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復活したら人食いチート怪物と化していた天外優人、その奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第四章・暗黒埋蔵金伝説

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44・頭上の待ちぼうけ

 これまでのおさらい!


 海の向こうから変な言いがかりをつけられた挙げ句、俺を討伐しようと、ろくでもないゴロツキ軍団がやって来た。

 こちらの都合など知るかとばかりに振る舞う荒くれ者たちを止めるべく、日本の退魔組織が立ち上がる。

 力には力。

 異能には異能。

 口で言ってわからないなら拳でわからせるしかないのだ。


 まず、双剣使いの少年騎士に俺が勝利。

 名前の長いロシアの殺し屋に玉鎮が敗北したものの、すぐにリベンジして見事撲殺。

 人払いの専門家がグロリア先輩に捕獲された。


 『泣き女』は逃亡。今回の一件から手を引いた模様。


 かくして様子見をかねた初戦は終わり、決戦へ。

 悪くない出だしだ。

 結成間もない青年退魔師グループがひとつ潰されたことは忘れよう。都合の悪いことは忘れるべし。化物退魔師には記憶力の欠如が必要なのだ。


 決戦の舞台となるのは、森の砦と化した、あの療養所。

 埋蔵金の隠されていた建物であり、騎士クラウスさんが果てた地である。


 現時点でここに潜んでいることが確定してるのは、

 魔女カサブランカ。

 『極光の聖女』コルテリア。

 銀の全身鎧を着た巨体──この人物はおそらく『完全なる』オーバザイルという男性らしい。

 着込んでいる鎧は金属製ではなく、『ジークフリード』と命名された守護霊──ガーディアンを実体化させてるものだとか(ガーディアンというのはこちらで言うところの式神だそうだ)。

 元はシスターコンビと同じ騎士団に所属していたのだが、団員同士のつまらない揉め事の末に相手を殺害。追放されるような形で騎士団から抜けたという。

 そして、素性のわからない、さらに数名の男女。


 ほぼいるだろうけど、確定とまではいかないのは、

 『汚れた剣』騎士アンジェリカ。


 俺がリシェル少年と戦ったり間狩が魔女と泥試合していた間ずっと隠れていた謎の女性は、療養所に入っていくところを『浄』に確認されてはいない。

 泣き女のように、とっくに逃げたということも考えられる。

 しかし、聖女たちと共に、もうここに侵入しているのかもしれない。

 どちらもあり得る。

 なので、いるかいないかの断定は、今はちょっと無理だ。


 ソナー能力で探ろうにも、この生い茂る植物のせいなのか、どこに誰がいるのかうまく知ることができない。

 だが、いたとしても、人数が二桁いくなんてことはないんじゃないかな。せいぜい、七、八人くらいだと思うね。


 ──とまあ、こんな感じだ。


 どう対処していくかは、あちらの出方次第だが、とりあえず魔女は俺がこの手でぶち殺す。





 俺と女性陣五人は、林みたいになっちゃった駐車場を、不意打ちを警戒しながら進んでいく。

 何も手出ししてこないとは思えないからな。


 日は暮れ、あたりはだんだんと暗くなってきた。

 街灯や照明なんて気のきいたものはない。

 廃村だからね。電気なんかとっくに死んでる。

 電柱こそまばらに残ってはいるが、どれも、もう使い物にならない有り様だった。電線が切れたりしていて、まともに張り巡らされていない。

 仮に電気が通っていたとしても、この駐車場には明かりがつきそうな設備はないんだけどさ。


 しかし、真っ暗かというと、そうではない。

 明かりがある。

 なんとも不思議なことに、植物に咲いてる花々が、ぼんやりと光を発していた。

 赤や青、紫や黄色、緑に金色。

 光のカラーは様々だ。

 その多彩な光のおかげで、間狩たちは視界を闇にさえぎられずに済んでいる。


 これはきっと、間狩たちのためにではなく、あの魔女が自分や仲間のためにそうしているに違いあるまい。人間は俺みたいに暗闇を見通せる目玉はついてないからな。


「そろそろ正面玄関だぞ」


 やっとだ。

 警戒しながらだと、やはり時間がかかる。


 ただでさえ田舎のデパートや公共施設ってのはなぜか駐車スペースが異様に広い。

 この駐車場もそうだ。贅沢に土地を使っている。

 天原さん達が待機していた端っこから療養所までだと、魔術で林になる前でも、五分くらいはかかっていたはずだ。

 今は、その倍はかかっただろう。

 計測したわけではないので、体感的なものだが。


「何事もなかったですわね」


 グロリア先輩が言った。

 無事に済んでホッと一息、みたいな発言だが、警戒は解いていない。


「そうですね。隙をうかがってはいたようでしたが……」


 鋭い視線を林のあちらこちらに飛ばしながら、間狩が言う。

 こちらも警戒はしたまま。


 言うまでもなく、天原さんやほむゆらも同様だ。

 サングラスの奥の瞳が、鼻と口を隠すマスクの上にある瞳が、フクロウを思わせる大きな瞳が、油断なく周りに睨みをきかせている。


「でも、まだしつこく狙ってやがるな。矢印が消えてない」


 俺の首へと列をなしている矢印。

 その出所は、ころころと変わっていく。

 今は斜め左上からだが、その前は後ろからだったり、右上だったりと、とにかく身軽で落ち着きがない。

 いろんな角度からうかがって、隙あらば一撃くらわしてやろう──そんな感じだ。


 敵意はない。

 あるのは、殺意と戦意のみ。


(悪戯好きなタイプだな。風船屋の同類だ)


 姿はまだ見てない。

 何度か矢印の方向に目をやったりしたが、枝や葉っぱ、幹の陰にうまく隠れているようで、発見できなかった。

 間狩の白黒式神に偵察してもらえば見つけることもできたかもしれないが、そこまでする必要もなさそうだし、頼むのはやめといた。

 どうせそろそろ姿を見せるだろ。


 ……なぜそんなことがわかるのかというと、


「ちょっと待っててくれ」


「なんだ、どうするつもり……? おい、待つんだ天外。一人で何を……」

「はぁ? ……いや、なにしてんのお前……止まれ、おい止まれって!」


 間狩やほむらが同時に止めるのもきかず、俺は植物まみれになった療養所の入口へと足を進めていく。

 つまり、女性陣と距離を空けたのだ。

 謎の誰かさんの攻撃を誘うために。


 さあこい。

 これで、俺に仕掛ける踏ん切りもつくだろ。

 いつまでも狙われるのは性に合わないからな。来るならさっさと来いっつーの。

 ……でも、こんな見え見えの誘いに乗らないか。雑だな我ながら。ないなこれは……。



 とか思ってたら。



「──ッヒャアアア!」



 矢印の主は、どうも堪え性があまりなかったようだ。


 我慢しきれないというふうに奇声をあげながら、指の一本一本が鋭利で大きなナイフのようになっている異形の両手を持つ女が──

 俺の頭上へ、斜めの角度から凄い速さで降ってきたのであった!

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