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復活したはいいが何故か人食いのチート怪物と化した天外優人の奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第一章・超人復活

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18・二度目の来院

「また来ることになるとはなあ」


 深夜。

 つい数時間前に一悶着あった病院が目の前にそびえ立っている。

 こうして見ると何の変哲もないが、内部は阿鼻叫喚の惨状だ。


 ……なんて思うんだろうな、こいつらは。


 人間をやめたらしい俺からしたら、そんな光景も、食い物を粗末にしてるようにしか見えない。

 むせ返る血の匂いも食欲をそそるし、胴や手足がバラバラにされていても食材にしか思えない。


「中から化け物は出てきてないみたいだな」


「『浄』の方々が結界を張り巡らせていますから、そう簡単にはこじ開けられないでしょうね。ただ……」


「地下施設とやらにいる誰かさんがやってきたら、呆気なく割られると」


 グロリア先輩が頷く。

 雑魚への戒めにはなっても大物には役に立たないみたいだな。


「どんなヤベーのがいやがるんだろうな……。へへ、さっきからずっと不完全燃焼だったからな。そろそろ暴れたいぜ」


 愛用らしきハンマーを担いだ玉鎮は闘志を剥き出しにしている。

 狂暴な土建屋みてえ。

 それとは正反対に間狩の静かなこと静かなこと。さすがは氷姫。

 二匹の白黒狼も出してスタンバイだ。いつでも日本刀振り上げて突貫できる心構えに違いない。





 ところで。

 間狩には内緒だが、実は根ノ宮さんから、その過去についてだいたい聞いている。

 あの感情剥き出しにしてわめき散らしたのがどうにも気になったからだ。

 根ノ宮さんが難色示したら聞くのやめようくらいの気持ちだったが、意外とすんなり教えてもらえた。


「──彼女の母親、雪乃さんは、優秀な退魔師でね」


「実力も才能も、娘である氷雨さんを上回っていたわ。間狩の歴史上でも最強の女傑だと言われるくらいに」


「けれど、不覚を取った。取らざるを得なかったのよ」


 母が退魔の任務を行うところに、まだ小学生だった氷雨が、こっそりついて行ったそうだ。

 物陰から隠れてその華麗で苛烈な仕事振りを見ていたのだが、敵である魔性に見つかってしまった。


 土蜘蛛。

 漫画やゲームでちょくちょく見る名前だが、雑魚モンスターどころか、古くからこの国に巣くう凶悪な妖魔だという。


「滅ぼしたはいいものの、その土蜘蛛は、死に際に呪いをかけたの。氷雨さんにね」


 どうせ母親のほうにかけても霊刀で祓われるだけだし、未熟な娘のほうを道連れにしようと考えたのだろう。


「雪乃さんは、その呪いから身を挺して娘をかばった」


「……亡くなったんですか?」


「いえ、生きてはいるわ。意識は戻らず、眠ったままでね」


「間狩の一族に伝わる特殊な呼吸──インドの行者が使う、ヨーガの呼吸に近いそれを無意識に使っているせいで、衰弱は避けられてはいるけど…………それだけよ」


「呪いを解かなければ、死ぬまでそのまま眠り続けるのみ」


「だから彼女は憎んでいる。母親をそんな目に合わせた魔性を、自らの愚かさと力の無さを」


 俺に対してあんな態度を取ったりキレたりしたのは、つまりは八つ当たりってことだ。いい迷惑だな。





「このまま見ていても埒が明かないわ。行きましょう」


 ひとりでに動く謎車椅子に座った根ノ宮さんが、そう俺たちに促した。


「んじゃ俺が先頭で」


「……どういうつもりだ」


 間狩が胡散臭いものを見る目付きで俺を睨む。

 いやー、マジで嫌われたな。


「ん? ああ、俺が顔出したらもしかして通してくれるかなと。前回はそんな感じだったからさ。試す価値はあるだろ?」


「そうか」


 ぶっきらぼうだなぁ……。


「行ってきまーす」


 と言ってある程度歩いたところで、足を止めた。


「なんか買ってきて欲しいものある?」


「さっさと行け!」


「おー怖」


 この場の殺伐とした雰囲気を和ませるつもりで言ったのだが許されなかった模様。


「今度こそ行くとしますか」



 自動ドアだが、今回は開かなかった。


「おっ!?」


 指を隙間から差し込んで力ずくで開けようとしたら、ピリッと静電気みたいなのがきて、指を跳ねのけられた。


「あー、あれね。結界ってやつね。はいはい」


 目を凝らしてみると青色の薄い膜のようなものが張り巡らされてるのがわかる。

 指を弾かれたってことは、やっぱ俺って()()()()()()が壁として引っかかるんだな。間狩達ならあっさり入れるのだろう。


「……あれ、そうなると、これどうにかしないと入れなくね?」


 ちょっと迷ったが、俺にできることなど一つしかない。


 なのでぶん殴って結界も自動ドアも壊した。力こそ正義。


 バリンというガラスが割れる音と、パキィンという割り箸を折るような音がした。

 前者が自動ドアで後者が結界の壊れたものなんだろう。

 青い膜は俺のパンチ一発で引き裂かれたように割れて、人が数人まとめて出入りできるくらいの裂け目が生まれている。


「これで入れるな」


 邪魔するものが無くなったところで病院の玄関ロビーへ。



わらわらわらわらわらわら……



「うおおっ、来た来た来たぞ」


 ヨシモトさんの兄弟みたいなデザインの怪物や、そうじゃない怪物が半々くらいで俺のほうに群がってきた。

 そうじゃない怪物は、主に二種類。

 軍服(日本軍の、陸軍?)を着たやつと、白衣を着た研究者ぽいやつ。どちらも頭部が異形と化している。

 具体的に言うと、こねくり回した粘土に目とか牙だらけの口とかが無数についたような、そんな気色悪い頭なのだ。

 手には短銃とかサーベルとか注射器とかメスとか持っている。


「ど、どーも、俺です。通してもらえます?」


 怪物どもは一斉に襲いかかってきた。畜生め。

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モンスターに対する美的感覚は踏襲してるのか
襲われるんかい!
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