人形遊びするのは気に入らないな」


 昔のグルメ漫画に、こんな悪ふざけみたいな料理があったの見たことある。

 漫画そのものを読んだんじゃなくてネットで画像を見ただけだが。ちなみにそれの食材は人間ではなく獣や魚等が使われていた。


「勿体無い。人肉を何だと思ってやがる」


 ──と言ってから、口を滑らせたのに気づいたが、もう遅い。


 呪い殺してきそうなギョロ眼で、上目遣いに間狩がこっちを見ていた。その霊刀の一撃よりこの視線のほうが効きそう。


 やべえな。どさくさ紛れに斬られるかも俺。

面白かったり先が待ち遠しかったら

ブクマや★を入れてみてね。

そうすると作者がニヤニヤします。

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